議会報告

  • 2022年01月25日
    特別委員会

    行財政運営調査特別委員会 「行財政運営方針の見直し案」について 入江 次郎

    一次案に対する意見開陳を行います

    ●始めに財政運営についてです。

    一次案では、「税収の伸びの鈍化等により、令和10年度までに収支不足額は総額440億円になる見込み」としています。コロナの影響はもちろんありますが、成長が止まったままの県経済を成長させるためにも、これまでの経済政策を抜本的に見直し、県財政を健全化させることを求めます。

    1980年代にはじまり、90年代に本格化した大企業が利益を挙げればその利益がやがて家計に滴りおちるというトリクルダウンの経済政策は“強い経済”をつくるといううたい文句とは反対に、「賃金が上がらない」「成長できない」「競争力の弱い」という、日本経済を“もろく弱い経済”にしてしまいました。

    日本経済をここまで“もろく弱い経済”にしてしまった原因は、労働法制の規制緩和、社会保障削減、大企業・富裕層減税の穴埋めとしての消費税連続増税。この3つの悪政によって、実質賃金が減り、負担が増え、将来不安が社会を覆い、家計消費を冷え込ませた結果、日本は「成長できない国」になってしまったのではないでしょうか。

    兵庫県でも国の施策を追随してきた結果、県内GDPは20年以上20兆円前後で成長が止まったままとなっています。県政改革というのであれば、破綻した新自由主義的な大企業優遇・大型開発優先のトリクルダウン型の経済施策から、県民の暮し、子育て、雇用、福祉を温めるボトムアップ型の経済政策へ抜本的に転換し、県財政を健全化させる県政改革を求めます。こうした視点に立って、以下、意見を申し上げます

    ●事務事業についてです。

    事務事業については、バス対策補助事業、県民交流バス事業、老人クラブ活動強化事業、商店街の活性化施策等々、県民の暮らしに関わる事業についてそれぞれ市町からは「継続をお願いしたい」「必要があると考える」「引き続き支援して頂きたい」等の声が、各自治体からあがっています。また、ある自治体首長からは、「突然の話であり、だいたいコロナ禍でやることではない」「もっと現場の状況を掴まないとダメだ」「一番困るのは地域創生交付金だ。押し返して半分残す二次案が出てきたが、元に戻すよう引き続き話をする」「修正案でも、創生交付金は今後市町のニーズを踏まえ新たな事業の創設を検討というが、結局具体性は何もない。代替案にはなっていない」「グループホームへの補助金も酷い話だ。居場所を奪うことになる」「弱者支援をやらずに何のための行革か」等々、厳しい意見が私たちのもとに寄せられました。

    また、補助金廃止の対象となる障害者小規模事業者からは「障害・精神・知的などに分けて丁寧に支援している。大規模施設ではついていけない利用者もいる」。同じく補助金廃止の対象となる音楽療法定着促進事業では「県補助があるから音楽療法をお試し期間として取り入れる施設がたくさんあった。お試し期間後も引き続き音楽療法を取り入れる施設は8割近くにもなっている。さらに広げるためにも支援を継続してほしい」。また、県立障害者高等技術専門学校の運営体制見直し(寮の廃止)については「県内のモノづくり科は玉津にある県立学校にしかない。通学でパニック障害になる生徒が以前に入寮していた。寮を廃止すればこういう人たちが学べなくなる可能性もある」、等々、切実な声が私たちの元にもたくさん寄せられました。それにもかかわらず、修正案では説明の補充や経過措置に留まっています。

    提案されている事務事業の廃止・見直し案は「だれ一人取り残さない」という知事の公約と激しく矛盾します。改めて、県民・市町の声をよく聞き、暮らし・福祉にかかわる事務事業の廃止・見直し案は撤回することを求めます。

    一方で、最も公助を必要としない大企業をさらに優遇する「産業立地条例」は見直しが提案されていません。私は、これまでの委員会の中で「産業立地条例制定時の仕事がないという社会情勢から、人出不足へと社会情勢が大きく変化していること」、「補助金に上限を設けていない全国的にも稀な大企業優遇の制度であること」、「補助金の支出が企業の投資動向に決定的影響を与えていないこと」、「県内で36もの市町で同趣旨の企業誘致条例を行っていること」などを挙げて条例の見直しを求めました。

    さらに、2月議会に提案される見込みである「ひょうご長期ビジョン2050」の策定過程では市町から「工場ができて税収増になっても、雇用の創出や人口流出抑制にはあまりつながらない。自治体による事業所誘致の目的と手段の再検討が必要」等々、ここでも産業立地条例の見直しを求める声が次々と挙がっています。毎年約10億円もの巨額の県税が、最も公助を必要としない大企業に支出されています。

    改めて破綻したトリクルダウン型の経済政策の典型例である産業立地条例を見直し、その財源を県民の暮し・子育て・雇用へ充て、家計を温めるボトムアップ型の経済政策への転換を強く求めます。

    ●投資事業についてです。

    現在県が進めている基幹道路8連携軸計画は、その大半が全国総合開発計画、いわゆる全総計画に大元があります。全総計画は、高速道路・空港・港湾などの大型投資を促進すれば、地方に大企業が進出し東京1極集中は是正され、大企業が利益を挙げればその利益がやがて家計へ滴りおちるというものでした。

    全総計画の全てを否定するものではありませんが、とりわけ1987年中曽根内閣で閣議決定された4全総計画では、10年間で何と1,000兆円にもなる膨大な公共投資計画が掲げられ、兵庫県では、西播磨テクノポリス構想、但馬空港、北近畿豊岡自動車道路、中国自動車道姫路鳥取線、新名神高速道路が整備され、その後の5全総計画では、今まさに整備中の山陰近畿自動車道、東播磨自動車道、大阪湾岸道路西伸部、名神湾岸連絡線、さらには淡路島と和歌山県を紀淡海峡で結ぶ紀淡連絡道路構想が掲げられました。しかし、大型投資で大企業を呼び込んでも、人口減少はさらに加速し、県経済のGDP成長も止まったままで働く人の実質賃金も上がっていません。

    基幹道路8連携軸計画の前期計画は県政改革方針の最終年度と同じく令和10年度となっていますが、前期計画総事業費約1300億円のうち約600億円が県負担となっています。一次案に対する市町からの意見では「緊急浚渫推進事業の減額は撤回し、継続ずべき」等々の、声が寄せられています。ここでも破綻したトリクルダウン型の大型投資事業から、県民の命や暮らしを守り、地元建設業者も直接受注できる防災・減災型の投資事業への転換を求めます。

    次に県庁舎再整備事業についてです。

    一次案では「県庁舎再整備は一旦凍結し、新たに民間投資を呼び込むような将来の元町グランドデザインを描いた中で検討する」とあります。

    知事は昨年12月16日の記者会見の中で「今の計画は、10年以上先の完成を見据えた姿でした」「少し中長期的なスケジュールで10年、場合によっては20年かはわからないが大きな視野で改めて絵を描いていきたい」「その間、IS値が大きく不足していますので・・一旦簡易的な耐震改修を行いつつ」「民間投資も活用しながら700億円という事業費の圧縮も行っていきたい」旨を説明されています。

    そもそも、県庁舎再整備計画は「官庁施設の総合耐震計画基準」のIS値を大きく下まわることがきっかけだったはずです。県庁舎整備が20年先の完成も想定される民間呼び込み型のグランドデザイン構想が優先され、耐震化が遅れるようなことがあってはなりません。県庁舎再整備は防災拠点、職員の命を守る施設として耐震改修を最優先に整備を行うべきです。

    また、知事は「事業費の圧縮」も言われています。しかし、知事の云う元町グランドデザイン構想によって整備区域が拡大され、グランドデザイン構想を優先することによって庁舎整備が先送りされ、その間を簡易的な耐震改修で凌ぐということになれば事業費はますます膨れ上がるのではないのですか?その穴埋めとして県民の財産である公共用地、公共施設を民間の利益追求の場として売却・賃貸しようとしているのではないですか?職員の職務スペース、県民会館も含めた県民交流スペースが削減されることがないよう求めます。

    次に伊丹庁舎新館等整備事業についてです。修正案では「伊丹庁舎の整備及び阪神県民局としての統合は一旦凍結」という案が示されました。

    また、先日の委員会では「芦屋保健所についても統合は凍結。今後地元の意見も聞きながら、見直しの議論を進めていく」との説明がありました。この間、芦屋市議会では全会一致で芦屋保健所の存続を求める意見書が採択されるなど、地元では今回の芦屋保健所統廃合計画凍結を評価する一方で「パンデミックの脅威を目の当たりにして、今後保健所体制強化の議論はあったとしても、保健所統廃合議論の再開はありえない」という声が挙がっています。芦屋保健所統廃合計画は凍結ではなく撤回することを強く求めます。

    ●公的施設についてです

    一次案では公的施設について「民間活力を活かした管理運営を推進する」とあります。

    現在96の県管理施設を県の密接公社や、民間企業へその管理を指定し委託しています。私は以前の委員会質問で、指定管理者制度を導入する以前と、導入後の平成30年度を比較し、比較できる69施設の内41施設で利用者数が減少していることを指摘しました。

    また、総務省が指定管理者制度の留意点として「労働条件への適切な配慮」を各自治体宛に通知していることを示して県が指定している指定管理者ではどのような配慮がされているのかについてもお尋ねしました。

    さらに、2018年4月から労働契約法が改正されいわゆる無期転換ルールが施行されましが、法改正に合わせて指定管理者の多くが無期転換申し込み権が発生する前に「5年を限度に雇止め」を、労働契約に追加しています。厚生労働省は「無期転換申し込み権が発生する前の雇止めは法の趣旨に照らして望ましものではない」としています。このことについても、認識を問いました。しかし、いずれも明確な答弁はありませんでした。

    指定管理者制度の導入によって県民サービスを図る一つの指標である利用者数は減少し、労働条件は悪化の一途をたどっているのではないですか。民間活力の導入と言いながら、コスト削減がその最大の目的になっているのではないでしょうか。

    人件費を抑制して収益を改善する仕組みこそ日本経済の最大の課題であることが今や共通の認識となっています。コスト削減を目的とした県管理施設の民間委託は見直すべきです。

    ●職員定数について

    一次案では「平成30年4月1日の職員数を基本としつつ」とあります。

    平成21年に大流行した新型インフルエンザでも、新型コロナウイルス第1波、第2波でも、それぞれの検証報告書によって保健師不足が指摘されました。しかし、県は行革を最優先し、中核市へ移行した明石市分を除いても行革前の平成19年度の152名から行革後の平成30年度には116名へと保健師を36名も削減し、県所管の保健所も25ヵ所から12ヵ所へと統廃合してしまいました。 コロナ第5波で、ある保健師の超過勤務は4月146時間、5月169時間、6月103時間にもなっています。こうした過労死ラインを大幅に上回る超過勤務がコロナパンデミックの間、頻繁に発生しています。

    人員不足は保健所業務だけではありません。土木部門でも人員不足が過去の大規模災害検証報告書で指摘されているにもかかわらず、総合土木職職員は行革の同時期に1,073名から814名へと大幅に削減されました。

    いつ起こってもおかしくない南海トラフなどの大規模災害、発生頻度が高まっているパンデミックに備え、今度こそ検証報告書に耳を傾け、適切な人員配置と体制整備を行うべきです。

    以上で、意見開陳を終わります。

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