議会報告

  • 2022年10月24日
    本会議

    第359回本会議 2021年度決算反対討論 入江次郎

    私は、日本共産党県会議員団を代表し、上程中の決算認定議案のうち、認第1号、認第2号、認第4号、認第5号、認第10号、認第11号、認第15号ないし認第18号、認第20号、認第22号、認第23号、計13件に反対し、以下その主な理由を述べます。

    まず、認第1号「令和3年度兵庫県一般会計歳入歳出決算の認定」についてです。

    反対の第1の理由は、消費税の10%への引上げにより、物価高騰などに拍車をかけ、県民の暮らしを圧迫してきているからです。

    一般会計歳入の税収等の決算額は8737億円、過去最高の高水準となりました。このうち地方消費税収は、2600億円で、税収構成比は、33.1%となっています。

    これは、2019年10月の消費税増税による増収分を平年度化したことに加え、円安、物価高騰などにより地方消費税収の輸入貨物割が大きくのびたからです。総務省発表の8月の全国消費者物価指数は、前年同月日2.8%上昇、12カ月連続で上昇し、上昇率は、1991年9月以来の高水準となっています。食料品などの今年1年間の値上げ品目は、2万点を超えるなど家計を圧迫しています。

    一方、大企業は、内部留保をさらに増やし、500兆円にせまる過去最高水準となっています。コロナ禍のもと、世界では、すでに99カ国で消費税を減税し、力のある大企業や富裕層、金融資産などへは課税強化の方向になっています。

    県税収入においても、地方消費税収をその中心に据えるのではなく、大企業や富裕層などに応分の負担をもとめ、消費税は5%に減税し、小規模事業者を直撃するインボイス制度は中止するよう国にもとめるべきです。

    兵庫県の事業所規模5人以上の事業所で働く労働者の賃金は、1997年のピーク時から年間約87万円も少なくなっています。物価上昇から国民の暮らしを守り、日本経済を立て直すためにも、大企業の内部留保を活用するなどして、中小企業への支援を十分に行いながら最低賃金を大幅に引き上げるなど、物価高、円安に対する抜本的対策を示し実行するよう国へ求めるべきです。県としても中小企業などを支援し、賃金引き上げの施策をおこなうことを求めます。

    反対の第2の理由は、県はコロナ禍においても国と一体となって、地域医療構想の名のもと急性期病床削減など、医療、社会保障を切り捨ててきたからです。また、コロナ対応でも無料検査を遅らせ、臨時医療施設など入院や療養施設の確保を十分に行わず、自宅療養や施設内療養を押しつけてきたことなどです。

    県は、地域医療構想に基づき、2014年度2万8,747床あった急性期病床を2020年度は415床削減、昨年度2021年度は、姫路聖マリア病院、信原病院などで39床の急性期病床を削減しました。昨年度からはこの病床削減を消費税を財源にして行っていることも認められません。

    また、新型コロナウイルス感染症対策費のうち、県独自支出はわずか0.05%で、県独自予算はほとんど使われていません。一方、コロナ病床確保のための空床補償費として約70億円、高齢者施設従事者などへの検査業務や感染者が発生した高齢者施設等への支援費などで2億円不用額としています。爆発的なコロナ感染拡大の中、病院や社会福祉施設等は懸命にコロナ対応を行っているにもかかわらず、支援は極めて不十分です。不用額とするのではなく、必要な支援を更に充実させるべきです。同時に、県独自予算も活用し、高齢者施設等の従事者への集中検査や、いつでも、誰でも、何度でも受けられる無症状者用の無料PCR検査を継続するとともに、症状が出ている方用の臨時検査センター、臨時医療施設、保健所体制の充実などを行うべきです。

    反対の第3の理由は、知事の公約でもある少人数学級を実現することなく、生徒数の減少を理由に県立高校統廃合をすすめる決算になっているからです

    2021年度の小中高の法定教職員数は31942人で、少子化等によるクラス数減により前年度比74人の減員となっています。

    一方で2021年度、兵庫県の小中高、特別支援学校の教員不足は86人にもなっています。これは、決算議会でも指摘をしましたが、学校がブラック職場化し、それが広く学生へと浸透し教員志望者数が過去最低を更新し続け、教員の成り手が不足しているからです。その結果、教員確保が困難な状態になり年度初めから教員不足が発生し、それが現場の多忙化にさらに拍車を掛け、年度内の病気休職者等が多発するという悪循環が起こっています。

    知事の公約でもある県独自の少人数学級を直ちに実施し、教員の負担軽減と、子供たち一人一人に丁寧な教育を行うおこなうことを強く求めます。

    また、教育委員会は2022年3月に県立高等学校教育改革第三次実施計画を策定し、その中で県立高校統廃合計画を発表しました。2025年度までに県立高校14校を6校へ統合するとしています。7月14日に対象校が発表されて以降、子供や保護者、また地域住民からは「高校の選択肢が狭まってしまう」「通学距離が延びてクラブ活動ができなくなる。通学費もたいへん」「丁寧な説明会を開いてほしい」「少子化の今こそ少人数学級実現し、教員の負担軽減と、子供たち一人一人に丁寧な教育を」などの声が広がっています。

    地域にとってはなくてはならない県立高校を統廃合するのではなく、知事の公約でもある少人数学級を実現し、教員の負担軽減と、一人一人の子供たちにきめ細かな教育ができる環境を整えることこそ必要です。県立高校統廃合を推進する県立高校教育改革第三次実施計画の見直しを強く求めます。

    また、反社会的団体である統一教会関連団体幹部なる人物が2018,2019、2021、2022年に、姫路市内と神戸市内の県立高校で性教育の講演を行っていたことを決算委員会で明らかにしました。自民党と統一教会とのずぶずぶの関係が次々と明らかになる中で、その当事者でもあった自民党幹部は「われわれの関与が結果として教団の信頼を高めることに寄与してしまった。反省している」と、述べています。

    県立高校で講師を務めたということが、同じように、団体の信頼を高めることに寄与したことは明らかです。教育委員会は事実を認め関係を断つことを表明しましたが、改めて関連団体及び関係者との関係を断つことを強く求めます。

    反対の第4の理由は、産業立地条例が、条例制定から20年経過する中で、社会情勢が大きく変化し、条例の大幅見直しが求められているにもかかわらず、これまで通りの大企業優遇の制度になっているからです。

    日本経済ではトリクルダウンの経済波及効果は現れず、その結果日本は世界の先進国の中で唯一経済成長が止まり、賃金が上がらない国へとなってしまいました。この20年間、いくら大企業を応援してもトリクルダウンが起こらなかったことはだれの目にも明らかです。全国でもまれな、補助金支出額に上限のない大企業優遇の産業立地条例は見直すべきです。

    反対の第5の理由は、過大な需要予測による不要不急の開発型の大型公共工事を継続しているからです。私たちはこれまでも、需要予測の甘い不要不急の大型公共工事について議会でもその問題点を指摘しました。

    2021年度も「基幹道路8連携軸」として、播磨臨海地域道路計画、名神湾岸連絡線の調査費をはじめ、大阪湾岸道路西伸部の事業費など、不要不急・需要予測の甘い高速道路整備計画が進められました。 人口減少が急速に加速し、すでに都市部でも自動車交通量が減少に転じています。大きく変わる社会情勢のもとで「基幹道路8連携軸」計画の抜本的見直しを求めます。

    県民の命と財産を守ることが県の役割です。不要不急の大型開発型の公共工事より、地元建設業者が直接受注できる防災減災型公共工事への抜本的転換を求めます

    次に認第2号「令和3年度兵庫県県有環境林等特別会計歳入歳出決算の認定」、認第4号「令和3年度兵庫県公共事業用地先行取得事業特別会計歳入歳出決算の認定」についてです。

    これらの議案は、県有環境林等特別会計から県有環境林事業のため公共事業用地先行取得事業会計へ小野市市場用地の約78億8000万円を支出し、その売却収入などを借金返済のための財源として、公債費特別会計へ繰り出したものです。 

    また、淡路石の寝屋用地については、一般会計から県有環境林特別会計へ維持費込みで5116万円を繰り出し、県有環境林特別会計から公債費特別会計へ維持費を除いた5090万円が繰り出されました。過去の用地取得事業の失敗を県有環境林という曖昧な事業で、県民に十分な説明もしないまま、事業効果の検証もしないまま、あらたな借金をつくり事業を続けていくことは認められません。

    次に、認第5号「令和3年度兵庫県営住宅事業特別会計歳入歳出決算の認定」についてです。

    県は、2021年7月、「ひょうご県営住宅整備・管理計画」を改定し、2020年4月1日時点で49,950戸あった県営住宅管理戸数を2025年度に48,000戸へ、2030年に45,000 戸へと削減する計画を決定しました。

    2021年度は、管理戸数を49,382戸から47,429戸へと1953戸が削減されました。例えば明石大久保南住宅では427戸から345戸へ管理戸数を削減する計画の一部が実施され、その他にも集約化や建て替え事業を機に管理戸数の削減がされました。また、姫路辻井鉄筋住宅、春日石才(かすがいしざい)テラス住宅が廃止されました。

    貧困と格差が広がる中、低廉な家賃で住宅を供給するという県営住宅の役割がますます高まるもとでの管理戸数削減は認められません。

    次に、認第10号「令和3年度兵庫県母子父子寡婦福祉資金特別会計歳入歳出決算の認定」についてです。

    県は、福祉的な貸付の償還金回収を債権回収会社に委託しています。回収困難事例が増えており、滞納繰越分の回収率は12.9%となっています。民間回収業者では福祉的な対応が難しいと考えます。返済の意思のある、返済困難な人に対しては、機械的な徴収強化ではなく、少額返済や減免措置など、生活実態に見合った丁寧な対応を行うことを求めます。

    次に、認第11号「令和3年度兵庫県小規模企業者等振興資金特別会計歳入歳出決算の認定」についてです。

    2021年度の兵庫県小規模企業者等振興資金の貸付金の累計未償還残額は、69億411万円。そのうち、地域改善対策高度化資金貸付金の累計未償還残額は、12億1,161万円です。本制度は、同和対策特別措置法等の認定にもとづく事業計画であれば、無利子での貸し付けを行うなどの特例を設けてきた事業です。これまでも指摘してきたように、未償還、焦げつきについて具体的な処分状況が明らかにされておらず、総括もされていないことなどから反対です。

    認第15号「令和3年度兵庫県国民健康保険事業特別会計歳入歳出決算の認定」についてです。

    2021年度は、国民健康保険財政運営の都道府県化から4年目となりましたが、1人当たり保険料調定額の県平均は、2019年9万3,295円、2020年度9万4,680円、2021年度9万4644円と高止まり傾向です。

    また、医療費抑制や保険料徴収強化、一般会計からの繰入の減額を市町に競わせる保険者努力支援制度を導入し、加算点数が多ければ特別交付金が手厚く交付される仕組みになりました。

    さらに、2021年度からは市町の納付金の算定に医療費水準を反映させない改定を行いました。これは、高齢化の進展により避けられない医療費の増加を公費で支えるのではなく、県内の市町全体に痛み分けとして負担を課し、県下統一の保険料を目指すためのものです。これではますます保険料が高くなることは明らかです。国庫負担の抜本的な増額による保険料の引下げ、均等割の廃止など、制度の抜本的見直しこそ必要です。

    認第16号「令和3年度兵庫県病院事業会計決算の認定」についてです。

    2002年度から経費の節減、効率を最優先して、病院事業に企業的手法を導入するための公営企業会計の全部適用が行われ運営されています。公営企業としての独自性の名のもとに、賃金、労働条件が一般行政職と切り離され、水準の切下げが可能な仕組みになっています。

    また、国の社会保障費削減の方針どおりに、在院日数の短縮、稼働病床率の引上げが追求され、急性期で入院しても、退院、転院が急がされています。また、災害時や2次救急の受け入れのために、分散立地が望ましいにもかかわらず、市立病院や民間病院と、県立病院との統合再編を進められています。以上の理由で、認められません。

    認第17号「令和3年度兵庫県水道用水供給事業会計決算の認定」についてです。

    過去の過剰な水需要予測による施設整備や二部料金制などにより、高すぎる県営水道料金は、改善されていません。現在も、県水の供給単価は西宮市で120.01円、尼崎市145.74円に対し、阪神水道企業団の平均供給単価は60.68円となっています。高い県水を市町に押し付けていることから認められません。

    認第18号「令和3年度兵庫県工業用水道事業会計決算の認定」についてです。

    工業用水道事業は、日本製鉄株式会社など、大企業に供給している揖保川第1工業用水の水道料金が、1トン当たり4円30銭で、50年前の1971年から2円しか値上げされていません。工業用水道事業法でうたわれている「社会的経済的事情の変動により著しく不適当」な料金状態と言わざるを得ず、不当に安い価格に据え置いていることから認められません。

    認第20号「令和3年度兵庫県地域整備事業会計決算の認定」についてです。

    2014年から会計制度の見直しにより、進度調整地以外の時価評価処理が行われましたが、進度調整地は簿価評価のままであり、時価評価を行うべきです。プロジェクトごとの収支も明らかにされていないことから反対です。

    また、「淡路夢舞台」にあるグランドニッコー淡路は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により収益が減少し、契約通りの建物賃料支払いが困難な状況となっています。令和元年度は4千万円、令和2年度は1億3千8百万円、令和3年度も同じく1億3千8百万円(税抜き)、併せて3億1千6百万円もの企業庁へ納入されるべき建物賃料が後年度へ繰延べとなっています。企業庁は今後5年間で、繰り延べとなっている3億1千6百万円の半分を返還してもらうとしていますが、今後のコロナパンデミックの見通しが見えない中で、返還の見通しは不透明です。そもそもこうした収益目的の事業を県が行うことに疑義があります。グランドニッコー淡路など収益目的事業からの撤退も含めた検討を行うべきです。

    認第22号「令和3年度兵庫県地域創生整備事業会計決算の認定」についてです。

    地域創生整備事業には、神戸・三宮東再整備事業が含まれており、反対です。コロナパンデミックのもとで、一極集中の街づくりの見直しが求められています。三宮一極集中の巨大開発に県予算をつぎ込む必要はなく認められません。

    また地域創生整備事業に含まれる小野長寿の里構想は、住民、医療・福祉事業者、自治体らが検討委員会を立ち上げ、そこでの議論の上で出来上がった構想です。それにもにもかかわらず十分な議論もされないまま、構想区域の一部を産業団地として事業変更していることは問題です。

    認第23号「令和3年度兵庫県流域下水道事業会計決算の認定」についてです。

    2017年12月に、流域下水道事業会計は特別会計から企業会計に変更されました。公営企業は独立採算が原則であり、地方公営企業法の財務規定の適用がされることで、これまで行われていた一般会計からの繰入も制限されました。

    施設の維持管理に係る費用負担について市町負担が上乗せされ、2021年度は約636万円の市町負担増となりました。以上の理由から賛同できません。

    以上、議員各位のご賛同をお願いいたしまして私の討論を終わります。

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