議会報告

  • 2021年10月22日
    本会議

    第355回本会議 2020年度決算反対討論 いそみ恵子

    私は、日本共産党県会議員団を代表し、上程中の決算認定議案のうち、認第1号、認第2号、認第4号~認第7号、認第10号、認第11号、認第15号ないし認第18号、認第20号ないし認第23号、計16件に反対し、以下その主な理由を述べます。

    まず、認第1号「令和2年度兵庫県一般会計歳入歳出決算の認定」についてです。

    反対の第1の理由は、消費税の10%の増税により、地方消費税収を県税収入の中心に据え、法人税率を引き下げ、減収をすすめてきたことです。

    一般会計歳入の税収等は、当初コロナの影響で大幅に引き下がるという見込みでしたが、決算額は約8010億円、過去2番目の高水準となりました。これは、2019年10月の消費税増税による増収分の平年度化によるものです。しかし消費税増税と新型コロナの影響により、家計消費は大きく落ち込み、中小企業の売上高は、コロナ前と比べ67.8%程度に減少、その結果、中小企業の休廃業・解散は2020年、全国では4万9698件と前年比14.6%増の過去最多、兵庫県でも前年比6.81%増の1428件となるなど、経済に深刻な影響を及ぼしています。

    一方、大企業は、コロナ危機のなかでも2020年度に内部留保を7兆1千億円増やしているにもかかわらず、特別法人事業譲与税などを含む地方法人2税は、前年比1兆5千億円減となっています。大企業の税負担は、さまざまな税制の優遇によって、実質負担率10%と、中小企業の20%程度よりもはるかに低くなっています。

    コロナ禍のもと、世界では、すでに62カ国で消費税を減税し、力のある大企業や富裕層、金融資産などへは課税強化の方向です。

    県税収入においても、地方消費税収をその中心に据えるのではなく、大企業や富裕層などに応分の負担をもとめ、消費税は5%に減税するよう国にもとめるべきです。

    反対の第2の理由は、コロナ禍においても、国と一体になり病床の削減など医療・社会保障を切り捨て、コロナ対応でも自己責任をおしつけてきたからです。

    県は、地域医療構想に基づき、2014年度28,747床あった急性期病床を2019年度までに5,437床削減。新型コロナウイルスの感染爆発が起こり、医療ひっ迫が深刻な状況にあった2020年度も、神戸労災病院、三菱神戸病院等の120もの急性期病床の削減を行いました。今年度は、この病床削減を消費税を財源にして行おうとしていますが、認めるわけにはいきません。

    国は当初、「検査を広げると医療崩壊が起こる」という内部文書まで配布して、検査を抑制し、兵庫県においてもその方針に沿って、昨年の冬頃まで濃厚接触者であっても症状のある人に絞るなど、徹底的に検査を抑制してきました。無自覚の感染拡大を抑えるために高齢者施設だけでなく、医療機関、学校、保育、学童保育での無症状感染者を発見するための検査を行うべきです。

    また、新型コロナウイルス感染症対策費のうち、県独自支出は、わずか0.1%で、ほとんど使われていません。一方、病院の空床補償を40億円、社会福祉施設等への慰労金や衛生資材購入支援等を70億円も不用額としています。深刻なコロナ危機のなか、病院や社会福祉施設等は、懸命にコロナ対応を行っているにもかかわらず、その対策支援は十分ではありません。不用額とするのではなく、必要な支援をさらに充実させるとともに、県独自予算も活用し、いつでも誰でも、何度でも無料でできる検査、臨時医療施設、保健所体制の充実などおこなうべきです。

    第3の反対理由は、大企業呼び込み型の経済政策を続ける一方で、県民の所得・家計を温め、中小企業、農業を支援し、地域経済を上向かせる内容になっていないことです。

    大企業が利益を挙げればその利益がやがて家計に滴り落ちるというトリクルダウンの経済政策が破綻したことはあらゆる経済指標で明らかになりました。

    それにもかかわらず県の産業立地促進条例にある設備投資補助制度は、設備投資額の3%を補助金として支出するなど上限額が設けられていない全国でもまれな大企業に有利な企業誘致制度となっています。

    2020年度も新明和工業(株)、㈱神戸製鋼所、住友化学㈱等々の大企業を中心に約11億円の設備投資補助金として支出されました。力のある大企業に補助金を支出する必要はありません。

    農業問題では、中山間地の多い兵庫県で国の進める「強い農業」のための農地の集約化・大規模化、企業の農業参入を推進する方向へ偏重しています。これでは、農村地域の衰退を招いてしまいます。国連は2007年・2008年に起きた食料価格高騰から生まれた世界食糧危機の教訓から、農業の規模拡大や自由化一辺倒の農業施策に警鐘を鳴らし、食料保障にとっても、エネルギー効率や環境保全などにおいても、小規模家族農業の方が優れていることが明らかになったとし、2030年までを「家族経営の10年」と定めました。兵庫県でも小規模農家、家族営農へも目を向け、地域で暮らせる農業への支援が求められています。

    第4の反対の理由は、過大な需要予測による不要不急の投資的事業を継続していることです。

    コロナ禍のなかで、こうのとり但馬空港の2020年度利用者数は、1万5,648人と前年度比6割減となっており、今後の需要も見通せない状況です。しかし、運航への赤字補填が2020年度1億8700万円、累積の赤字補填は、37億8000万円、空港維持管理費、空港建設費等も含めた累積総額は、265億5千万円にも上ります。コロナ禍で財政が厳しいとされる折り、このまま赤字経営のツケを県民に押し付けるのは、ゆるされません。県は、羽田直行便など新たな路線も検討していますが、過大な需要予測による拡張などを認めるわけにはいきません。コロナ禍の現実を直視し、いったん立ち止まり、廃止も含めた検討をおこない、空港にかわる活性化策等の検討をすべきです。

    「基幹道路8連携軸」として、大阪湾岸道路西伸部整備事業費をはじめ、播磨臨海地域道路計画、名神湾岸連絡線の調査費など不要不急の高速道路整備が進められています。 これまでも指摘してきましたが、「基幹道路8連携軸計画」は、その多くが東京一極集中是正を最大の目的として半世紀前からつくられている全総計画に位置付けられているものですが、一極集中は解消されないばかりか、人口減少が急速に加速し、すでに都市部でも自動車交通量が減少に転じている社会変化のもとで計画の抜本的見直しが必要です。

    コロナ前に計画された県庁舎等再整備計画は、財政的にも、コロナ禍をふまえた在り方としても、いったん中止し、一から再検討すべきです。

    第5の理由は、教員数が削減されているからです。

    国が、2020年度、40年ぶりに学級編制の標準を見直し、小学校の35人学級を段階的に実施するとし、少人数学級への期待がひろがっているなか、県としても、小学校4年で止まっている少人数学級の前進が求められています。しかし、2020年度、少子化等を理由に、教員全体では、1419人の減員、うち小学校教員495人、中学校教員385人が削減され、兵庫県の少人数学級実施も、小4までに留まったままです。県独自予算の活用も視野に、教員を増員し、知事も公約に掲げた30人学級の実施を見通し、早期に、小中学校全学年での35人以下学級を実現することを求めます。

    次に、認第2号「令和2年度兵庫県県有環境林等特別会計歳入歳出決算の認定」、認第4号「令和2年度兵庫県公共事業用地先行取得事業特別会計歳入歳出決算の認定」についてです。

    これらの議案は、県有環境林特別会計が県有環境林事業のため公共事業用地先行取得事業会計から宝塚新都市玉瀬第三用地を約77億5千万円を支出し、公共事業用地特別会計からその売却収入などを借金返済のための財源として、公債費特別会計へ繰り出したものです。また、たつの市菖蒲谷(しょうぶだに)、宝塚新都市、淡路石の寝屋等の県有環境林事業の管理費への支出、新たに起債をし、県有環境林取得に掛かった元利償還金として公債費特別会計へ約67億円、払い戻ししています。

    今回が最後の買戻しだとされる宝塚新都市用地は、1990年から2001年にかけ開発の見通しもないまま、約1200ha余を1000億円以上かけて県が取得した用地の一部です。県はゴルフ場開発など乱開発から県土を守るという理由を後付けしましが、その後何ら整備することなく、塩漬け用地として用地管理費と借入金利息ばかりが膨れ上がりました。過去の用地取得事業の失敗を県有環境林事業という曖昧な事業のもと、県民に十分な説明なく、県有環境林事業の効果の検証もしないまま、新たな借金を作り事業を続けていくことは認められません。

    次に、認第5号「令和2年度兵庫県営住宅事業特別会計歳入歳出決算の認定」についてです。

    2020年度の県営住宅事業は、建替え・集約戸数802戸に対し、竣工戸数268戸と、534戸の戸数減となっています。党県議団は、貧困・格差が広がる中、従来から低廉な家賃で住宅を供給するという県営住宅の役割がますます高まるもとでの管理戸数削減は認められないと主張し、反対してきました。しかし、県は、2021年7月、「ひょうご県営住宅整備・管理計画」を改定し、2020年4月1日時点で49,950戸の管理戸数から2025年度に48,000戸、2030年に45,000 戸に縮減するとしました。2020年度決算認定と併せて、さらなる戸数削減計画は容認できないことを表明しておきます。

    次に認第6号「令和2年度兵庫県勤労者総合福祉施設整備事業特別会計歳入歳出決算の認定」についてです。

    丹波の森公苑など運営する施設の一部で正規職員の減員があることにより反対します。正規職員を非正規に置き換える場合、職員費から管理運営費の支出になり、管理運営費も圧迫し、運営に支障をきたすことにもつながりかねません。何より正規職員の補充は、正規職員を原則にした運営を求めます。

    次に認第7号「令和2年度兵庫県庁用自動車管理特別会計歳入歳出決算の認定」についてです。

    県が一昨年8月、知事と議長の公用車を最高級車センチュリーに変更したことに県民から大きな批判の声が上がりました。2020年度決算においては、県民の声に背を向け、センチュリーが引き続き使われており、決算認定には反対します。現齋藤知事が、センチュリーの不使用を公約に掲げ、現在は、センチュリーを返却し、別の車種の選定を行っていますが、気候危機が深刻化し、二酸化炭素等の温室効果ガス削減が求められるなか、電気自動車などクリーンで、低廉な公用車にすることを重ねて要望しておきます。

    次に、認第10号「令和2年度兵庫県母子父子寡婦福祉資金特別会計歳入歳出決算の認定」についてです。

    福祉的な貸付の償還金回収を債権回収会社に委託しているものです。回収困難な事例が増えており、滞納繰越分の回収率は12.9%となっています。民間回収業者では、福祉的な対応が難しいと考えます。

    返済の意思があっても返済困難な人に対し、機械的な徴収強化ではなく、少額返済や減免措置など生活実態に見合った丁寧な対応を行うことを求めます。

    次に、認第11号「令和2年度兵庫県小規模企業者等振興資金特別会計歳入歳出決算の認定」についてです。

    2020年度時点の中小企業高度化資金貸付金の累計未償還残額は、69億3,283万3,706円です。

    本制度は、同和対策特別措置法等の認定に基づく事業計画であれば、地域改善対策高度化資金貸付として無利子での貸し付けを行うなどの特例を設けてきた事業です。これまでも指摘してきたように未償還、焦げ付きについて具体的な処分状況が明らかにされておらず、総括もされていないことなどから賛同できません。

    認第15号「令和2年度兵庫県国民健康保険事業特別会計歳入歳出決算の認定」についてです。

    2020年度は国民健康保険財政運営の都道府県化3年目でしたが、一人当たり保険料調定額の県平均は、2018年の90,453円、2019年93,295円、そして2020年度の94,680円と年々引きあがっています。

    また、医療費抑制や保険料徴収強化、一般会計からの繰り入れの減額を市町に競わせる保険者努力支援制度を導入し、加算点数が多ければ特別交付金が手厚く交付される仕組みになりました。

    2021年度からは、県下統一の保険料をめざし、市町の納付金の算定に医療費水準を反映させない改定を行い、高齢化の進展により避けられない医療費の増加を公費で支えるのではなく、県内市町全体に痛み分けとして負担を課すものとしています。これでは、ますます保険料が高くなることは明らかです。国庫負担の抜本的な増額による保険料の引き下げ、均等割の廃止など、制度の抜本的見直しこそ必要です。

    認第16号「令和2年度兵庫県病院事業会計決算の認定」についてです。

    2002年度から、病院事業に経費の節減、効率を最優先して、企業的手法を導入するための公営企業会計の全部適用が行われ、運営されています。

    「公営企業としての独自性」の名のもとに、賃金・労働条件が一般行政職と切り離され、水準の切り下げが可能な仕組みになっています。

    また、国の社会保障費削減の方針通りに、在院日数の短縮、稼働病床率引き上げが追求され、急性期で入院しても、退院・転院が急がされています。災害時などにも対応できるように分散立地が望ましいにもかかわらず、県立病院の統合再編を進めています。以上の理由で、認められません。

    認第17号「令和2年度兵庫県水道用水供給事業会計決算の認定」についてです。

    過去の過剰な水需要予測による施設整備や二部料金制などにより、高すぎる県営水道料金は、改善されていません。現在も、西宮市では、県水の供給単価平均が120.01円に対し、阪神水道供給単価は、61.93円、尼崎市は、県水供給単価平均145.74円に対し、阪神水道供給単価79.61円となっており、高い県水を市町に押し付けていることは、認められません。

    認第18号「令和2年度兵庫県工業用水道事業会計決算の認定」についてです。

    工業用水事業は、日本製鉄株式会社など、大企業に供給している揖保川第1工業用水道の料金が、1トン当たり4円30銭で、50年前の1971年から2円しか値上げされていません。工業用水道事業法でうたわれている「社会的経済的事情の変動により著しく不適当」な料金状態と言わざるを得ず、不当に安い価格に据え置いていることから認められません。

    次に、認第20号「令和2年度兵庫県地域整備事業会計決算の認定」についてです。

    2014年から会計制度の見直しにより、進度調整地以外の時価評価処理が行われましたが、進度調整地は簿価評価のままであり、時価評価を行うべきであり、プロジェクトごとの収支も明らかにされていないことから反対です。

    2020年度「淡路夢舞台」グランドニッコー淡路等の建物の貸付先である株式会社夢舞台において、新型コロナウイルス感染拡大の影響による利用者減少に伴う収益が減少し、建物賃貸料1億5142万円が入らず、地域整備事業の営業全体も8565万円の損失となっています。そもそもこうした収益目的の事業を県が行うことに疑義があります。グランドニッコー淡路など収益目的事業からの撤退も含めた検討を行うべきです。

    次に、認第21号「令和2年度兵庫県企業資産運用事業会計決算の認定」、認第22号「令和2年度兵庫県地域創生整備事業会計決算の認定」についてです。

    地域創生整備事業も企業資産運用事業にも、神戸・三宮東再整備事業が含まれており、反対です。コロナパンデミックのもとで、一極集中の街づくりの見直しが求められています。三宮一極集中の巨大開発に県予算をつぎ込む必要はなく、認められません。

    また地域創生整備事業に含まれる小野長寿の里構想は、住民、医療・福祉事業者、自治体らが検討委員会を立ち上げ、そこでの議論の上で出来上がった構想です。それにもにもかかわらず十分な議論もされないまま、構想区域の一部を産業団地として事業変更していることは問題です。

    最後に、認第23号「令和2年度兵庫県流域下水道事業会計決算の認定」についてです。

    2017年12月に、流域下水道事業会計は特別会計から企業会計に変更されました。公営企業は独立採算が原則であり、地方公営企業法の財務規定の適用がされることで、これまで行われていた一般会計からの繰入も制限されました。

    施設の維持管理に係る費用負担について市町負担が上乗せされ、2020年度は約359万円の市町負担増となりました。以上の理由から賛同できません。

    以上、議員各位のご賛同をお願いいたしまして私の討論を終わります。

ページの先頭へ戻る