議会報告

  • 2021年12月13日
    本会議

    第356回本会議 請願討論 いそみ恵子

    私は、日本共産党県会議団を代表して、上程中の請願の内、請願第53号ないし第55号、第58号ないし第61号について不採択ではなく、採択を求め以下討論します。

    請願第53号「選択的夫婦別姓の導入へ、一日も早い民法改正を求める意見書」を国に上げることを求める請願について日本共産党県会議員団は、採択を強く求めます。

    本請願は、請願趣旨にあるように、国連は、SDGs・持続可能な開発目標の達成にジェンダー平等が決定的に重要と位置づけ、世界各国がジェンダー不平等解消へ努力しています。日本はジェンダー平等ランキングで世界156か国中、120位と大幅に遅れ、特に政治分野147位、経済分野117位と遅れが際立っています。

    とりわけ国連女性差別撤廃委員会が繰り返し法改正を勧告している「選択的夫婦別姓の民法改正」は、喫緊の課題です。世界で夫婦同姓を法律で義務づける国は、日本だけです。世論調査でも選択的夫婦別姓導入賛成は、7割、10月の衆院選でも争点の一つとなり、同時に行われた最高裁判事国民投票では、夫婦別姓を認めない民法の規定を合憲とした裁判官に罷免票が多く集まりました。

    姓を変更するのは、女性が96%という現状に、請願団体がとりくんだアンケートでは、「仕事や研究で、それまでのキャリアが中断し、不利益を被っている」「姓の変更で手続きが大変」「同姓を強制することなく女性の意思や自尊心を大切にしてほしい」など切実な声が寄せられています。この問題にかかわって最大の問題は、「夫婦別姓の選択肢」がないことです。

    多様性を尊重する社会実現に向けて、「夫婦別姓の選択肢」がないことは、女性だけでなく、男性にとっても人権問題であり、憲法13条、14条、24条にも反します。選択的夫婦別姓導入を求める意見書は、全国300以上の議会で採択されています。

    よって「二人とも夫または、妻の姓を名乗る」「夫も妻も結婚前の姓を名乗りつづける」ことを自由に選べる「選択的夫婦別姓制度」の導入へ民法改正を求める国への意見書を求める本請願の採択を強く主張します。

    請願第54号「社会福祉事業に関わる職員配置基準等の抜本的引き上げを求める意見書提出の件」についてです。

    この請願は、全国福祉保育労働組合兵庫地方本部はじめ233団体が賛同して提出された請願です。

    1年半以上にもわたる、コロナ禍のもと、介護・障害者福祉事業所、保育所、学童保育所などの福祉職場は、エッセンシャルワークとして、事業継続が国や行政から要請され、職員は感染対策に心身をすり減らしながら従事されてきました。

    これまでも、福祉職場では、賃金が低いなど処遇の悪さから恒常的な人不足に悩まされてきました。コロナ禍で拍車がかかった状態であり、必要としている人たちに十分な福祉が提供できかねない深刻な状況です。

    背景には、社会福祉事業に関わる職員配置基準と予算措置の貧弱さがあります。例えば、職員配置基準は、特別養護老人ホーム、老人保健施設などの介護施設では、3人に1人、障害者支援施設(入所支援施設)では生活支援員は60人まで1人、保育所は0歳児で3人に1人、1歳から2歳児で6人に1人、3歳児で20人に1人です。学童保育は、1学童につき1.5人分しか予算措置されません。

    これらの事業所は、この基準では、とても運営することが難しく、独自で上乗せをしている事業所も少なくありません。それでもなお、入所者、利用者、子どもたちに十分な関わりを持つことも難しいうえに、休憩時間も取りづらく、時間内に事務時間が取れずに、持ち帰り仕事をしている人も多くいるのが実態です。

    今、多くの社会福祉事業所の労働者は、長時間労働と低賃金で将来に見通しが持てず、「健康で文化的な生活」を営む権利が奪われた状態です。

    中でも、学童保育・放課後児童クラブの指導員は、平均年収200万円と特に低く、抜本的な賃金引き上げ策と先ほども述べたような、1学童につき1.5人分しか予算措置がされていません。

    よって、国に対して、社会福祉事業に関わる職員配置基準の抜本的な引き上げと、それに見合う予算措置を講じることを求める、本請願の願意に賛同し、採択を強く主張します。

    請願第55号「来年の75歳以上医療費窓口負担2割導入の中止を求める意見書提出の件」についてです。

    来年10月にも実施されようとしている、75歳以上の医療費窓口負担は数々の問題があります。

    1つ目は、負担増による受診控えが起こりうる可能性が6月の国会審議でも認められ、健康悪化が強く懸念されることです。厚労省は、負担増による「受診行動」の変化で医療給付費が年間1050億円減ると試算しています。高齢者にとって通院や薬を減らすことは病状悪化に直結します。

    2つ目は、現在政府が想定している2割負担の対象者は、単身世帯で年収200万円以上、夫婦世帯では合計年収320万円以上で、約370万人とされていますがとても高額所得者と言えません。しかもこの対象は「政令で定める」とされ、今後は国会に諮ることなく政府の判断で対象者の範囲をどこまでも広げることが可能であり、際限のない負担増に道を開くことになります。

    3つ目は、政府が2割負担導入の口実にしている「現役世代の負担上昇を抑える」ことはできないということです。

    今回の2割負担導入によって軽減される現役労働者の保険料負担額は1人当たり年間たった350円・月にして30円にすぎません。現在22歳の人の場合、単純計算で74歳まで支払う保険料の軽減額は平均で合計額約2万円にすぎない一方で、75歳以降は毎年平均3万4千円の負担増になります。現役世代も人生全体でみれば、負担は軽くなるどころか大幅に増えるのが実態です。

    今回の法改定で負担が減るのは、国・自治体の公費負担・年980億円、事業主の保険料負担・年300億円と試算されています。制度の持続可能性や現役世代の負担軽減を本当にはかろうとするなら、減らしてきた国庫負担を元に戻すべきです。

    請願文書にもあるように、昨年12月の県議会で日本共産党県議団から提案した、この2割負担の導入について「慎重な対応を求める」意見書が全会一致で採択され、国へ送付されています。また、兵庫県後期高齢者医療広域連合会や県内の多くの市町から連合会を通じて、要望書があげられています。

    採択を強く主張します。

    請願第58号 兵庫県が「気候非常事態宣言」することを求める件についてです。

    請願にもあるように、地球温暖化の影響で、毎年のように日本でも命がおびやかされる酷暑、豪雨や巨大台風による甚大な災害が起こる非常事態となっています。最新のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)報告書は科学的知見から「温暖化は人間によって引き起こされた」と断定し、パリ協定(日本も締約国)は、産業革命前と比べ、世界の平均気温上昇を今世紀末に1.5度に抑えることを目指しています。

    しかし、すでに約1.2度上昇(2020年)し、科学者は早ければ2030年代には1.5度上昇し生態系への影響は深刻な状況に、さらに2度上昇した場合、飢餓と水不足が深刻化し、生物の大絶滅、異常気象の常態化など、温暖化の連鎖はもはや人間の力では止められなくなると厳しく警告しており、こうした気候危機への抜本的対策は「一刻の猶予もない」というのが、世界の共通認識です。

    英・グラスコーで開かれたCOP26(国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議)は、成果文章「グラスゴー気候合意」を採択しました。世界の気温上昇を産業革命前と比べて1.5度までに抑えることを世界の共通目標に位置づけ、各国が温室効果ガスの排出削減目標を2022年末までに強化することを求めました。石炭火力は「段階的削減」と不十分ですが、重要な一歩と評価されています。日本は世界5位の温室効果ガス排出国であり恥ずかしくも世界から「化石大賞」を受賞して、内外の厳しい批判を受ける中、今、「政府は、削減目標の引き上げや石炭火力の廃止など急ぎ具体的行動に取り組んでほしい」と、若者をはじめとする大きな世論が高まっています。そのような中で、温室効果ガス国内排出第6位(18年環境省)の兵庫県の取り組みが非常に重要です。

    IPCCは、1.5℃目標達成のためには、2030年までに温室効果ガスを少なくとも2010年比で45%削減することが必要としていますが、県の2030年までの温室効果ガス削減目標は2013年比35~38%で、2010年比にすると最大でもわずか30.5%、国の2010年比42%と比べても、さらに低くなっており、県民は兵庫県の取組に、強い不安と懸念を抱いています。

    地球温暖化に対する危機感を共有し、直ちに立ち上がるということが世界の潮流になって「気候非常事態宣言」を宣言する自治体が急速に広がり、国内では100を超える自治体が決議しています。昨年11月には、衆参両院が宣言しました。県内では現在、3市が採択しています。持続可能な社会実現へ、兵庫県も「気候非常事態宣言」をし、温室効果ガス排出削減目標を引き上げ、石炭火力を廃止し再生可能エネルギーに転換するなど、抜本対策をすすめることを求める本請願の採択を求めます。

    請願第59号「全ての子どもたちへの行き届いた教育を目指し、35人以下学級の前進、教育無償化、教育条件の改善を求める件」、請願第60号「コロナ禍の中で3密を避けるためにも小学校5・6年生・中学校の35人学級を求める件」についてです。

    35人学級の全学年での実現は喫緊の課題です。

    国が、40年ぶりに学級編成基準を見直し、小学校を35人学級としたことは大きな前進であり、さらに今年6月の骨太方針には、中学校の35人学級も盛り込まれました。

    しかし、兵庫県における35人学級は小学4年生にとどまっています。

    全国25県が小・中学校全学年35人以下学級を実施する中、中学校で実施していないのは広島県、大阪府、兵庫県の3府県のみであり、兵庫県でも早急に全ての学年で35人学級が求められています。

    新たな感染力の強い変異株が広がるもと、厚労省も注意喚起しており、感染防止対策のためにも早急に20人程度の学級編成の検討が必要です。

    「30人学級を進めたい」と公約に掲げた知事は、この間、「教職員の確保や財源問題など多くの課題がある」と少人数学級に後ろ向きですが、現在、ゼロベースで行財政運営方針を見直すのであれば、少人数学級についても実現に向け検討課題にあげるべきです。

    特別支援学校には施設設置基準がないことが、過大・過密など劣悪な教育環境を作ってきました。文部科学省の2019年度調査では、県下の教室不足数は137室、そのうち県立学校は91室にものぼります。

    設置基準を求める粘り強い運動が国を動かし、国は特別支援学校の最低基準を定める設置基準を初めて制定し、今年9月都道府県へ通知しました。

    県教育委員会は、この通知を踏まえ、県立特別支援学校の第3次推進計画の中で、教室不足解消集中取り組み計画を位置づけ、阪神地域では阪神特別支援学校の校舎増築、武庫川特別支援学校、阪神北特別支援学校の新設を進めています。しかし東播磨地域での整備が求められていること。第3次推進計画では、まだ15の教室不足が解消されず、新たな推進計画策定が必要です。

    通常の小中学校の特別支援学級で学ぶ生徒は増え続け、1クラス8人の定員をさらに少人数にという要望は切実です。

    また、教育費の負担は、学費をはじめ教材、制服、部活動など大変重く、公立小学生で年平均10万2千円、公立中学校は約16万7千円、公立高校も授業料を除く負担は約26万円にもなります。家庭の経済力にかかわらず、豊かな教育環境が保障されなければなりません。

    日本の高等教育にかかる高学費は大きな社会問題です。大学生の半分が奨学金を借りざるを得ず、その多くが利子付きであり、卒業と同時に高額な借金を背負い、社会人の第一歩から生活が破綻する若者が続出する等、学費無償化は喫緊の課題です。

    昨年度から、大学生など高等教育への就学支援制度が始まったものの、特にコロナ禍、学費のみならず食べることにも事欠くほど深刻な事態が広がっており、就学支援金制度とともに返済不要の奨学金制度のさらなる拡充が求められています。

    国への制度拡充を求めることはもちろん、県として予算を確保し、お金の心配なく学べる教育環境を整備することが早急に必要であり、本請願の採択を求めます。

    請願第61号「教育費負担の公私間格差をなくし、子どもたちに行き届いた教育を求める私学助成に関する件」についてです。

    2020年4月から国の就学支援金制度が拡充し、年収590万円未満世帯まで全国平均授業料相当額が補助されることとなり、高校生等奨学給付金も対象が広がりました。それに加えて、兵庫県の授業料軽減補助制度も、年収590万~910万円未満世帯まで補助対象とするなど制度の改善が進められてきました。

    しかし、文部科学省の調査でも兵庫県の私立高校の授業料・施設設備費・入学金を合わせた学費は85万1千円と全国で3番目に高く、授業料相当額が補助されることとなった年収590万円未満世帯でも、授業料以外の納付金が(20万7千円もの施設設備費と23万円の入学金が)重い負担となっています。

    授業料実質無償化に向け、さらなる授業料軽減補助の増額が必要ですが、特に、生徒本人を含め2人以上の子どもを扶養している世帯の経済的負担は重く、「多子世帯加算」の所得制限をなくしてほしいという要望は切実です。

    この間の県行革の方針に基づき、県外私立高校通学者は、当該府県の助成内容により県内私立高校生への補助の二分の一、または四分の一補助と格差をつけていることは、学費無償化に逆行するもので一日も早く解消すべきです。

    新型コロナウイルス感染拡大の影響は私学教育にも多大な影響をもたらし、感染症対策やエアコン整備、オンライン授業実施によるICT教育の環境整備が急がれるなど、こどもたちの学習環境整備とともに、家庭の経済状況も悪化するもと、より手厚い経済的支援が求められています。

    私立学校は、建学の精神に基づき特色ある教育を行いながら、公教育の一端を担っており、教育環境の整備とともに、公私間格差をなくし、県に私立学校の学費軽減補助制度の拡充や経常費補助の増額、私立小中学校の就学支援補助を求める本請願に賛同し、採択を求めます。

    以上、議員各位のご賛同をお願いし、私の討論を終わります。

ページの先頭へ戻る