議会報告
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私は日本共産党県議会議員団を代表して、上程中の議案の内、第78号議案について賛成の立場から、意見を申し述べ、第83号ないし第86号議案、第92号議案、第93号議案、報第1号、計7件について反対し、以下、主な理由を述べます。
はじめに、第83号議案「国営加古川水系広域農業水利施設総合管理事業についての市町負担額の決定」についてです。
本事業は3つのダム整備を含め幹線水路などを整備し、加古川水系農地へかんがい用水を供給する県下最大、全国でも有数のかんがい用水事業です。しかし、国策によって農地面積は減少し、1972年の当初計画では、受益面積8363haとしていたものが、2020年実績は7013haにとどまっています。甲子園球場のグラウンド面積に換算すると約1000個分もの過大な需要予測だったということです。
国の失政による過大な設備投資のツケを市町に求めるべきではありません。
次に第84号議案「国営土地改良事業についての市町負担額の決定」についてです。
本議案は、2012年度から水利施設の改修や用水系統の再編を実施し、今年度から2038年まで市町に負担を求めるものです。
そもそも国が責任を負う国営事業であり、市町に負担を求めるべきではありません。
次に第85号議案「県が行う建設事業についての市町負担額の決定」についてです。
本議案には、県道園田西武庫線が入っています。園田西武庫線は、三菱電機敷地内を含め尼崎市内を東西に走る道路で、総事業費約198億円かけて整備するもので、このうち約55%が三菱電機の敷地1万8600㎡の用地買収、物件移動の補償費に充てられ、合わせて108億円にも上ることから、従来から事業そのものに反対しています。
今後整備予定の東園田側、藻川工区では、用地問題、道路設計などについて関係住民は勉強会を重ねながら、住民として何度も要望や提案をしています。関係住民全体の合意が得られていないことからも賛同できません。
次に第86号議案「国営明石海峡公園整備事業についての神戸市負担額の決定」についてです。
「本事業は、総事業費約958億円を投じ、神戸地区と淡路地区合わせて330haに及ぶ巨大な公園整備を進めようとするものです。
2017年に改定された国営明石海峡基本計画では、神戸地区の入園者目標を75万人と想定していますが、2021年度の入園者数は約4万7,000人で、見込み数のわずか6.2%程度です。淡路地区は入園者目標を80万人~120万人としていますが、淡路花博で最も入園者の多かった2015年度でも83万人、2021年度の入園者は41万3千人で目標に対し34%~50%程度です。
神戸地区には隣接して、しあわせの村という県民に親しまれている公園があり、公園整備事業として必要性のない国直轄事業に地元負担を求めるべきではありません。
また、淡路地区では都市計画法改正によって、㈱アクアイグニスが国営公園としては初めて2020年11月から20年間にもわたるpark-PFI事業としての計画認定がされました。PFI事業は、民間開発事業者が公共施設である都市公園を自由に使用することが懸念され、公共の福祉増進という公園の本来機能が損なわれる恐れがあります。
また、民間事業者による公共還元型収益施設の設置に係る公募選定制度には住民の意見聴取が義務づけられておらず、住民不在のまちづくりが推し進められる危険性があります。例えば、奈良公園では、高級リゾートホテルなどの開発計画へ異を唱える県民の声を顧みず計画が推し進められています。淡路地区でも住民説明会も開催されないまま事業がスタートしました。PARK-PFI事業は、事業者が公園管理者に土地使用料を支払い、収益施設を公園内に設置することができます。県当局が土地使用料につて国へ問い合わせたところ、国有地であり、県も出資している国営公園であるにもかかわらず、国は「土地使用料は公表できない」としています。
公共の福祉の増進を目的とした都市公園が、住民説明会も開催されないまま、土地使用料さえ公表されないまま、民間の利益追求の場になることになります。
以上の理由で反対します。
次に第92号議案「主要地方道加古川小野線東播磨道北工区美嚢川橋上部工事請負契約の締結」、第93号議案「一般国道178号浜坂道路Ⅱ期新諸寄(しんもろよせ)第1・第2トンネル(仮称)建設工事請負契約の締結」についてです。
本議案にある東播磨道、浜坂道路は、ともに全国総合開発計画に位置付けられた高規格道路です。全総計画は、地方に高速道路、空港、港湾などが整備されれば企業が地方に進出し、東京一極集中は是正されるということを一貫した目的として、全国で巨額の大型開発事業を推進してきました。しかし、大型開発では、東京一極集中は是正されるどころか、ますます加速していることが今や明らかです。
さらに、本議案にある東播磨道工事は、橋梁上部工事を伴う契約となっています。これまでも繰り返し指摘をしていますが、橋梁上部工事は特殊技術を必要とするため、受注業者は全て県外に本社を置く事業者になっており、本議案でも橋梁上部工事契約金額16億7百98万円も全て県外企業が受注しています。これでは、地域創生が求められている中で、地域の建設業者を育成し支える立場にもある公共事業の役割が果たされません。
開発型の大型公共工事ではなく、気候変動のもとで今何よりも求められ、地元建設業者も直接受注できる防災減災型の公共工事への転換を求めます。
次に報第1号「専決処分の承認」についてです。
本事案は、県警本部警備部機動隊の隊員が自殺したことに関するものです。亡き隊員の両親は、機動隊内において上司や先輩から指導の域を超えた嫌がらせ等のパワーハラスメントや違法な命令・体罰等を受けたことにより、隊員がうつ病を発症、自殺したとし、県に対し、慰謝料・損害金等を求め訴訟を起こしました。本年6月22日に判決が言い渡されたことに対し、これを不服として県が控訴したものです。
判決では、当該隊員が、うつ病を発症したことを認めています。さらにうつ病は、自殺念慮が表れる蓋然性が高いと医学的に認められる精神疾患に分類されており、うつ病発症が自殺につながったものと認めています。そして先輩の亡き隊員に対する複数の行為は、いずれも指導の域を超え、社会通念上相当性を欠いたパワハラ行為等に該当し、違法であると断罪しています。
判決ではパワハラとうつ病発症、自殺の相当因果関係は認めなかったものの、自殺を決意したことに影響を与えたものと推察されるとしています。
ハラスメントは、上に立つものが「指導のため」とか「ミスが多い」等の理由をつけたとしても、人格を否定するような言動などで、受け手が精神的苦痛、負担を感じた時に成立するものです。うつ病の症状には軽重があり、日によっても状態が変わります。一人でいる時、親しい人の前でひどく落ち込んだりしますが、上司や先輩の前では頑張って明るくふるまうなどがあり、そしてなかなか相談できないということも多くあります。
この隊員は、パワハラを受け大変つらい思いをしていたと考えます。「県民の命を守りたい」と県警に入職した未来ある若者が、うつ病を発症し両親や婚約者を残して自殺に至ったことに対し、県警として真摯に受け止め、控訴すべきではありません。今、早急に県警としてやるべきは、パワハラをなくすことを含めた指導の在り方等を見直し、県民に信頼される県警をつくることです。よって、報第1号「専決処分の承認」は認められません。
最後に、第78号議案「職員の定年等に関する条例等の一部を改正する等の条例」について意見を申し述べます。
これまで60歳で定年を迎えた職員は、年金支給年齢まで再任用という非正規職員としての任用であり、生活関連手当の対象外となるなど、現行のままでは給与等の待遇は、60歳定年を境に悪化します。「雇用と年金の接続性」という点では、必要な条例改正であるとは認識します。
しかし、60歳を超えた職員の給料を60歳時の7割に引き下げることは問題です。人事院が根拠とする2018年の厚生労働省調査は、いったん雇用が切れる再雇用を含めたものの数字であり、定年延長後の給与の根拠として適当なものではありません。同一労働同一賃金の観点からも、給料引き下げありきはおかしいと考えます。
役職者については、60歳時より2階級等降任待遇とし後進の昇進に道を開くためとのことですが、それまでのキャリアを生かしてもらって後進の指導に当たるということも大変有意義であり、給料も補償するべきです。
国も「当分の間」と言っているわけですから、給料を引き下げることがない条例にすべきであり、今後さらなる条例改正を求めるものです。
なお、定年延長に伴う新規採用抑制につながらないよう、定員増も含めて新規採用を進めていただくことも申し添えます。
以上、議員各位のご賛同をお願いし、私の討論を終わります。ありがとうございました。