議会報告

  • 2024年10月23日
    本会議

    第368回本会議 請願討論  庄本えつこ

    私は、日本共産党県会議員団を代表し、上程されている請願、第20号、第23号、第25号、第28号について不採択ではなく採択を、第2号、第21号、第22号、第24号、第26号について継続審査ではなく採択を求め、その主な理由を述べます。

    まず第20号「核兵器禁止条約への署名、批准を求める意見書提出の件」です。

     今年のノーベル平和賞は、日本原水爆被害者団体協議会、日本被団協に授与されました。受賞理由は「広島と長崎の原爆生存者によるこの草の根の運動は、核兵器のない世界を達成する努力、又目撃証言を通じて核兵器が2度と使われてはならないということを身をもって示してきた」また、「日本被団協と他の被爆者の代表たちによる並外れた努力は、核のタブーの確立に大きく寄与してきた」とし、「肉体的な苦痛と痛切な記憶にもかかわらず、大きな犠牲を伴う自らの体験を、平和のための希望と活動にささげることを選んだすべての生存者に栄誉を授けたい」としています。

     日本の被爆者が、世界に向け被爆の実相を伝え、核兵器廃絶を訴え続ける長い運動が後押しする中、2017年7月7日、国連において122か国の賛同により核兵器禁止条約が採択、2021年1月22日に正式発効し、禁止条約は国際法となりました。現在、94か国が署名、73か国が批准しています。

     今世界では、戦争、紛争が続き、ロシアのウクライナ侵略におけるプーチン大統領の核兵器使用の威嚇、イスラエルのガザ侵攻においてもイスラエル政府関係者による核威嚇など、核兵器が決して「戦争の抑止力」でもなければ「安全の保証」でもなく、核兵器保有国の戦争の手段であること、それが戦争をエスカレートさせていることをはっきり示しています。核兵器がある限り人類は核兵器使用の危険にさらされているのです。

     世界の圧倒的多数は、平和を求めています。その中で唯一の戦争被爆国である日本政府が「核保有国と非保有国の調整・橋渡しに努力している」とし、署名・批准を拒否し続けていることは世界の平和を求める流れに逆行しています。日本こそ真っ先に条約に参加し、核保有国を説得し世界の平和のリーダーになるべきです。

     日本政府に批准を求める世論は大きく高まっており、「署名・批准を求める意見書」は、2024年7月現在、688自治体の議会で採択され、1788自治体の38%になっています。県内では31.7%に当たる13議会が採択しています。兵庫県と県内全自治体が「非核平和都市宣言」を行っています。

    来年は広島・長崎に原爆が投下されて80年です。「生きているうちに全ての核兵器をなくし、平和な世界の実現を」願っている被爆者の平均年齢は、85歳を超えました。

     「核戦争を回避するには、核兵器をなくすしかない。核兵器で苦しむ被害者は、私たちを最後にしてほしい」という被爆者の声にこたえ、「日本政府に対し核兵器禁止条約に署名・批准を求める意見書提出」の請願について、採択を強く求めます。

     

    次に第23号「選択的夫婦別姓の導入へ、一日も早い民法改正を求める意見書の提出の件」についてです。

    現在、世界で夫婦同姓を法律で義務づけている国は日本だけで、両性の平等と基本的人権を謳っている憲法に反しています。さらに女性の96%が夫の姓に変えているという現状があり、これは間接的な女性差別と言わなければなりません。国民世論では、すでに7割以上が選択的夫婦別姓制度の導入に賛成しています。経団連は今年の1月と3月に選択的夫婦別姓を政府に要望し、6月には提言をまとめ、石破内閣が発足した10月1日にはシンポジウムも開催しています。また、国連の女性差別撤廃委員会も日本政府に対して繰り返し、法律で夫婦同姓を義務付けることは女性差別であり、ただちに改正すべきだと勧告してきました。国連人権理事会等の国際機関も同様の勧告を繰り返しています。

    地方議会では選択的夫婦別姓制度の導入を求める意見書が2024年10月11日現在、426件可決されています。都道府県単位では、東京都、大阪府など12議会、兵庫県内では尼崎市、西宮市など8議会に広がっています。

    家族のあり方は多様化し、夫婦・家族のかたちはさまざまです。望まぬ改姓、事実婚、通称使用などによる不利益や不都合を強いられている多数の人たちの尊厳回復のため、婚姻後の姓の自由な選択のためにも「選択的夫婦別姓の導入へ、1日も早い民法改正を求める意見書の提出の件」の採択を求めます。

     

    次に第24号「兵庫県が削減した令和7年度医師臨床研修病院の研修医募集定員を令和8年度は0から2以上に増員を求める件」、第25号「医師臨床研修の研修医募集定員を設定する会議体の改善を求める件」についてです。

    厚労省は都市部に医師が偏在していることを理由とし、年々、都道府県全体の臨床研修医募集定員を削減させ、令和6年(2024年)の兵庫県の定員を414人から404人へと10人減らしました。その結果、市立芦屋病院や尼崎医療生協病院など7病院への配分を0としました。

    実質的な臨床指定取り消しにも等しい重大決定です。にもかかわらず兵庫県はこの重大な決定について「臨床研修・専門研修に関する協議会」だけで終えて県医療審議会地域医療対策部会を書面報告のみで済ませてしまいました。また、兵庫県の定員数を決定するにあたっての検討項目の中にある「病院規模・機能等」は、病床数を含め規模が大きい病院が有利になる項目です。また「臨床研修先が県内の割合」の項目は、研修の質とは無関係です。

    さらに問題なのは、基本方針・検討項目は毎年変更され、事前に公表もされないことです。基本方針・検討項目及び募集定員の設定についての臨床研修病院からの意見は、定員決定の通達が届いてから、メールで提出が求められる制度になっており、これでは協議会及び地域医療対策部会の議論内容は不明瞭であり、会議が形骸化していると言わざるを得ません。

    臨床研修病院に対する基本方針・検討項目及び募集定員の設定には兵庫県内全ての臨床研修病院を参加対象とする会議体を設置し、意見を出し合い、反映することが求められます。透明性の確保と会議の形骸化防止のためにも日程や議事録は公表して県民に内容を明らかにするべきです。

    さて、OECD医療関連データの国際比較2019(OECD Health Statistics 2019)によると世界で1000人当たりの医師数が1番多いのはギリシャの6.1人、2番目はオーストリアの5.2人、日本は32番目の2.4人であり医師不足が深刻な状態です。医師不足解消のためには都道府県全体の、臨床研修定員を制限するのではなく、研修医が充実した臨床研修を受けることを保障し、医師を増員することであり、兵庫県の定員を増やすことこそが必要です。

    厚生労働省の「臨床研修に関する省令の施行」によると「臨床研修制度は、医師が、医師としての基盤形成の時期に、患者を全人的にみることができる基本的な診察能力を習得することにより、医師としての資質の向上を図ることを目的としており、地域の医療提供体制の整備にあたっても、重要な役割を果たすことが期待されるものである」としています。これは大きな病院だけではなく、地域に根差した医療を提供している中小病院での臨床研修も有効であるということです。地域医療を担う中小病院が医師の育成を行う意義は大きいものがあります。実際、地域医療を担いたいと中小病院や研修定員が少ない病院で臨床研修を希望する研修医もいます。

    病院統廃合等特別な事由以外で臨床研修病院の研修医募集定員を機械的に0人にしている事例は兵庫県以外にありません。京都府や奈良県などは研修医を受け入れている病院が話し合い、受入ゼロを生まないように調整を行っています。よって令和7年度(2025年度)に0人とした研修医募集定員を、令和8年度(2026年度)は募集定員数を2人以上に増員するべきです。よって請願第24号、第25号の採択を強く求めます。

     

    次に第28号「物価高騰の深刻な影響を受ける学校給食への公的補助を急ぎ、こどもたちの食と学びを守ることを求める件」についてです。

    物価高騰の中で、義務教育期の子どもがいる家庭の保護者の経済的負担ますます大変になっています。6月議会でも、NPO 法人キッズドアが困窮世帯を対象に物価高騰でどれだけ子どもたちの日々の食事に変化が出たかについてのアンケート結果を紹介しました。2021年に比べ2023年の春には、子どもに十分な食事を与えられないが14ポイント上がり60%、子どもに栄養バランスの良い食事を与えられないは5ポイント上がり88%になっています。

    貧困や格差が拡大する中、セーフティネットの役割も持つ学校給食は子どもの成長にとって大切です。しかし、物価高騰の中、給食費の値上げや質の低下に踏み切る自治体が出ています。おかずの品数や量を減らす、質が低下する、栄養基準を満たさないなどということがないように公的な支援が求められています。

     請願趣旨にあるように、8月、政府は全国の自治体に対し、物価高騰対策地方創生臨時交付金を交付しました。この推奨事業メニューには学校給食費など保護者負担軽減も入っています。

     憲法26条で「義務教育は無償とする」とされており、本来学校給食は無償であるべきですが、物価高騰により、教育費負担が増大し、学校給食が深刻な影響を受けることがないよう、公的支援を急ぎ子どもたちの食と学びを守ることを求める請願について、不採択ではなく採択を強く求めます。

     

    次に第2号「子どもの医療費を所得制限なしに18歳まで無料にすることを求める件」ついてです。日本共産党県会議員団が「子どもの医療費無償化」を求め続けてきた中で、県は、2013年に対象年齢を中学3年生までにするなど、制度を拡大してきました。現在県下では41市町中37市町が、県の制度に上乗せし、中学3年まで通院・入院とも無料となっています。高校3年生まで通院・入院とも無料なのは27市町に広がっています。県として子どもの医療費無料化に取り組むことで市町の財政負担が軽減され、市町は他の福祉事業に財政を投与できます。

    「子どもの医療費を18歳まで無料に」は子育て世代にとって切実な願いです。特に物価高騰の中、お金の心配なく安心して必要な医療を受けられるよう医療費支援は必要、不可欠です。子どもの医療費を所得制限なしに18歳まで無料にするためには、兵庫県の一般会計の0,6%の85億2300万円で実現できます。どこに住んでいても子どもの命の大切さは同じです。よって本請願を継続審査ではなく採択することを求めます。

     

    次に第21号「訪問介護費の引き下げ撤回及び介護報酬の引き上げの再改定を早急に行うことを求める意見書提出の件」です。

    これまでも国の介護報酬改定は減らされています。2024年度の介護報酬改定は1.59%の微増ですがこれでは平均賃金が全産業に比べて6万円は少ない介護職員の賃金改善にはなりません。そして訪問介護の介護報酬は減っています。これまでも小規模の訪問介護事業所や通所介護事業所は経営が厳しく倒産件数が多かったのですが、2024年度前期の全国の訪問介護事業所の倒産件数は55件で前年同期比29%も増えています。通所介護事業所や短期入所事業所の倒産件数は35件で前年同期比45.8%増です。2024年度前期の全国の介護事業所の倒産数は全部で114件でありコロナ禍を上回っています。

    自宅で暮らすことを保障することは、高齢者等の人権と尊厳を守ることです。そのための訪問介護は在宅の要支援者、要介護者や家族を支える事業の要です。

    老人福祉法に謳われているように「生きがいを持てる健全で安らかな生活の保障」とともに、倒産を促進させないためにも、訪問介護費の引き下げ撤回及び介護報酬引き上げの再改定を早急に行うことを求める本請願の採択を強く求めます。

     

    次は、第22号「高等教育の学費無償化に向けた教育予算拡充を求める意見書提出の件」についてです。  

     日本共産党県議団は、高等教育の無償化に向かって、当面、学費半額や給付型奨学金のさらなる充実、入学金の廃止を求めると同時に、兵庫県独自の支援が必要と県に求めてきました。

    党県議団は、本年4月から始まった、県立大学の県内学生への学費無償化は、高すぎる学費負担軽減策の第一歩として歓迎すると同時に、それだけでは不十分であり、さらに県外学生に対しても無償化を求めています。

    しかし、現在、物価高騰により、私立大学でも国公立大学でも学費値上げが相次いでいます。

    憲法は14条の「法の下の平等」、26条の「教育を受ける権利」で「教育の機会均等」を保障しています。しかし、日本の学費は世界でも異常に高く、学生や保護者の負担能力を超えています。奨学金は貸与が中心で半数は有利子であり、アルバイトなしには学生生活が成り立っていません。日本も批准している国際人権規約は「高等教育は…無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとする」としています。学費の無償化は世界標準の教育政策であり、日本政府の国民と国際社会への公約でもあります。

    日本では「受益者負担論」により、学生、保護者が教育費を負担することを当然としていますが、将来、学んだことを生かし社会のために働く人が作る豊かな国こそが受益者であり、国は将来への投資として個人に負担を押し付けるのではなく、教育予算を大幅に拡充すべきです。

    よって、「高等教育の学費無償化に向けた教育予算拡充を求める意見書提出」の件について、強く採択を求めるものです。

     

    第26号「PFASの実態把握の徹底調査をし、国の基準見直し、対応策を求める件」についてです。

    米環境保護局(EPA)はPFOSとPFOAの基準値を1リットル当たり4ナノ(ナノは10億分の1)グラムと定めました。強制力のない目標値はゼロに。「PFNA」や「PFHxS」など他の3種類のPFASと、2種類以上のPFASの混合物質についても基準値を1リットル当たり10ナノグラムと定めました。ドイツの専門委員会は健康影響への可能性を示す勧告値としてPFOAの血中濃度を1ミリリットル当たり10ナノグラム、PFOSを20ナノグラムと定めています。しかし、日本の暫定基準は両物質の合算で1ミリリットル当たり50ナノグラムであり、世界に比べると桁違いに甘い数値です。

    第2の水俣病にしないために科学的根拠に基づいた暫定基準値を設定し、河川や公共用水域、地下水及び水道水の徹底的な汚染調査を行い、PFAS被害の防止、命を守る対策は早急に行うべきであり、本請願は継続ではなく採択を強く求めます。

    以上、議員各位の賛同をお願いし、私の討論を終わります。ありがとうございました。

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