議会報告

  • 2020年10月01日
    本会議

    第351回本会議 一般質問 ねりき恵子

    「安倍政治の継承」を掲げる菅新内閣が発足しました。菅首相が強調するのは「自己責任」です。

    コロナ禍のもと、競争原理と自己責任を押し付ける「新自由主義」では、医療がひっ迫し、保健所が疲弊し、倒産や廃業が相次ぎ、非正規職員が雇止めにされるなど社会が立ち行かないことが浮き彫りになりました。

    いま求められているのは、経済効率優先の政策の見直しです。県民のみなさんが、安心して医療を受けられ、くらしと雇用・営業を支え、子どもたちの学びが保障できる県政への転換を求め、以下質問します。

    1.新型コロナウイルス感染症の検査拡充について

    はじめに、新型コロナウイルス感染症の検査拡充についてです。

    新型コロナウイルス感染症の感染拡大が止まりません。

    国立感染症研究所病原体ゲノム解析研究センターが8月5日に発表した緊急レポートでは、「5~6月の長期間、保健所が探知しづらい軽症者・無症状感染者が感染リンクを静かにつないで」感染が拡大した可能性を指摘しています。

    兵庫県内では、緊急事態宣言が解除された5月21日から、約1ヶ月、陽性者数0が続きましたが、6月19日に再び陽性者が確認されてから6月7人、7月514人、8月1,055人と、緊急事態宣言前より速いスピードで感染者数が増加しました。

    4月以来、わが党議員団は検査体制の拡充で検査能力を引き上げること、そして陽性率が少なくとも5%を下回るよう検査件数を増やすことを、繰り返し求めてきました。その結果、一日当たりの検査能力は、4月の263件から、9月現在1820件まで引きあがりました。

    しかし、検査対象を、依然として発熱や咳など強い症状が出ている人や、感染者の濃厚接触者に限定していた結果、軽症や無症状の感染者を保護しきれず感染を拡大させたのではないでしょうか。

    新型コロナウイルス感染症は、感染力のある無症状感染者がいることが特徴であり、WHOは、感染者の4割は無症状感染者から感染していると報告しています。PCRなど検査を大規模に行うことは、防疫目的で、無症状の感染者を見つけ出すことにほかなりません。

    知事は、先の本会議で検査対象を広げることについて、「膨大な検査を実施しても、感染拡大防止に対する効果うすい」などと答弁されました。「PCR検査は偽陽性や偽陰性があるから、検査を拡げれば間違いが増えて逆に感染拡大をもたらし、医療をひっ迫させる」など検査を抑制する議論がありますが、PCR検査は、感染させる可能性を判断するために、微量の遺伝子を増幅させ、ウイルスが検体の中にいるかいないかの判定についてはほぼ100%近い精度を持っています。

    偽陰性や偽陽性の発生を理由に検査を抑制し、肝心の感染力のある人を見逃して市中感染を広げていては、本末転倒です。

    また、医療機関、介護施設などのクラスター発生防止は、医療体制のひっ迫を避けるためにも急務です。

    厚生労働省は9月15日、感染者が多数発生したり、クラスターが発生している地域では、医療機関や高齢者施設等の職員、入院・入所者全員を対象に、一斉にかつ定期的に検査をするよう、検査体制の拡充を求める事務連絡を都道府県に出しました。この方針を早急に兵庫県として具体化・実施する必要があります。

    今議会では、宝塚市をはじめPCR検査センターを12か所へ増やすことや、「発熱等診療・検査医療機関(仮称)」を250か所整備し、インフルエンザとの同時流行に向け、発熱など症状が出ている人の相談・検査体制の拡充が提案されていますが、医療機関、介護施設などでの集団感染を未然に防止するための検査体制の確立が必要です。

    検査基準をあらため、陽性者が一人でも確認された場合、濃厚接触者にとどまらず、その医療機関、介護・障害福祉施設、学校、事業所など施設の職員、入院・入所者、児童生徒など全員に検査を実施すること。また、直接的でなく間接的な関わりのある方も検査できるようにすること。

    さらに、感染者がいなくても医療機関、介護施設などでの集団感染を未然に防止するため、職員・入院・入所者など全関係者を定期的にPCRなど検査を行うことを求めます。

    井戸県知事 答弁 新型コロナウイルス感染症の拡大防止には、検査体制の強化が必要であり、県では処理能力の拡充・対象者の拡大を推進してきた。

    処理能力については、地方衛生研究所の体制強化、医療機関等への検査機器設置支援などにより、現時点でPCR検査1日1,820件の検査能力を確保しているが、さらに1日2,500件を目指す。

    対象者についても当初は、国の「相談・受診の目安」である熱や咳の症状等の状況を踏まえ、重症化リスクなどを考慮し、実施していたが、国基準の見直しや県民ニーズも踏まえ、無症状の濃厚接触者や希望する妊婦にも検査を行うなど拡充してきた。

    さらに、医療機関や介護施設等において陽性者や濃厚接触者が確認され、感染拡大やクラスターの発生が懸念される場合には、濃厚接触者でなくとも幅広く関係者を検査対象とするなど、感染拡大防止に必要なPCR検査を弾力的に実施している。

    検査体制の充実は、本県のコロナ対策の基盤である。そのため、①「地域外来・検査センター」の増設、②約250カ所の「発熱等診療・検査医療機関(仮称)」の指定、③市町における高齢者等への検査助成事業の活用促進の取り組みも推進していく。

    なお感染者がいなくても医療機関等で全関係者に対し定期的にPCR検査を行政検査として行うことについては、費用対効果の面に課題があり、「膨大な検査を実施しても陽性者は僅かで、感染拡大防止に対する効果も低い。」と、国分科会の指摘もあり、慎重に検討すべきと考える。

    今後も、検査体制の拡充を図るとともに、感染拡大防止に必要と判断される場合には、幅広く検査を実施していく。

    再質問① 医療機関や介護施設等の定期的な検査については、費用対効果の点から慎重に検討していきたいとの答弁であったが、施設が独自に定期的な検査を始めている所もあるのではないかと思う。東京都は定期的な検査に対し、都が全額支援するという方針を示している。県としても、これからの感染拡大を防いでいくため、定期的な検査を行う所に対してもしっかりと支援していくべきだと思うがどうか。

    井戸県知事 再答弁 対象をどこまで拡げるのかという話になるが、いくらでも拡げて検査するというのは、もちろん、対応としてはありうると思うが、あまりにも費用がかかるのと効果が薄いということを専門家も言っているので、そのような状況を十分見定めながら、慎重に検討していきたいということを申し上げた。

    2.健康福祉事務所(保健所)体制の拡充・強化について

    次に、健康福祉事務所(保健所)体制の拡充・強化についてです。

    新型コロナ感染症対策で保健所は、その最前線で業務を行い、感染ピーク時には本来業務を全てストップさせ、感染症の担当でない保健師や事務職員まで全職員がコロナ対応に集中し、他部署からの応援も受けて取り組まざるを得ない状況でした。保健所も、保健師も足りないのが実態です。

    兵庫県の保健所は、1989年に県内41か所から2020年17ヵ所へと半減。そのうち県所管の26か所も県行革で統廃合を進め、現在12カ所と半数以下に削減されてしまいました。

    保健師の数も、2000年の184人から2020年4月現在116人へと4割近くも減らされてきました。人口10万人あたりの保健師数をみると全国平均41.9人に対し、兵庫県は32.1人、全国ワースト5位という低さです。

    2009年、新型インフルエンザの発生時の対応を検証した「兵庫県新型インフルエンザ対策検証報告書」には、「患者に対する疫学調査や病院との調整、濃厚接触者調査等に支障をきたした」「平常時からの疾病対策体制の充実強化が求められる」と指摘されていたにも関わらず、この10年間保健師業務は増加したのに、保健師は減らされ続けてきました。

    今回、新型コロナ感染症の拡大で保健師等の増員を迫られる事態となり、補正予算も組まれましたが、地元の宝塚健康福祉事務所では、保健師1人、看護師2人、事務職2人の合計5人が配置され、8月初旬の第2波の時、「感染疑いの対象者すべてに、検体採取から県健康科学研究所への搬送まで1日で対応できたことが感染を抑えることにつながった。マンパワーがどれだけ重要か実感した。」と同時に、増員されたのは臨時職員で、「今後もこの体制を維持できるのか不安だ。」というのが現場の声です。専門性を発揮するためにも身分の不安定な臨時ではなく、正規職員での継続した体制強化こそ求められています。

    今年7月全国保健所長会は、「保健所行政施策及び予算に関する要望書」を提出、全国知事会も保健所体制強化について国の支援を求める報告書をまとめるなど、保健所の体制強化は待ったなしの課題です。

    それなのに県は、芦屋健康福祉事務所を、宝塚健康福祉事務所の分室とする機能縮小を決定していますが、新型コロナ感染症対策の強化、とりわけ保健所の体制強化が求められているときに社会の要請に逆行するものです。

    先の6月議会で県当局は「感染症対策、難病、精神保健などの業務を宝塚健康福祉事務所に集約するか芦屋分室で実施するか検討する」と答弁されましたが、そもそも分室化をやめて存続し、集約化ではなく感染症対策などさらに強化するのが当然です。

    芦屋市議会では、「保健所の統合をやめ、芦屋保健所の存続・拡充を求める」請願が全会一致で採択され、意見書が県へ提出されました。切実な県民の願いにこたえるべきです。

    新型コロナ感染症対策のための疫学調査を進め、地域の特性を把握し、県民を感染症から守り健康な生活を送ることができるよう、専門性を持った保健師を正規職員として増員するなど保健所体制の強化を図ること。

    また、芦屋健康福祉事務所の分室化をやめるとともに、県行革で統廃合してきた保健所の増設を求めます。

    答弁 県では、県内で陽性患者が発生して以降、疫学調査など専門性の高い業務に対応するため各健康福祉事務所へ、①本庁や地方機関から保健師、看護師などを派遣するとともに、②元県職員の保健師や潜在看護師の応援等を得るほか、保健師が専門性の高い業務に専念出来るよう全庁の職員支援体制により事務職員が検体搬送業務等を担うなど応援体制を構築し、感染拡大防止に取り組んできた。

    今後は、季節性インフルエンザとの同時流行や再び感染が拡大する局面に備え、①保健師の前倒し採用により人員体制を強化するとともに、②「潜在保健師」を登録する人材バンクの創設、③応援体制構築に係るマニュアルの整備や研修の実施など、健康福祉事務所への即応体制を強化する。

    県内の健康福祉事務所は、国の保健所設置指針に基づき2次医療圏域ごとに一事務所の配置を基本とし、全国の2次医療圏域における平均の人口約35万人又は面積約1,000㎢の概ね2倍を超える地域に複数配置しており、政令・中核市と併せて17カ所配置しているところであり、概ね適正に配置されているものと考えている。

    阪神医療圏域では保健所設置指針を上回る5カ所の健康福祉事務所が配置されており、芦屋健康福祉事務所は阪神南県民センター・阪神北県民局の統合方針において、宝塚健康福祉事務所芦屋分室に改組し、分室業務は窓口業務に特化することとなっている。

    なお、芦屋市に係る感染症対策、精神保健などの対人業務を宝塚健康福祉事務所に集約するか芦屋分室で実施するかは、今回の新型コロナウイルス感染症への対応状況なども踏まえ、引き続き検討する。

    いずれにしても、住民サービスが大きく低下しないよう配慮するとともに、芦屋市が担う保健福祉行政との連携を強化し、利便性の向上を図ってまいりたい。

    再質問① 芦屋市議会は、芦屋健康福祉事務所を分室化しないことを求める請願を全会一致で採択し、存続を求める意見書を県に提出したが、県としてこれをどう受け止めているのか。

    井戸県知事 答弁 阪神南県民センターと阪神北県民局を統合するという方針を決めた際に、芦屋健康福祉事務所は宝塚健康福祉事務所に吸収して分室をつくるという方針を定めた。現時点では、その基本方針のとおり実施したいと考えている。ただ、芦屋市民のサービスの低下が著しいというような印象なり実態が生じてはならないので、コロナの対応なども含め、感染症対策の部門を宝塚に統合するのか、芦屋に機能を残すのかについては、慎重に検討していくとお答えさせていただいたものである。方針は決まっている。

    再質問② 方針は決まっているという答弁であるが、その方針を見直すべきではないか。

    井戸県知事 答弁 (保健所設置の)国の基準は、35万人1カ所、あるいは千㎡の単位で1カ所であり、芦屋の場合は保健所の設置基準にはほど遠い状況である。しかし、阪神南県民センターの所管にある場合には、あえて独立の保健所として存続させたわけであるが、今回は(阪神南県民センターと阪神北県民局の)統合を行うわけであるので、基本となる基準に従って適正配置を行おうとするものである。統合することにした上でどこまで市民サービスの低下を招かないような対応ができるかということをしっかり検討していきたい。

    3.中小企業支援について

    次に、中小企業支援についてです。

    新型コロナの影響によって4~6月期のGDPは、年率換算で28・1%も落ち込みました。しかし、重要なことは去年の10~12月期もマイナス、今年の1~3月期もマイナスとなっており、消費税10%で大きなダメージを受けているところに、新型コロナが襲ったというのが実態です。景気回復のためには消費税減税と、中小企業へのさらなる支援が必要です。

    兵庫県が実施した休業要請事業者経営継続支援事業は、経済センサス等をもとに対象事業者約4万件分の予算が組まれましたが、実際に支援が受けられたのは25,232件と見込みの6割程度にとどまりました。

    この事業は、国の持続化給付金と同様に売上減少50%以上に加え、県の休業要請に応じた事業者に業種を指定し、飲食店については通常営業が夜20時以降の店舗とするなど、厳しい要件で対象事業者を限定しています。

    その結果、県内には、約21万を超える中小・個人事業所があり、その大半が直接的・間接的に何らかの新型コロナの影響を受けているにもかかわらず、中小・個人事業主全体の10%程度しか支援の手が届いていません。

    東京商工リサーチの調査によると、1~8月の休廃業・解散企業数は前年同期比23.9%増の3万5,816件にものぼり「急激な業績悪化に陥り、先行きが見通せないまま事業意欲を喪失した企業・経営者が増えている」と、指摘しています。国・県の制度対象から外れた事業者はもちろんのこと、制度の対象となった事業者からも、「長期にわたるコロナ禍によって国・県からの支援金も底を尽きつつある。終息の見通しが見えない中で客足はかつてのようには戻っていない。もう限界。これ以上長期化すれば店を閉じざるを得ない」等々の切実な声がたくさん私たちのもとに寄せられています。コロナ禍で落ち込んだ減収への補填が急務です。提案されている補正予算案でも様々な中小企業対策が打ち出されていますが、中小業者の生業を広く直接的に支援する中身にはなっていません。

    日本経済の主役である中小・個人事業者の生業を支えるためにも、日本経済活性化のためにも、中小・個人事業者に対し、コロナ禍の影響による営業への損失補償を国に対し求めるべきです。県としてもそれに準じた更なる直接支援を求めます。

    また、諸外国ではコロナ禍のもと、消費を活性化させる抜本的な経済施策として、付加価値税の引き下げが始まっています。日本でも経済を活性化させ、中小事業者の暮らしと生業を支えるためにも消費税5%減税が必要です。井戸知事も今年3月に「所得税や消費税の負担軽減を臨時・特例的に行うこと」を国に要望していますが、あらためて国に対し消費税減税を強く求めるべきです。お答えください。

    答弁 今回のコロナ禍では、売上減少が中小事業者の資金繰りに及ぼす影響が何よりも心配された。大規模なリスク発生時、事業継続のセーフティネットとしては、広範な中小事業者が対象となり、且つ速やかに対応できる融資制度が果たす役割は大きい。

    こうした観点から、影響が出始めた2月、即座にコロナ貸付を創設、その後、3年間無利子・保証料不要の貸付を追加し、融資枠も拡大して万全を期した。県内15万6千の中小事業者のうち、9月末で2割、3万5千事業者に8千億円を超える保証承諾を行った。

    資金供給の量と機動性に優れた融資を基盤の対策と位置づけつつ、加えて休業支援金を2万5千件・102億円、事業再開支援金も既に3万1千件・52億円給付した。更に国対策の県内分があり、推定で、政府系融資は2万6千件・5千億円、持続化給付金は11万件・1,700億円、雇用調整助成金は4万8千件・610億円に達する。

    これらの対策で中小事業者の課題が全て解決したとは考えていない。但し、中小企業家同友会の調査では売上減少にある事業者が県内で4割強ある中で、その多くが対策を活用し、事業継続の下支えで一定の役割を果たしていると受け止めている。

    コロナ禍の影響による営業損失への補償は、一般的には国の責任として求めることは困難である。一方、法に基づく休業要請を行った対象業種に対しては、国の責任において協力支援金等の財政措置を行うことを要望している。県としてはサプライチェーン対策の強化や中小事業者の販路開拓など、ポストコロナも視野に入れた反転攻勢への支援を行っている。

    また、消費税は、欧州諸国では消費拡大対策として減税している国もあるが、社会保障の充実や幼児教育・保育の無償化等を支える財源であり、安定的に税収を確保することは、今後の日本の財政構造の安定化に必要な措置であることから、国はこの対策は考えていない。

    4月以降、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の創設やGoToキャンペーンの実施などの国の経済対策が示されたところであり、本県としてはその増額・拡充などによる更なる消費喚起対策の実施について、引き続き、国へ要望していく。

    4.学びの保障のための少人数学級について

    次に、学びの保障のための少人数学級についてです。

    新型コロナウイルス感染症拡大に伴う長期に渡る休校は、子どもたちにかつてない不安とストレスを与え、7月に実施された県教委の「新型コロナウイルス感染症の影響に関する心のケアアンケート」第1回調査でも、小学校低学年の2割が「眠れない」と訴えるなど、心と体のストレスを抱える児童生徒の状況は、深刻です。

    学校再開にむけた「分散登校」により20人程度の学級を体験する中で、少人数学級が感染拡大防止の点からも必要であること。子どもたちのケアと学びの観点からも「子どもの不安に寄り添うことができる」「勉強のつまずきを丁寧にみることができる」など、効果が発揮され、その実現が急務となっています。

    全国知事会、全国市長会、全国町村会の3会長は、政府に「少人数編成を可能とする教員の確保」などを要請。全国の小・中・高・特別支援学校の4校長会も文部科学相に少人数学級を要望。経済財政諮問会議の「骨太方針2020」にも少人数による指導の検討が盛り込まれ、教育再生実行会議でも、少人数学級を「令和時代のスタンダード」として推進する方針で合意し、委員から「20人を目指すべきだ」との意見が出るなど事態は、大きく動いています。

    全国知事会文教環境常任委員長である長野県知事は、すべての小・中学校で35人以下学級を実現した経験から、少人数学級の教育効果に注目し、コロナ感染拡大のもと、財政状況が厳しい中でも自治体独自で教員を配置し、子どもたちの学びの保障と、心のサポートが必要と取り組み、国が教員の確保に踏み出すことを強く求めています。

    また、福岡市では教室での密集を避けるとして、来年度全学年で少人数学級にするための特別教室の改修やプレハブ校舎の設置などを進めています。

    兵庫県としても、さらに少人数学級に踏み込むべきです。感染拡大を防止し、子どもたちの学びを保障するために、小・中・高全学年で20人程度の少人数学級を決断するとともに、そのための教職員定数改善を国に強力に求めること。

    また、県教委が行った「心のケアアンケート」結果からも、スクールカウンセラーのさらなる増員など、子どもたちの心のケアの拡充に取り組むことを求めます。答弁下さい。

    答弁 児童生徒が安全・安心に学校生活を送れるよう、これまでから学校の環境整備に取り組んでいる。今回の新型コロナウイルス感染症にあたっても、様々な工夫により、その対応に努めてきた。

    長期休業に伴う、学習の遅れや生活の乱れなどによる不安を取り除くため、学校再開後の2~3ヶ月はスクールカウンセラーなどの外部人材を集中的に活用するとともに補正予算で措置した学習指導員、少人数学習を行うための非常勤講師を積極的に活用している。加えて、これまで行ってきた学校行事等を、感染防止策をとった上で、可能な範囲で実施するなど、日常の学校生活に近づけるよう指導している。今後、更に対応が必要な場合は、国へ要望を行っていく。

    少人数学級編制については、小学校はもとより、中学校3年生までの拡充を国に要望するとともに、①中学校、高校における少人数指導の拡充、②必要な定数改善の実施、③学校が抱える課題に対応するための加配措置の充実を要望してきている。

    国の来年度の「骨太方針」において、少人数によるきめ細かな指導体制の計画的な整備等について検討することが示され、教科担任制とともに議論が始まっている。

    本県としては、先導的に行っている兵庫型教科担任制が充実されながら、少人数学級が進むよう、国の動向を注視し、国に粘り強く要望していく。

    5.大学での学びと学生生活の支援について

    最後に、大学での学びと学生生活の支援についてです。

    新型コロナ感染拡大は、学生生活に深刻な影響を与えています。

    大学の授業は、コロナ禍のもとでオンライン授業となり、後期も少人数のゼミなどを除いてオンライン授業が継続され、「一日中パソコンと向き合う生活に気が滅入る」「いつまで我慢すればいいのか」と、多くの学生は不安を募らせています。1年生は「受験以来、1回も大学に行っていない」「友人が1人もいない」などひときわ深刻で、対面授業の再開、学生同士の交流が待たれています。

    対面授業の再開には感染防止対策が必要不可欠ですが、文科省は、対面授業の再開を大学に促しているものの、肝心の感染防止対策への財政支援は、ほとんどありません。こうした状況をふまえ日本私立大学教職員組合連合が「感染リスクを最低限、低減するための」対策への予算措置を求めるなど、国は、大学に対し、対面授業再開を促すとともに感染防止対策の予算をつけるべきです。

    学生の生活困窮も深刻です。アルバイト先がなくなり、食事もままならず、県内の青年団体が取り組む食糧支援活動には、「一日1食しか食べていない」「貯金がとうとう数百円に」など学生の窮状が寄せられ、ある学生団体の調査では、約2割の学生が、収入減など経済的理由で退学を検討するなど深刻です。

    国の学生支援緊急給付金事業は「アルバイト収入が前月比50%以上減少」「原則として自宅外で生活をしている」など支給要件が厳しく、全学生数370万人に対し、支給されたのは、わずか43万人・1割にしかすぎません。関西学院大学では、学生数約25,000人のうち支給された学生は約4,000人にとどまり、「国からの予算が少なく、要件は満たしているが、支給できなかった学生もいる。」とのことでした。

    さらに、県内では武庫川女子大学や甲南大学など11大学で、学費減額・返還を求める署名活動が行われています。

    新型コロナ感染症をふまえ、国は、家計急変者への学費減免も行っていますが、これも対象が一部で、学生たちの学業継続への不安に応えるものではありません。県も、県立大学等の学費減免措置を行いましたが、他大学に通う県内学生への支援も必要です。

    大学の学費は、国際人権規約により、授業料無償や給付制奨学金など実質無償化が世界の流れであるのにもかかわらず、日本は世界的に異常な高学費であり、そのことがコロナ危機での学生の苦境をいっそう深刻にしています。

    今年度から、やっと国の高等教育の修学支援新制度が始まったものの、対象は非課税世帯等一部に限られており、全体の無償化にはほど遠いものです。

    お金の心配なく、安心して学べる学生生活を送れるよう、新型コロナウイルス感染症の緊急対策として、学生支援緊急給付金の全学生への一律支給、各大学に対面授業が再開できるよう感染防止対策や学費を半額免除するための財政措置を行うとともに、速やかに大学学費を無償化するよう、国に対し強く求めること。

    また県は、学業を断念する学生を一人もださないという立場で県内居住学生、また県内の大学に通うすべての学生を支えるための県独自給付金や学費負担軽減を行うことを求めます。

    答弁 本年4月に導入された国の高等教育修学支援新制度では、生計維持者又は学生本人の収入状況に応じて支援することとし、住民税非課税世帯及びそれに準ずる世帯の学生に対し、段階的に授業料・入学金の減免と奨学金の給付を行っている。

    今般の新型コロナウイルスの影響で家計が急変した学生に対しては、国は、見込所得により修学支援新制度の対象とするとともに、アルバイト先の休業等により大幅な収入減となった学生に「学生支援緊急給付金」を支給している。加えて、独自の授業料減免等を実施している大学もあり、県立大学でも従来からの授業料減免制度の拡充等を行っている。

    学費負担の軽減については、教育機会確保の観点から、まずは低所得層を中心に全国的な対応として、支援の拡充が必要である。国の修学支援新制度は高校生の就学支援金より所得要件が厳しいため、国に引き続き所得要件の緩和を要望していく。

    学生に教員から直接指導を受け、学友と切磋琢磨する場を提供する点で対面授業は極めて重要であり、県は国に対し対面授業の早期再開に向けた取組を強く要望してきたが、文部科学省は9月15日付けで後期授業での対面授業を促す通知を発出した。

    大学における感染防止対策の強化については、国が国立大学・私立大学に対して、運営費の支援やコロナ対策としての遠隔授業環境構築費の支援を行っているところであり、国に対し財政支援を要望している。なお、県立大学については、設置者である県が運営費の支援を行っており、コロナ対策として遠隔授業環境整備や感染防止対策の追加支援を実施している。

    今後とも、県内で大学生が安心して学べる環境づくりのために必要な取組を進めていく。

ページの先頭へ戻る