議会報告

  • 2020年12月11日
    本会議

    第352回本会議 請願討論 ねりき恵子

    私は、上程中の請願のうち、請願第25号、第26号、第27号、第30号ないし第33号の7件について、不採択ではなく採択を求め以下討論します。

    はじめに、請願第25号「選択的夫婦別姓の導入へ、一日も早い民法改正を求める意見書提出の件」についてです。

    本請願は、日本政府が女性差別撤廃条約の批准国として責任を果たすためにも、ジェンダー平等を実現している世界に学び、早急に具体策に取り組んでいくことを求めています。

    その一つが、国連女性差別撤廃委員会が、繰り返し法改正を勧告している「選択的夫婦別姓の民法改正」です。政府答弁でも明らかなように、世界で夫婦同姓を法律で義務付ける国は、日本だけです。

    現在、策定中の「第5次男女共同参画基本計画」案に、多くの意見が寄せられ、パブコメでは、選択的夫婦別姓の導入に反対意見は無く、世論調査でも約7割が導入に賛成です。先の臨時国会では、橋本聖子担当大臣が「前向きに検討する」とし、菅義偉首相も「導入に責任がある」と発言されています。

    職場・地域、家庭で男女不平等の現実が未だ根強く存在し、「民法改正を」の声が益々強まっており、地方議会の選択的夫婦別姓を求める意見所採択数は、今年3月時点で4府県87市町であったものが、今年10月には7府県157市区町にのぼり倍増しています。

    昨年12月、「女性活躍の推進に向けた取り組みの一層の充実を求める意見書」を決議した兵庫県議会として、国への意見書を提出してほしいとの本請願の願意は、当然であり、本請願の採択を強く求めます。

    請願第26号「日本政府に核兵器禁止条約に署名・批准を求める意見書提出の件」についてです。

    2017年7月7日に国連で採択された核兵器禁止条約は、今年10月24日に発効に必要な50ヶ国の批准を達成し、来年1月22日に、いよいよ効力を発揮することになりました。

    条約は、前文で「ヒバクシャの許容しがたい苦しみと被害に留意」し、「核兵器のいかなる使用も人道の原則に反する」とし、核兵器の開発、実験、威嚇などあらゆる活動を全面的に禁止しています。核兵器を違法とする初の国際条約ができたことにより、自国の「安全保障」を理由に、核兵器を持ち続けることは、正当化できなくなりました。

    「人類と核兵器は、共存できない」と訴えてきた広島・長崎の被爆者とともに「核兵器のない世界」をめざす、日本と世界の市民社会、国連や各国政府の共同の力で作った条約です。

    しかしながら日本政府は、「保有国と非保有国を分断するもの」と核兵器禁止条約に反対しつづけています。「唯一の戦争被爆国として核兵器廃絶をリードする」といいながら、本条約に背を向け続ける日本政府の姿勢に、国際社会からも厳しい批判がむけられています。

    世論調査では、約7割の国民が「日本は、核兵器禁止条約に参加すべき」としており、500近い地方議会が政府に核兵器禁止条約への参加を求める意見書を採択しています。兵庫県議会も2017年に「核兵器の廃絶と世界の平和を希求する兵庫県宣言」を全会一致で採択、知事と県内の全首長が「ヒバクシャ国際署名」にサインされており、「日本政府に核兵器禁止条約の署名・批准を求める意見書の提出」を求める本請願に賛同し、採択を強く求めます。

    請願第27号「米軍基地負担軽減と日米地位協定の見直しを求める意見書提出の件」についてです。

    全国知事会は、2018年7月、「米軍基地負担に関する提言」を全会一致で採択し、政府に要請しました。この「提言」は、米軍機の低空飛行訓練等についての実態調査、訓練ルートや訓練時期の事前情報の提供、米軍への国内法の適用など、日米地位協定の抜本的見直し、基地の整理・縮小・返還の促進について国の努力を求める画期的な内容です。

    同時に、本県でも、米軍輸送機オスプレイが伊丹空港に緊急着陸する事故が起こり、同空港周辺市で、事故情報が伝えられなかったことへ抗議の声が集まりました。その後も三田市、加古川市でオスプレイの飛行が目撃されています。また、南但馬地域を中心に米軍機による低空飛行訓練が継続して行われ、住民の不安の声が寄せられています。

    現在の日米地位協定では、米軍が事故・事件を起こしても日本側が立ち入り調査をすることや裁判をすることができず、住民の命が脅かされている実態を見過ごすことはできません。全国知事会の「米軍基地負担に関する提言」について、国として速やかに検討し、実効ある措置をとることを求める本請願の採択を強く求めます。

    請願第30号「コロナ禍における福祉職場に関する件」についてです。

    新型コロナ感染拡大は、福祉職場の課題を改めて浮き彫りにしました。

    例えば、保育士の配置基準は、日本では5歳児30人に保育士1人に対し、フランスは15人に1人。保育所の施設基準も、日本では子ども1人当たり1.98㎡に対し、フランスでは5.5㎡と、いずれも日本は半分以下です。先進国で最も低い職員配置と施設基準がこれまでも大きな課題であり、安全・安心な保育のために基準の引き上げ・改善が繰り返し求められてきました。

    今般のコロナ禍で、室内の消毒に追われるなど、ストレスを受けている子どもたちへの目配りが十分にできないこと。また、狭い保育室では、3密が避けられないこと。「遊ぶ、食べる、寝る」ことを同じ保育室で行われなければならないことが、感染対策の点でも、改めて問題になっています。

    介護・福祉施設、学童保育についても、職員配置基準、施設基準を引き上げることは急務です。そのためのガイドラインを県が策定して市町に示し、実効性を持たすために、施設整備、職員配置のための独自の助成を行うことが必要です。

    また、新型コロナウイルスは無症状でも感染力があることが特徴で、コロナの市中感染が広がる中、これら福祉職場では、自分が感染源となってしまうのではないかという非常な緊張状態の中で仕事を続けており、そのストレスは大変なものです。安心して仕事をするためPCR検査の実施を求めることは当然です。

    無症状で感染力のある人を見つけて、感染拡大を未然に防ぐ防疫の観点からも、福祉職場におけるスクリーニング、社会的検査は必要かつ重要な感染防止策です。

    また、保育や学童保育の職員は、国の慰労金の対象とはなりませんでしたが、介護や障害者施設と同様に、感染リスクを感じながら、感染対策に最大限留意し、その責務を果たすことを求められたことからも、慰労金支給の対象にすべきです。

    よって、本請願の趣旨に賛同し採択を求めます。

    請願第31号「教育費負担の公私間格差をなくし、子どもたちに行き届いた教育を求める私学助成」の件についてです。

    2020年4月から国の就学支援金制度が拡充し、年収590万円未満世帯まで全国平均授業料相当額が補助されることとなり、高校生等奨学給付金も対象が広がりました。それに加えて、兵庫県の授業料軽減補助制度も、年収590万~910万円未満世帯まで補助対象とするなど制度の改善が進められてきています。

    しかし、文部科学省の調査でも兵庫県の私立高校の授業料・施設設備費・入学金を合わせた学費は85万1千円と全国で3番目に高く、授業料相当額が補助されることとなった年収590万円未満世帯でも、授業料以外の納付金が(20万7千円もの施設設備費と23万円の入学金が)重い負担となっています。

    また、この間の県行革の方針に基づき、県外私立高校通学者は、当該府県の助成内容により県内私立高校生への補助の二分の一、または四分の一補助と格差をつけていることは、学費無償化に逆行するもので一日も早く解消すべきです。

    新型コロナウイルス感染拡大の影響は私学教育にも多大な影響をもたらし、感染症対策やエアコン整備、オンライン授業実施によるICT教育の環境整備が急がれるなど、こどもたちの学習環境整備とともに、家庭の経済状況も悪化するもと、より手厚い経済的支援が求められています。

    私立学校は、建学の精神に基づき特色ある教育を行いながら、公教育の一端を担っており、教育環境の整備とともに、公私間格差をなくし、県に私立学校の学費軽減補助制度の拡充や経常費補助の増額、私立小中学校の就学支援補助を求める本請願に賛同し、採択を求めます。

    請願第32号「すべてのこどもたちへのゆきとどいた教育をめざし、35人以下学級の前進、教育の無償化、教育条件の改善を求める」件、請願第33号「コロナ禍の中で3密を避けるためにも、小学校5年生・6年生・中学校の35人学級実現を求める」件についてです。

    兵庫県における35人学級は、小学4年生までにとどまっており、すべての学年での少人数学級の実現が求められています。

    新型コロナウイルス感染拡大による長期休業後の分散登校は、20人程度の学級となり、感染拡大の防止の点からはもちろん、子どもたちへのケアと学びの観点からも、少人数学級の効果が発揮されました。

    今もなお、新型コロナウイルス感染拡大が止まらず、身体的距離の確保と、こどもたち一人ひとりの特性に応じたきめ細かな対応ができる少人数学級を求める声は一層高まっています。

    国においても、萩生田光一文部科学相が、新型コロナウイルス対策やきめ細かな教育を実現するためとして「30人学級を目指すべきだと考えている」と発言、来年度予算編成で必要な経費を要求するなど、少人数学級実現へと動き始めています。

    国の学級編成基準の見直しと教職員定数改善による少人数学級の実現が一日も早く求められていますが、コロナ禍、児童生徒の健康と学習環境を整えることは待ったなしの課題です。国の動向を待つことなく、兵庫県として35人学級を小学5・6年生、中学でも実施すべきです。特に中学1年生で少人数学級を実施していないのは、全国的に見ても兵庫・大阪・広島・熊本の4府県のみであり、早急な改善が必要です。

    特別支援学校の過大・過密問題も深刻です。

    特別支援学校には施設設置基準がないことが、劣悪な教育環境の大きな要因ですが、今年になって文部科学省は、特別支援学校の施設設置基準を検討すると表明しました。兵庫県としても、特別支援学校の新・増設をはじめ、学校施設のさらなる改善に取り組むことが求められます。

    通常の小中学校の特別支援学級で学ぶ児童生徒は増え続け、定員が1クラス8人では丁寧な関りが持てず、さらに少人数にという要望は切実です。

    また、教育費の負担は、学費をはじめ教材、制服、部活動など大変重く、公立小学生で年平均10万2千円、公立中学生は約16万7千円です。家庭の経済力にかかわらず豊かな教育環境が保障されなければなりません。

    今年度から高等教育の就学支援制度がはじまったことは一歩前進ですが、教育の機会均等、2012年に高等教育の無償化を求める国連人権A規約を承認したことからも、教育費の負担軽減、学費の無償化を具体化すべきです。国への制度拡充を求めるとともに、県として予算を確保し、お金の心配なく学べる教育環境を整備することは喫緊の課題であり、本請願の採択を強く求めます。

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