議会報告

  • 2018年10月10日
    予算・決算特別委員会

    2017年度決算特別委員会 財政状況 入江次郎

    アベノミクスでは県民の暮らしはよくならない

    ■入江次郎■ 共産党の入江である。よろしくお願いする。

    早速質問に入る。

    決算、歳入の説明の中で、個人県民税は、株価の上昇、企業業績を反映した株式等譲渡割、所得割や配当割の増などで、県税等は、前年度比でプラス195億円、102.5%となっている。

    株式等譲渡所得割は、前年度比で219.0%、安倍政権発足時2012年度比で1,063%、配当割は、前年度比135.8%、2012年度比で239%と大幅にアップしており、アベノミクスにより、大企業の経常利益は改善し、株式投資などに反映している。

    しかし例えば、厚労省が行った2017年度国民生活基礎調査によると、いまだに生活が苦しいという世帯が全体の55.8%、子育て世代では58.7%となっている。

    そこで、お伺いするが、確かにアベノミクスの影響で、大企業や高所得層の状況は改善しているが、県民の生活の実感には反映されているとはいえないと思うが、今の経済状況について、県として、どのような認識をお持ちなのか、お答えいただきたい。

    ■産業政策課長(計倉浩寿)■ 現在の企業の経営状況ということだけれども、ご質問の趣旨を踏まえて、主に中小企業の経営状況ということでお答えさせていただく。

    中小企業の業況、経営状況を見ると、直近の日銀短観では、業況判断のDIは、これは大規模、中堅、中小含めた全規模での数値であるが、前期の13から9に低下しておる中、中小企業は5から8と改善が見られている。

    また、経営状況については、売上高の伸びで見ると、30年度の通期見通し、これが全規模で2.0%、中小企業は0.1%と、やや低くなっているけれども、経常利益で見ると、全規模が△6.3%のところ、中小企業は7.1%と大きく逆転をしている。特に今年度の上期の中小企業の経営改善が顕著となっている。このことは、本県経済が平成29年度中に緩やかな回復から緩やかな拡大へと改善のテンポを進めた中にあって、先行していた大企業の経営改善が今年度に入り中小企業にも及んできているものと考えている。

    ■入江次郎■ 数字はいろいろとあると思う。今言われたように、緩やかな景気拡大だと。大企業から中小企業にも波及しつつあると。そういう答弁だったと思う。例えば個人消費について、兵庫の統計9月号出されているけども、これに掲載されている神戸市の2人以上の勤労者世帯の家計消費支出は、2012年度比は月平均30万9,199円に対して、2017年度は24万5,672円となっており、2012年度比で比較すると、79.4%にまで家計消費が落ち込んでいる。また、1人月間給与総額は、2017年度比で29万8,025円となっており、2012年度比で99.4%にとどまっている。株式譲渡所得割が増えるもとでも家計には景気回復が全く反映されていない。県民の生活は依然厳しい状況といえる。

    さらに、5月2日の神戸新聞の調査によると、企業倒産は、2017年度は前年度比て7.5%増の458件で、7年ぶりの増加となったと報じた。業種別では、個人消費の伸び悩みが響いた小売業、サービス業で、全体の5割を占めたとされている。

    兵庫県経済を立て直すためには、事業所数の99%、常傭雇用従事者数の約8割を占める中小企業の支援を強めることが求められている。県として、中小企業への融資のためには予算を積んでいるが、十分に活用がされていない。県民の賃金アップ、個人消費拡大にもつながる中小企業の経営安定のための直接的な支援が必要と考えるが、県としての対策をお聞かせいただきたい。

    ■産業政策課長(計倉浩寿)■ まず、消費動向、賃金についてのご指摘があった。どの年度をとるかによって、ご指摘のような数値も出てこようかと思っているけれども、最近の傾向として見ておると、消費動向についても、賃金についてもおおむね前年を上回って推移をしていて、また本県において、中小企業に対するヒアリング調査等も行っている。今春に賃上げをしたという回答も多数に上っているので、消費、所得の状況は着実に改善をしていて、県内景気が緩やかに拡大している一つの判断材料といたしておるところである。

    また、お尋ねの中小企業支援対策についてだが、基本的には、議会で議決をいただいた中小企業振興条例を踏まえて、県内企業の大層を占める中小企業の経営改善、経営安定を基本として取り組んでいるところである。

    ご指摘で、制度融資は活用されないということもあったけれども、これは長期的に見ると、リーマン後の安定資金の活用、それの返済ということが結構数字に大きく表れてきているので、そういったところもあろうかなと思っている。

    具体的な今後の取り組みとしては、先ほど申し上げた方針のもとに、一つには商工会とか商工会議所に経営指導員等を配置をして、小規模企業者の身近なところで経営改善をするほか、産業活性化センターをはじめとする県内のさまざまな支援機関がネットワークを構築して、経営支援に取り組んでいるし、今後とも取り組んでいく。

    このような体制のもとで、施策としては、経営革新計画の策定、あるいは実施の支援であるとか異業種交流、あるいは新事業展開等を促進する施策を進めて、中小企業の新製品開発、あるいは販路開拓などを通じた経営力の強化に努めてまいる。

    先ほどの制度融資についても、中小企業の事業展開ということとあわせて、経営安定の両面から金融の円滑化を図っているし、また工業技術センター等を中心に、産学官連携の技術支援にも取り組んでいるところである。

    さらに、特に時代環境の変化とともに、特に厳しい環境におかれている商店街、あるいは地場産業といったところに対しては、これらの施策に加えて、業種団体とも連携して、その活性化やブランド力強化等に向けた支援を行ってまいる所存である。

    ■入江次郎■ いろいろおっしゃられるけれども、中小企業振興条例ができて、以前からもあったけれども、中小企業の貸付金、あれが毎年3,000億から3,500億程度積まれているけれども、その貸付の実績は半分ぐらいにいつも止まってしまってる。中小企業の予算の中でも、あそこが一番大きいけれども、なかなか条件に合わないとか、お金貸してもらえないとか、そういうこともあるんで、直接的な支援をもっと温めていただくようにお願いしたいと思う。

    消費税ではない別の道で社会保障の充実を

    ■入江次郎■ 次に、安倍政権は、骨太方針の2018年で、来年10月からの消費税10%増税を明記しており、既定路線として増税を進めようとしている。しかし県民の消費低迷、中小企業の経営悪化は消費税増税によるところが大きいのではないか。実際に県内の中小業者からは、業者は赤字でも価格に消費税を転嫁できず、身銭を切って消費税を納めているのが現実で、まさに営業破壊税だ等々懸念の声が今広がっている。

    共同通信の世論調査では、昨年10月の消費税10%への引き上げには反対が54.1%で、賛成を大きく上回っている。また、金融経済懇談会でも、家計消費は依然として脆弱性が残っている。こうした状況が続く中では、税率引き上げの影響を過小評価することはできないとの声も出されている。これ以上の景気悪化を進める消費税10%増税は中止し、財源は空前の内部留保を増やしている大企業や富裕層から応分の負担を求める方向に転換すべきだと国に強く要望すべきだと考えるが、ご意見をお聞かせいただきたい。

    ■税務課長(有田一成)■ 消費税の引き上げだが、今後とも高齢化が進み、社会保障施策の経費の増嵩が見込まれる中、社会保障の安定財源の確保等図るために行われるものと、このようにされている。

    地方公共団体は、これまで国を上回る行革努力を重ねることによって、社会保障施策の経費の増嵩に対応してきたが、地方財政全体としては大幅な財源不足は常態化をしていて、単に徴収の強化や歳出の切り詰めだけでは抜本的な解決は困難な状況となっている。したがって、財政の健全化と社会保障の安定財源の確保を同時に達成することを目標とした消費税率の引き上げは不可欠なものと、このように考えている。

    また、消費税率の引き上げに当たっては、酒類及び外食を除く飲食料品と定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞について、軽減税率制度を実施するということとされていて、国民生活に一定配慮されたものと認識をしている。

    なお、消費税率の引き上げの際には、景気の動向等を見据えた判断がなされることから、個人消費のてこ入れや中小企業の競争力強化、観光産業や農林水産業の振興等、景気の底上げにつながる対策を継続的に実施するよう、国に求めているところである。

    ■入江次郎■ 社会保障の安定財源確保のために必要だというご答弁だったと思う。ただ、消費税は、これまで我々何回も言ってきたけども、低所得者ほど負担が重い税金である。低所得者から税金をとって、それを社会保障に充てるという、最もふさわしくない消費税は財源だと思っているので、これは根本的な財源対策を国に要望していっていただきたいと思う。

    次に、社会保障費と地方消費税についてお尋ねする。

    決算書によると、今年度の社会保障関係費決算額は3,012億円、前年度比プラス121億円、104.2%となっており、地方消費税増収額のうち社会保障の充実、安定化分として385億円、前年比101.5%となっている。一方、県単独福祉医療費は約103億円、前年度比で99%と減額されている。

    そこで、お伺いするが、2017年度は、老人医療費助成事業が廃止され、高齢期移行助成事業に制度改悪されており、そうした影響もあるだろうが、当局は、社会保障費について、国制度に基づく補助事業の増嵩が単独事業を圧迫しているとしているが、このことについて、もう少し詳しく説明を求める。

    ■財政課長(江口友之)■ 社会保障関係費の状況だけれども、ただいまご指摘のあった点については、もう少し長いスパンの話だと思うので、そちらのお話をさせていただきたいと思う。

    社会保障関係費については、29年度決算で今お話あったように3,012億円、これは20年度と比べると1,154億円の増加となっている。特に国制度に基づく補助事業が少子高齢化の進展に伴う自然増などによって大幅に増加をしているという状況である。加えて平成20年度以降、地方一般財源総額については、ほぼ同額に据え置かれているということを踏まえると、この社会保障関係費の増嵩が地方単独事業含めた本県の全体の財政運営を圧迫しているという状況である。

    なお、平成29年度決算において、単独事業の社会保障関係費については135億円ということで、平成20年度と比べると22億円の減となっているけれども、これは補助事業の増嵩に伴って削減したということではなく、時代の変化への的確な対応であるとか、受益と負担の適正化などの行革の見直しの視点に基づいて、施策の見直しを行った結果である。今後とも社会保障関係費については、国の制度改正、また、本県の事情等踏まえながら、適切に事業推進してまいる。

    ■入江次郎■ 要するに、平成20年度は社会保障費が1,154億円だと。ただ、この29年度は3,012億円まで社会保障費が自然増として伸びてくると。これは国の補助事業だから、その補助事業に対応するために県の財政を充てていると。だから財政を充てているから、県の単独分の社会保障費を削らざるを得ないと、そういう状況になっているというのが今の僕の理解である。そうであるならば、本末転倒と言わざるを得ない。税と社会保障一体改革のメニューも含めた国の社会保障補助事業の増によって、それに伴い、県財政が圧迫され、県民のニーズに応える単独事業費が制限されている。今後の財政状況によっては、さらなる制度改悪によって県単独社会保障事業をさらに狭めるという可能性も出てくるのではないか。

    ある母子家庭のお母さんは、かつての制度改悪で、母子家庭等医療費給付事業が受けられなくなり、これまで受けていた診療が月5万円もかかるようになって、必要な医療が受けられなくなっているという。国に対して社会保障費の増額を求めるとともに、県単独の助成事業を拡充すべきだと考えるが、ご答弁を求める。

    ■財政課長(江口友之)■ 先ほど申し上げたのは、社会保障関係費の自然増等によって、我が県の一般財源全体としての圧迫を受けているということであって、しかも、それによって、単独事業を削ったというのではないので、単独事業については必要な見直しを行った結果として、この額になったということであるので、その点はご理解をいただきたいと思う。

    その上で、今後の社会保障の事業費については、一つには、先ほど来お話あった消費税率の10%への確実な引き上げ、そしてまた、地方一般財源の総額の確保ということで、必要な社会保障関係費が確保されるように、今後とも努力をしてまいりたいと考えている。

    ■入江次郎■ そういうことであれば、県単独の社会保障事業の拡充を改めて求めたいと思う。

    もう一つお尋ねするが、厚生労働省発表資料によると、兵庫県は、今年度保育の待機児童数が1,988人となっており、増員数は416人となり、47都道府県でワースト1位となっている。2017年度も前年度比522人の増で、1,572人となった。この対策が求められていると思われるが、2017年度の保育施設の整備数と定員の増加数、施設整備に係る財源についてお答えいただきたい。

    ■こども政策課長(生安 衛)■ 子育て支援策についてご答弁申し上げる。

    保育所などの整備については、国が市町に直接交付する保育所等整備交付金を活用して、平成29年度は53施設1,580名の整備を行った。ただし、国への交付申請の関係で、早期に整備が必要などの場合には、国の財源をもとに県が平成20年度に設置した安心こども基金を活用して、12施設161名分の整備を行ったところである。加えて、企業の子ども・子育て支援拠出金を主財源とする企業主導型保育事業において、98施設1,932名分の整備が行われたほか、既存施設への受け入れ定員増などによって、合計4,106名の定員を拡大して、10万5,764名分の保育定員を確保したところである。

    ■入江次郎■ いろいろ努力はしていただいているが、それでも待機児童の解消になかなかつながっていないということだと思う。2018年度は、待機児童の増員分が全国でワースト1位になっていることを考えると、県としてもさらなる対策が求められているのではないか。そのための予算を確保するには、国のメニューに基づいて充てられている消費税は、低所得者ほど負担が重く、社会保障費に充てる目的財源としては最もふさわしくない。さらに消費税の増税では、景気の本格的回復は望めず、ひいては十分な財源を確保することができないと私たち考えている。社会保障の充実を消費税に頼る財政構造の転換、応能負担の原則での財源確保を国に求めて、県としても真に必要な社会保障の充実を図るよう求めるが、ご答弁、ご意見お聞かせいただきたい。

    ■財政課長(江口友之)■ 繰り返しの答弁になって恐縮だけれども、今後の社会保障関係費の自然増が見込まれる中で、地方財源の確保を図るということは大変重要だと思っているので、これについては、軽減税率等の必要な措置を講じた上での、あるいは景気対策を講じた上での消費税率の10%への確実な引き上げとともに、財政需要に見合った一般財源総額の確保ということに向けて、関係団体とも連携をしながら、引き続き国に対して必要な働きかけを行ってまいりたいと考えている。

    人員削減ではなく適正な人員配置を

    ■入江次郎■ それでは最後に人件費についてお伺いする。

    決算書では2017年度人件費決算は4,749億円で、前年度比88.2%、教職員給与負担事務の神戸市への移譲などが減額の主な理由となっているが、この中に人員削減も含まれている。2017年度に一般行政職員の削減数、土木、港湾管理事務所職員の削減数をお答えいただきたい。

    ■人事課長(和泉秀樹)■ 職員削減数についてお尋ねあった。平成29年度から30年度にかけて、一般行政部門における削減数は133人である。また、土木事務所及び港湾管理事務所の削減数は21人となっている。

    ■入江次郎■ 当局は、この11年間で人員削減を進めてきており、2018年度中には、一般行政職員の3割カットも達成する見込みである。そして土木、港湾管理事務所職員は、2017年度は前年度比で、先ほど答弁あったマイナス21人で939人となり、行革プランが始まった2008年よりも315人減の大幅な削減となっている。2009年には、台風9号による佐用町での水害が起こり、21人が犠牲になった。いまだに1人の行方不明者を出すという痛ましい自然災害が起こっている。この前年に22ある土木事務所を13ヵ所に統廃合し、佐用土木事務所も統廃合されていた。日本共産党県議団は、佐用土木事務所の統廃合によって、県の初動がおくれたことも被害を拡大した要因の一つとして、土木事務所の統廃合を見直し、人員削減をすべきではないと主張してきた。

    昨今、地球温暖化の影響による異常気象で、大規模な台風や大雨、大雪などによる被害が発生し、その対応が迫られている。自然災害が多発する中で、現在の人員で十分な対応ができると認識されているのかどうか、お聞かせいただきたい。

    ■県土整備部総務課長(前田正志)■ 土木事務所の組織、人員については、これまでも単に定員を削減するというのではなくて、新たな行政課題に対応しながら、業務の効率化やアウトソーシングの活用を図るとともに、事業量を勘案した適正な人員配置に努めてきたところである。

    昨今の頻発する豪雨等についても、災害を未然に防ぐため、正確な情報収集と伝達、市町への助言など、水防活動を的確に実施するために、気象状況や水位等に応じて必要な体制を確保しているところである。

    災害が発生した場合については、その被害状況に応じて、災害復興室など新たな組織の設置及び専任職員の配置をしている。また、緊急的な応援職員の派遣等の人員配置といった対策を講じているところである。ということで、これまでの実績としては、委員のほうからもお話があったけれども、平成21年の台風9号では、光都土木事務所に河川復興室を設置した。次に、平成26年の8月の豪雨災害では丹波土木事務所に復興事業室を設置するなど体制の強化を図ってきたところである。

    今年につきましては、大変災害が多い年となっているけれども、本年7月の豪雨、あるいは台風21号においては、特に被害の大きい地域を所管する土木事務所において、応援職員を派遣した。また、新たに非正規職員の確保に努めるなど機動的に対応しているところである。今後も組織、人員体制はもとより、効率的な業務の進め方や職員の対応力向上などを図りながら、頻発する自然災害に的確に対応してまいりたいと考えている。

    ■入江次郎■ 対応はできるとの認識だったけれども、土木事務所では、統廃合によって現場が遠くなり、災害の把握、対応、そしてその後の復旧についても迅速で丁寧な対応がされていないとの指摘も地元の住民からは聞こえている。今回の災害対応でも人員が少なくて十分な対応ができていないと、県職員自身からも悲鳴の声が寄せられている。県民の福祉向上という県行政の本来の役割を発揮させ、県民の命と安全を守り、頻発する災害に対応するため、必要なところに必要な人員を確保するための予算増と人員増を求めて、私の質問を終わる。ありがとうございます。

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