議会報告
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○庄本えつこ委員 午前中、2人の委員が質問されたが、私もケアラー・ヤングケアラーについて質問する。
近年、ヤングケアラーが注目されている。ヤングケアラーとは、繰り返しになるが、本来大人がするとされているような家事や家族の世話などのケアを日常的に行っている18歳未満の若者のことである。国は2019年7月に要保護児童対策地域協議会におけるヤングケアラーの対応についての通知を出し、各自治体が要保護児童対策地域協議会や関係機関においてヤングケアラーに対する適切な支援が行われるよう要請した。その後、2020年、ヤングケアラーの実態に関する調査研究が行われ、ヤングケアラーの支援に向けた福祉、介護、医療、教育の連携プロジェクトチームが設置され、提言がまとめられた。
自治体レベルの取組としては、2020年2月に全国初となる埼玉県ケアラー支援条例が制定され、2021年3月、埼玉県ケアラー支援計画が策定されている。兵庫県内では、神戸市が昨年6月、20代も含めたこども・若者ケアラー対象の相談窓口を全国で初めて開設した。
兵庫県も2021年4月に福祉関係機関に対し実態調査を行い、その結果を踏まえ、同年9月、ケアラー支援に関する検討委員会を設置、今年2月、20代から30代前半までも合わせて対象にする兵庫県ケアラー・ヤングケアラー支援推進方策をまとめた。
今回の質問に当たり、私は国や埼玉県、神戸市、兵庫県のアンケート結果報告を読み、大いに期待したいと思っているが、まず、県の役割についてお伺いする。
ヤングケアラー支援は住民に一番近い市町において取り組むことが望ましい、それはそのとおりだが、まだまだ支援体制は構築されていないのが現状である。市町に対しどのように県として支援し、推進していくのか、考え方をお示し願う。
○地域福祉課長(野田誠一) 家族の世話や介護を行う子供自身がヤングケアラーであると認識していることは実態調査においても少なく、学校であるとか地域包括支援センターなどの関係機関からの情報を契機として支援につながるケースも多いと聞いており、関係機関との連携については重要なことであると認識している。
このため、ケアラー支援に関する検討委員会には教育次長や市の職員が委員として参画し、現場で教育や福祉機関が連携を深める方策について検討を行った。
また、庁内関係各課で構成する庁内連絡会議を設置し、ケアラー・ヤングケアラーに関する情報共有や効果的な事業の実施に向けた連絡調整など、全庁横断的な連携体制の構築を進めているところである。
また、市町において円滑に取組が行われるよう、この3月下旬にも、オンラインであるが、市町連絡会議を開催することを予定しており、その中で、ケアラー・ヤングケアラーの支援の先進事例を紹介するとともに、ヤングケアラー支援体制構築モデル事業などの国庫補助メニューがあるので、これらのメニューの活用などを通じて、各市町のケアラー・ヤングケアラー支援担当の部署の設置など、市町に対して強く働きかけていきたいと考えている。
○庄本えつこ委員 ありがとうございます。さらに、より具体的に支援していくために、県教育委員会、市町の教育委員会とも連携し、学校での実態調査をする必要があると考える。その結果を踏まえ、埼玉県のようにケアラー条例を制定し、支援計画を策定するべきだと考える。そのことによって、埼玉県はこれをつくったことによって本当に様々な支援を行っているが、兵庫県としてはいかがか。
○地域福祉課長(野田誠一) 今回の検討に当たり、埼玉県の状況についても事前に私どもも勉強させていただいたところである。それを踏まえ、条例については、今後、事業を進めていく中で必要ならばというところで、取りあえず、まず具体的な取組を進めるべきという方向で、今回、検討委員会のほうを立ち上げ、その上で、支援推進方策、それと今度の予算として基盤事業のほうを盛り込ませていただいたところである。
これらの取組については、今後も県、市町、関係機関、支援団体等で構成する推進体制を構築して、その実施状況や効果などについても検証をしながら事業を進めていきたいと考えているので、その中でまたいろいろと考えていきたい、試行錯誤を繰り返していきたいと思っている。よろしくお願いする。
○庄本えつこ委員 必要であれば条例も考えるという答弁を重く受け止めたいと思っている。本当にぜひつくるべきだと思っているところである。
私ごとだが、今思えば、私も高校生のときにヤングケアラーだった。うち事情があって、母と祖母と兄弟の5人家族だったが、母が高校1年のときに亡くなって、私は一人娘を亡くした祖母の嘆きを毎日のように聞いて、励まし、時には叱咤していた。高校3年生の12月に祖母が入院し、ほぼ2ヵ月間学校に行かず、病院に泊まり込み、祖母の下の世話もしながらみとった。3年生の終わりだったので、授業日数が少なかったため、祖母が亡くなった後はそのまま卒業式まで休みになってしまった。学校に行けない日々は本当に孤独感を感じるものだった。つい最近までそれが当たり前だったと思っていたが、まさにヤングケアラーだったと思っている。当時の看護婦さんやドクターも矛盾を感じていなかったと思う。
だから、今でも自分がやらなければとの思いで家族への愛情を持ってケアをしているケアラー・ヤングケアラーの子供たちが多いのではないか。それは一面、すばらしいことにも見えるが、一人で抱え込んでいるのが実態ではないか。周りの大人に頼ってよいこと、いろいろな支援があり、それを活用することはよいことなのだということを、子供たちだけでなく、周りの大人たちにも分かってもらう必要がある。これは皆さんも認識していることだと思う。
そのため、県は来年度、モデル的に相談窓口の設置等を行うとしているが、その後は、先ほどの中にもあったが、具体的にどのように展開していくのか。本当に困っている子供は相談できないという国のアンケート結果もあることを踏まえ、もう一度お答えいただきたいと思う。
○地域福祉課長(野田誠一) 委員ご指摘のとおり、子供たちが自らヤングケアラーであるという認識もなく、力的にも発信していくということは難しいだろうと考えている。そのため、私どものほうとしては、ヤングケアラーに関わるいろんな福祉、介護、医療の職員がまずそれに気付くということが大切だと考えている。
このため、基盤事業の一つとして、その関係者が、実態はどうなのか、あるいは、どうやったら気付くことができるのかということについて研修を受けていただく。そういう形の中で、気付きというところに気付ける体制を整えていきたいと考えている。
基盤事業にはないが、委員ご指摘あったとおり、社会的認知度を高めるということも重要だと私どもも認識している。このため、いろんな形で啓発活動というのも、既存のメニューなども使いながら進めさせていただきたいと思っているので、よろしくお願いする。
○庄本えつこ委員 私自身もたくさんやってほしいことがあるが、時間が限られているので、質問ということではなく、具体的な提案を4点ほど申し上げたいと思う。
1点目は、県がモデル的に相談窓口を開設し、全市町に相談窓口担当部署の設置促進をしていくという中に、既存の相談窓口の活用や担当職員の兼務による対応とあるが、これではおざなりの対応になってしまうと危惧する。市町に専門の窓口をつくり、専門の担当職員を置くように働きかけていただきたいと思う。
2点目は、健康、福祉、介護、子ども・子育てなど支援のメニューが結構あると思うが、所管部署も違うし、ワンストップでその家族に支援が行くように工夫することが必要だと考える。それができるまでは、例えば受けられる支援、その窓口の一覧表を作って、すぐに動くことができるようにすることも工夫の一つだと思っている。東京の国立市はもう30年以上前から、例えば児童手当などの申請に行ったときに、こんな支援もあると一覧表を渡していた。ぜひ工夫していただきたいと思う。
3点目は、検討委員会の濱島座長が、今後は全ての領域で自分たちはヤングケアラー担当者という意識を持って、連携して取り組むことが求められるようになると言っているように、そのためにも、庁内の連絡会議とか研修には全ての部局が参加できるようにぜひお願いしたいと思う。例えば就労支援のためには産業労働部が必要なので、そういうことも含めて、全ての部局を参加させるようにお願いしたいと思う。
4点目は、尼崎市の2022年度予算には、ヤングケアラー支援のため、支援が必要な家庭にホームヘルパーを派遣し、子供の家事負担の軽減を図るとともに、当事者同士が交流できる居場所づくり、ピアサポートだが、行う、また、ヤングケアラーに関する調査や啓発に係る研修等を実施するとして、954万8,000円を計上するなど、本当に一歩進んだ施策を計画している。さらに、県内市町がケアラー・ヤングケアラー支援の施策が実現できるように、市町への財政支援を行うべきだと考える。ぜひ前向きに考えていただきたいと思う。
やっと顕在化してきたケアラー・ヤングケアラー問題、行政の支援はもっとたくさんやれることがあると思う。子供時代は一度しかない。ケアを担う子供、若者たちが取り残されることがない社会の実現を目指して支援推進方策を策定したのであるから、子供たちが子供らしい時期を過ごせるように、県は予算を増やして、県条例をつくって、具体的な支援計画を実施していくことを再度求めて、次の質問に移る。
急性期病床の削減についてである。
コロナ対策に関わっての質問である。2020年度、国は病床機能再編補助金により全国で急性期病床などを3,401床削減、転換分を除いても2,846床削減してきた。兵庫県では急性期病床120床削減、転換分を除いても79床が削減されている。
コロナ禍で病床が足りないと言われる中での削減に大きな批判が広がっているが、今年度、2021年度はその財源を消費税増税分で賄う法律改定が行われ、更なる病床の削減が進められている。2021年度、兵庫県では急性期病床等の削減数が幾らか、お答え願う。また、新年度予算における病床機能再編補助金の見込み予算額を併せてお答え願う。
○医務課長(元佐 龍) 病床機能転換・再編統合等支援事業は、病床の機能分化・連携の推進を図るため、高度急性期病床や回復期病床など不足する病床機能への転換に加え、医療機関再編統合や病床規模適正化整備等の支援を行う事業である。
令和3年度においては、これまで急性期376床を圏域において不足する高度急性期109床と回復期30床への転換等を行う計画が承認されている。
令和4年度予算案については、これまでの実績や各病院の計画を考慮し、全体として28億8,650万円を計上している。具体的な事業計画については、令和4年5月頃に事業公募を行い、地域医療構想調整会議等での議論を踏まえ、決定することとなっているので、ご理解いただくようよろしくお願いする。
○庄本えつこ委員 理解はできないと申し上げておく。
2021年12月末に消費税を財源に、当面346床を削減する計画を示したとのことである。2021年度は、第4波での緊急事態宣言措置から始まり、第5波、そしてオミクロンによる第6波と、一年を通してコロナとの闘いを進めてきており、その都度、医療環境は逼迫、病院にも宿泊療養施設にも入れず、自宅で命を失うといういたたましい状況を繰り返してきている。
その中で、社会保障のためとされている消費税増税分、これを財源に病床を削減する等の施策を続けて本当にいいのだろうか。国の補助事業とはいえ、県のコロナ対策、社会保障のあり方そのものが問われていると思う。根本には、地域医療構想による病床削減計画がある。
地域医療構想のワーキンググループで議論を主導してきた、今の日本医師会の会長中川日本医師会現会長は、地域医療構想では、新興感染症に対する医療提供体制の確保という視点が欠落していた。平時にぎりぎりの医療提供体制ではだめだ。感染症病床の候補として、統合再編の対象とされた公立公的医療機関の病床をそのまま空けておくのも一つのあり方だと述べている。本当に病床を削減するべきではないというご意見だと思っている。
コロナ禍の下、少なくとも2022年度は病床削減は行わず、地域医療構想の病床削減計画を改め、急性期病床の確保を進めることを求めるけれども、いかがか。
○医務課長(元左 龍) 地域医療構想は2025年に向けて、住民が住み慣れた地域で生活しながら、状態に応じて適切で必要な医療が受けられるよう、一つには、病床の機能分化・連携、二つには、在宅医療の充実、三つには、医療従事者の確保など、地域完結型医療体制を整備するものであり、病床の削減を目的とするものではない。
県としては、高齢化の進展による医療需要の増大に対応するため、限られた医療資源の有効活用が必要であり、地域の実情を十分に踏まえ、関係者の合意の下行われる病院の統合や機能の連携、病床の集約化や機能転換など、地域医療構想実現に向けた取組を推進していくことは必要だと考えている。
現在、コロナ対応を踏まえ、各圏域での感染症対策はどうあるべきかということも重要な要素の一つとして、医療機関の自主的な取組の基、地域医療構想調整会議において検討が行われている。
県では引き続き、地域の議論の活性化を支援するほか、病床機能転換、再編統合等支援事業におきまして、病床の機能分化・連携を推進するなど、新型コロナウイルス感染症など新興感染症の感染拡大時にも対応可能な地域医療体制を構築し、県民が安心して、必要な医療が受けられるよう、地域医療構想を推進してまいりたいと考えている。
○庄本えつこ委員 いつもこの地域医療構想のことを質問すると、必ず病床の削減が目的ではないという言葉が出てくるけれども、実際、急性期医療の病床は削減されているわけである。それで地域完結型というけれども、本当に必要ならば、県として増やしていくということもあるわけだから、そのことも改めて申し上げて、質問終わりたいと思う。
ありがとうございました。