議会報告
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○庄本えつこ委員 日本共産党、庄本えつこである。
私は、今回の予算特別委員会に知事のおっしゃる「誰も取り残さない」、これをコンセプトに臨んできた。今日で部局審査は終わるが、教育委員会に対しても、誰も取り残さないの視点で質疑をする。
1問目は、但馬地区特別支援学校の統合についてである。
まず、決定のプロセスがどうだったのか、お伺いする。
共産党県議団が豊岡聴覚特別支援学校と出石特別支援学校を統合し、2023年、来年4月に現県立出石特別支援学校の校地に新しく校名で開校し、寄宿舎は廃止するとの報告、説明を受けたのは、今年2月15日のことである。大変唐突な報告であった。
そこで、いつから統合の検討を重ね、保護者、教職員からの意見をどのように把握し、統合を決めたのかお答えいただきたい。
○特別支援教育課長(小俵千智) 特別支援学校においては、自立と社会参加を目指した専門的な教育の充実が重要と考えている。
このたびの両校の統合は、これまでの経緯、そして在籍児童生徒数が急激に減少する中で、集団による学びと、多様なニーズに応じた教育を充実するため行うこととした。
検討に当たっては、両校の児童生徒数の推移などを踏まえた教育の状況について協議するとともに、関係市、教育委員会、県立特別支援学校の校長代表などからご意見を聴取した。
また、このたび社会情勢の変化を踏まえ、三次計画に基づき策定した県立特別支援学校における教育環境整備方針で取組の方向性を明らかにしている。
特に聴覚障害については、今年度設置した外部有識者や医療、保健、福祉等関係機関、学校、保護者代表、当事者などで構成する難聴児への支援のあり方等検討会議の中で、難聴児同士、あるいは障害種別を問わず子供同士が集団の中で社会性を育み、共に学ぶ仕組みが必要など、教育の充実を求める多数の意見を踏まえたものでもある。
統合の時期については、既に両校は、学習集団の小規模化により学校運営への支障が現れており、一つには、今後の児童生徒数、二つには、教員定数等、三つには、校務分掌や教育活動への更なる影響、四つには、発展的統合のメリットなどを総合的に考慮し、早急に統合すべきと判断した。
正式な発表がこの時期となり、保護者などのご理解を得たりご不安を解消したりするには少し時間が必要と考えている。今後、本人や保護者、教職員の意向などを広くお聞きしながら、発展的統合後の学校の具体的な姿をつくり上げることや、両校の交流、必要な施設整備を進めることなどを通じて、ご理解やご不安の解消につながるよう努力していく。
○庄本えつこ委員 今のご答弁では、学校長には聞いたけれども、保護者や教職員への聞き取り、説明はしなかったということが分かった。学校の統廃合はとても大事な問題だから、時間をかけて保護者や教職員の意見を丁寧に聞くことは必須ではないか。何よりも子供が主役であることを忘れているのではないか。
今年の4月、娘さんが豊岡聴覚特別支援学校に入学することを決めた保護者の方から嘆願書が出されている。そこには、準備期間が1年と余りにも短く、乱暴であるとし、続いて、私の娘は、来年度4月から豊岡聴覚特別支援学校に入学する。この学校に決めるまでに他地域の聴覚特別支援学校を見学に行き、何年もかけて悩みに悩み、この学校で勉強がしたい、そして寄宿舎で生活、自立の力をしっかり身につけて、自信を持って高等部へ進みたいと決断した。その思いを教育委員会はいとも簡単に踏みにじり、出石へ行けと言う。なぜ寄宿舎、運動場、プール、トイレ等が整っている豊岡聴覚特別支援学校から出なければならないのか。そして令和5年4月の統合は断固として反対すると、怒りを込めた嘆願書である。
開校までの準備期間がたった1年というのは常識では考えられない。無謀としか言えない。障害を持った子供たちにとって、たった1年で環境を変えられ、新しい環境に慣れていくことは大変難しい。子供たちのことを何も考えていないのではないか。
他の保護者や関係者からも、なぜ保護者など関係者に統合のことを知らせず、秘密裏に決めたのか。保護者は、新聞発表の数日前に知ることになったが、おかしい。1年後に否応なく統合というのは期間が短すぎる。聴覚障害児の進路指導は、児童、保護者とともに3年スパンで将来像を描く。今回の統合の話は、子供たちや保護者たちも受け止め切れない。定期的に聴力測定を行い、聴力の変動がないか調べる必要のある聴覚障害を持つ子供たちにとって、設備の整った豊岡聴覚は最後のとりで、また、補聴器に不具合が起きたときにフォローできる設備もあり、補聴器が守られている。
認知機能の低い幼児や知的障害、自閉症などの発達障害を持っている子供たちは、一般的な機械では聴力検査ができないが、豊岡聴覚には、検査ができる特殊な装置がある。近隣市町の子供たちの検査もしている。
出石新校にも聴覚障害部門に高等部は設置されない、聴覚重複の生徒の受け皿として聴覚部門の高等部設置は絶対に必要である。寄宿舎があることで生活が整えられ、生活する力が身についていっている。生活体験を積み、将来の成長のために寄宿舎は絶対必要など、たくさんの声が寄せられている。
1年という期間設定にこだわるのは、何か豊岡聴覚の校地跡地活用が既に決まっているのではないかとの声も寄せられている。
そこで伺う。
令和5年、来年4月からというのは余りにも拙速過ぎる。皆さんの疑問になっている跡地利用の予定があるのかどうか、明確に答えていただくとともに、関係者の理解が得られていないこの段階で、統合の延期や撤回など、保護者、関係者の声に基づいた再検討が必要ではないだろうか。教育委員会のこの関係者らの声を受け止め、延期や撤回も含めての答弁をお願いする。
○特別支援教育課長(小俵千智) 両校の統合に関する教育委員会の方針について、両校、地元市町、聴覚障害者団体など関係者に対して、公表前の2月上旬に説明の上、ご理解を得ている。
また、両校の保護者に対しては、教育委員会の方針決定公表後、各校から連絡文書を配布した上で、2月下旬から3月上旬にかけて説明会を実施し、理解を求めてきたところである。さらに学校との連携も図りながら、今進めているところである。
保護者については、統合の必要性については、一定のご理解は得られたと認識している。しかし、統合の時期、統合の場所については、個別の事情も踏まえ、ご不安があるとの声があったため、先日、教育委員会から保護者に対し、直接説明会を実施し、改めてご理解を求めたところである。
自立と総社会参加に向けて、子供同士が切磋琢磨できる、より質の高い教育を実現できるよう、令和5年4月の統合が必要であると判断している。このことについて、引き続き保護者や関係者に対し、丁寧に説明していく。
今後、本人や保護者、教職員の意向などを広くお聞きしながら、発展的統合後の学校の具体的な姿をつくり上げることや両校の交流、必要な施設整備を進めることなどを通じて、ご理解やご不安の解消につながるよう努力していく。
なお、跡地利用についての予定はない。
○庄本えつこ委員 3月24日にも保護者の方々への説明を行ったと聞いているが、そこでのやりとりもなかなかきちんとした回答が得られていないという保護者の声をたくさん聞いている。私も検討会議の全ての報告を読んだけれども、そこには統合せよという一言もない。そのことも併せて申し上げたいと思う。
発展的統合とのことだが、主役である子供たち、保護者、教職員を置き去りにして決められたこの統合案を発展的などと言ってはならない。この質問を準備する中で、私の子供が中学生だったとき、高校生だったときのことを、その体験を思い出した。中学では、義務教育なのだから、あなたが努力しなさい、高校では、義務教育ではなく、自分で選んだのだから、自分で責任を持って頑張りなさいというのです。兵庫県は、子供には教育を受ける権利があり、義務を果たすのは行政や大人であることを知らないのかと愕然とした。教育委員会の考え方の反映ではないだろうか。しかも、今回のような上から目線の決定の仕方、またも愕然としている。統合を決めてから決定事項として、保護者、教職員に説明するやり方、決まったことだから、ご理解いただきたいは大変乱暴なやり方だと言わざるを得ない。1年と期限を切らずに時間をかけ、何よりも子供たちのことを考えて、保護者も教職員も地元住民も納得のいく方向をもって、この問題に誠実に臨んでいただきたいと思う。
今回の統合案は、まず撤回し、改めて子供たち、保護者、教職員、地元住民とともに但馬、丹波地域の聴覚障害教育を守り、本当の意味で発展させるよう再度強く求めるが、いかがか。
○特別支援教育課長(小俵千智) 特別支援学校においては、自立と社会参加を目指した専門的な教育の充実が何より重要と考えている。今回の統合に関しては、その自立と社会参加を目指したより質の高い教育を実現できるように、この在籍児童生徒数が急激に減少する中で、集団による学びと多様なニーズに応じた教育を行うため行うものである。
これから本人や保護者、教職員の意向などを広くお聞きしながら、発展的統合後の学校の具体的な姿をつくり上げ、そして両校の交流や必要な施設整備などを進めることを通じて、ご理解やご不安の解消につながるよう、努力していきたいと考えている。
○庄本えつこ委員 統合する場合は、両校の交流は本当に大事だと思う。しかし1年という期間で、それが本当に子供たちにとってできるのかどうか、そしてそれがどれだけ子供たちに不安とかしんどさとかを与えるのか、そんなことをお考えなのか。本当に今、保護者や教職員の方々は、1年間というのは余りにも無謀だ、もっと意見を聞くということと同時に、一緒に、ともに進んでいってほしいという要望をたくさん出されている。たくさんの声が寄せられている。そのことを改めて申し上げ、そして本当の意味で、発展させるということを強く再度求めたいと思う。それを求めて次の質問にいく。
2問目は、学校のトイレについてである。
ジェンダー平等、LGBTQのことを勉強する中で、トイレ問題が大事であることに気づかされ、2020年の決算特別委員会で取り上げた。
学校のトイレは、女子トイレ、男子トイレ、多機能トイレ、誰でもトイレである。スウェーデンは、駅でも学校でも男女共用の個室タイプで、中に手洗い機能がついており、人と顔を合わせる必要がなく、ストレスフリーである。マイノリティーの方たちだけでなく、ストレスフリーのトイレが男子児童生徒にとってもよいことがよく分かった。
大手住宅機器メーカーが行った約1,000人の小学生を対象にしたアンケートによると、男子の4割が「学校で大便をしたくない」と回答、男子トイレで個室に入ることがからかいのねたになり、大便がしづらい、学校ではせず我慢する、下校途中で漏らしたなどの深刻な事態もあるとのことである。
神奈川県大和市教育委員会は、2016年度から全小中学校の男子トイレの一部を完全個室化する方針を決め、実施している。2017年に大和市が行った男子児童に行ったアンケートでは、よかったが55%だった。もちろん排せつは恥ずかしいものではないという教育も必要だが、男女共用の個室タイプであれば、心と体の性が一致しないトランスジェンダーの児童生徒にも配慮できるというものである。今後、学校のトイレは、男女共用の個室タイプにしていくべきである。それが難しいのであれば、せめて男子トイレから小便器をなくし、完全個室化を求めるが、いかがか。
○財務課長(中野恭典) 学校施設のトイレ整備については、文部科学省が策定した施設整備指針では、一つに、生徒などが利用しやすい位置に男女別に計画すること、二つに、洋式便器かつ乾式を採用することなど、生活様式や生徒のニーズなどを踏まえたトイレを計画するこなどが示されている。
この指針などを踏まえ、本県では、平成29年度からトイレの便器の洋式化、乾式化を計画的に整備していて、令和5年度には全校の普通教室棟のトイレ改修が完了する予定である。また、改修の際には、各学校で1ヵ所、多目的トイレを整備することとしている。
委員からもお話があった、スウェーデンの男女兼用の個室トイレの状況についてご紹介があったが、県立学校にもそれと同様の整備をしてはということである。現在、県立学校では、男女別のトイレと多目的トイレを整備しているが、この男女別を廃止して全てのトイレを男女兼用にするということになる。男女別を残したままであると、一部の男女兼用トイレを整備した場合、男女兼用トイレを使用するという方はLGBTQ、いわゆる性的マイノリティーの方であるというようなことが明らかになるということで、これによってLGBTQ、性的マイノリティーの方に対して男女兼用トイレを整備するということについての必要性は一定理解するところではあるが、しかし現在の日本では、異性と隣同士の個室になること、それから、異性が利用した後にトイレを利用することなどへの抵抗感などについて、まだ社会的な理解が得られているということについて判断することはできないということから、県立学校では、そのようなトイレ整備に取り組むことは困難であると思っている。
なお、一部男子トイレについて個室トイレにすればというご質問もあったが、そうすると、男子生徒がトイレにかかる時間が長くなる。そうすると、小便器であれば、時間が短くて済むものが、個室トイレになると時間がかかるので、生徒が休み時間の間に、全部トイレが終了できるかどうかという問題もある。ということから、なかなか難しい問題ではないかなと認識している。
以上である。
○庄本えつこ委員 なかなか難しいという後ろ向きの答弁だったけれども、各家庭では、大体トイレは1つが多いと思うけれども、全員で使っているので、全くそのようにしていけば違和感はなくなると思う。多目的トイレにやっぱりトランスジェンダーの方なんかが入るということそのものが勇気が要ることなので、せめて男子トイレを完全個室化するという、そういうことをぜひ決断していただきたいと思う。個室化が必要だとする自治体も増えてきている。2017年のアンケートでは、23%の自治体がそのように答えているので、今はもっと増えていると思う。兵庫県としての決断を求めて、質問を終わる。
ありがとうございました。