教職員の長時間労働について
■庄本えつこ■ 日本共産党の庄本えつこである。通告に基づいて質問する。
文部科学省が10年ぶりに行った勤務実態調査、これは平日の勤務時間が小学校で11時間45分、中学校で11時間52分と長時間労働になっていることが明らかになった。小学校では約3割、中学校で約6割が週60時間以上の勤務、過労死ライン80時間以上の残業を行っていることも明らかになった。兵庫県教育委員会も昨年、2016年に4年ぶりの教職員の勤務実態調査を行い、その結果と2013年度から行ってきた勤務時間適正化新対策プランの取組についてまとめ、新たに教職員の勤務時間適正化推進プランを作った。私も読ませていただいた。推進プランでは、平日の超過勤務時間は2012年度との比較において実質的な変化は見られなかったとし、超過勤務縮減が進んでいないことが明らかになったが、平日の超過勤務の1日平均、全県的には小学校で3時間7分、トータル10時間52分、中学校で3時間31分、トータル11時間16分、阪神間では小学校3時間3分、トータルで10時間48分、中学校3時間51分、トータルで11時間31分になっている。休日は職場に来ての仕事が小学校で23分、中学校では3時間43分、阪神間では、小学校26分、中学校3時間58分となっている。この数字を1ヵ月に換算すると、小中学校ともに60時間をはるかに超え、休日の超過勤務を含めると、中学校では過労死ラインの80時間を超えるという大変な実態も明らかになった。教師の業務は膨大で仕事が終わらないため長時間労働が日常になっている。
今年の8月、文部科学省の諮問を受け、中央教育審議会が勤務時間管理は労働法制上、校長や教育委員会に求められている責務と指摘した上で、教員の出退勤時間を客観的に把握できるシステムの導入などの緊急提言を行っている。
長時間労働をなくすためには、まず教員の1日の勤務時間を正確に把握することが大事だと思っているが、どうか。
■教職員課業務改善担当参事(大~一也)■ 昨年度、委員指摘のとおり、取組を評価する有識者等による委員会において、実態調査の検証を行ったわけであるが、会議など学校運営に関わる時間がその中でも減り、児童生徒の指導に関わる時間に充てられ一定の成果があったものの、超過勤務時間の縮減には至らず、十分な成果があったとは言いがたい状況にあると指摘された。委員会での意見を踏まえ、今年度4月に勤務時間適正化推進プランと業務改善例を示した先進事例集を取りまとめ、定時退勤日等の完全実施、あるいは、先進事例の積極的な活用を中心に、学校、市町教委、関係団体と連携を密にしながら、実効性ある取組を進めているところである。
また、勤務時間の把握については、これまでから、パソコンを活用し、一人ひとりの教職員が容易に出退勤時間と勤務内容が記録できるシステム、市町立学校では記録簿、県立学校では従事時間申告表を構築して、その活用を促してきたところであるが、推進プランの策定に合わせて、今年度、より使いやすいシステムとなるようにバージョンアップを図ったところである。現在、教職員に対して、このシステムの活用を徹底させることにより、勤務時間の確実な把握を図り、管理職が定期的にシステムの記録を確認し、状況に応じ勤務について適切にアドバイスを行っているところである。
今後も、よりよいシステムへの改良を図り、教職員のタイムマネジメント意識の向上を図るとともに、勤務時間の正確な把握に努めていきたいと考えている。
■庄本えつこ■ 客観的に見るという意味では、タイムカードなどの導入も必要ではないかと思っている。文部科学省からもそのような指導もあると思うが、なかなかそれが定着していないということがあるので、ぜひ県も考えていただきたいと思う。
今年6月から8月にかけて、兵庫教職員組合が組合の所属の枠を超え、管理職にも行った緊急アンケートによると、長時間労働の原因は全体で、1位が担任業務、2位が分掌業務、3位が増加する授業時間、授業準備となっている。中学校においては、部活動が超過勤務の大きな原因になっている。一人ひとりの子供にきちんと目を配ろうとすると、どうしても夜遅くまで、そして、休日に出勤することになる。毎月100時間ぐらい残業、持ち帰り仕事、休日出勤している。朝6時に家を出て、帰るのは夜9時から10時、教員を増やしてほしい。学校や学年にとっては保護者対応や生徒指導にほとんどの勤務時間をとられ、担任としての仕事や教材研究は全て家に持ち帰る状態にある。5、6年生の40人学級は本当にしんどい。手のかかる子ばかりに時間がとられる。教科担任制では担任の業務が減らない。35人以下学級などの少人数学級にしてほしい。部活動の土日、休日の活動を強制力を持って制限してほしいなど、現場からの切実な声が多数寄せられている。校長先生や教頭先生からも、教職員の定員増が急務の意見が寄せられている。私の知り合いの教師が13年前、長時間労働によりくも膜下出血で倒れた。倒れる前2ヵ月間の時間外勤務時間数は約266時間、週当たりの平均は24.17時間である。労災は認められたが、体が元に戻るわけでもなく、今もリハビリと家族の介護が続いている状態である。事態は本当に深刻だと思う。1日8時間、週40時間労働、超過勤務の上限規制や労働安全衛生体制の確立など、労働法の諸原則を徹底して是正を図ることが求められているが、いかがか。また、実情が深刻なだけに緊急的な手だても含め対策が必要である。この間の授業時間増に見合う教員を緊急的に増やすことなど、検討する必要があると思うが、いかがか。
■教職員課業務改善担当参事(大~一也)■ 本年4月に策定した推進プランでは三つの重点取組として、定時退勤日やノー部活デー等の完全実施、先進事例の積極的活用、組織的な推進体制の構築による教職員の意識改革を示したところである。
これらの実現に向けて、各学校においては、先進事例を参考にしながら、自校の実態に応じた取組目標を設定するとともに、全教職員で目標を共有しつつ、職員会議等を活用して、学校全体で組織的に業務改善に取り組んでいくこととしている。
県教委や市町教委においても、調査、照会事務の見直しや研修会等、教職員が参加する事業の見直しに取り組んでいる。また、定時退勤日、ノー部活デー等の完全実施に向けて、保護者や地域住民、関係機関等に対して広報誌やホームペ一ジを活用し、取組の趣旨の周知と理解の促進を図っているところである。
現在、学校での進捗状況や課題を把握するため、県内全ての公立学校を訪問し指導を行っているところで、今後もプランにおける取組を推進することにより長時間労働の防止に努めていく。
教職員の超過勤務の問題は全国的な問題であり、国においては、学校における働き方改革特別部会から緊急提言が出されたが、引き続き議論が続けられており、その動向にも注視していきたいと思う。
なお、教職員の労働時間の規制については、一般の行政職員とは異なり、例えば、修学旅行や勤務時間外の家庭訪問、また土日における部活動指導や生徒指導などの業務があるなど、その勤務の特殊性から困難な面があるということを理解いただきたい。
■学事課長(加藤英樹)■ 定数の関係であるが、知ってのとおり、現行の基礎定数、もしくは、政策目的ごとに加配する加配定数においては、委員から指摘があった緊急的に長時間勤務解消のために対応するような定数は残念ながらないところであるが、基本的には、さまざまな取組によって長時間勤務の解消を図っていくべきものだと考えているので、よろしくお願いする。
■庄本えつこ■ 個人の意識改革や業務を減らすだけでは長時間労働がなくならないのは明らかだと思う。プランにとどまらず、必要な対策を求めていきたいと思う。どの先生も、本当に教員の数を増やしてほしいと言っている。1学級のクラスの数を減らしてほしいということは切実であるので、ぜひその方向でお願いしたいと思う。
さて、教員にも労働基準法が適用されている。一方で、公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法、いわゆる給特法によって公立の小中高校の教員には原則として超過勤務を命じないとされている。しかし、命じてはならないはずの超過勤務が教師の自発的行為として放置されてきたのである。そして、給特法が時間外勤務と休日の手当は支給しないと定めているため、労基法37条の残業や休日、深夜の割増賃金の支払い規定が教員には適用されていない。そのかわりに、職務と勤務対応の特殊性に基づき、基本給の4%に相当する教職調整額が支給されている。しかし、この4%というのは51年前の1966年の勤務状況調査で、1週間当たりの超過勤務が小中学校で平均1時間48分だったことを受けたものである。現在は当時の超過勤務時間の約11倍となり、実態を反映した金額ではない。超過勤務が教職調整額を超える部分について時間外手当などを支払うべきだと思っている。これは質問にしていたが、時間がないので要望にしておきたいと思う。ぜひ、この給特法の4%を超えるところに手当を出すことも考えていただきたいと思う。
スクールソーシャルワーカーの配置について
■庄本えつこ■ 教員以外の専門職、特に、スクールソーシャルワーカーの配置についてお伺いする。
学校現場での不登校やいじめ、非行や暴力行為といった問題行動には、貧困、虐待、障害、家庭環境など、学校が把握しにくい原因が隠れたものがある。学校から見て困った子供を福祉的な視点で支える対応が必要なケースが増えている。家庭丸ごと子供の様子を捉えるという点で、大きな役割を果たしているのが福祉の専門家であるスクールソーシャルワーカーである。尼崎のある小学校では、昨年から週1回スクールソーシャルワーカー、そして、スクールカウンセラーと通級担当教師の3人で問題のある子供一人ひとりについてそれぞれの立場や見方を共有しながら対応を協議をしている。そして、今、6人いた不登校が1人になった。スクールソーシャルワーカーが家庭訪問をする中で、不登校の原因に貧困があることが分かり、福祉の関係機関と連携を図り、生活保護をとることができた。生活が安定するとともに、子供の心も落ちつき、学校に来られるようになったという事例である。また、家庭環境により、食事が規則的にとれない子供に子ども食堂を紹介し、その子が夏休みにそこに行って楽しく食べることができたなど、本当によい連携ができている。国もスクールソーシャルワーカーについては予算も増やし、人数も増やすとしている。県も2016年度の新規事業として市町スクールソーシャルワーカー配置補助をつけたが、まだまだ足りないと思っている。処遇も非正規である。子供を丸ごと支える福祉の専門職としてのスクールソーシャルワーカーを正規職員として全小中学校、高校へ配置をすることを求めるが、いかがか。
■学事課長(加藤英樹)■ スクールソーシャルワーカーについては、現在、国の補助事業を活用して、政令市、中核市を除く全市町の中学校区への配置を目指しているところである。しかしながら、定数の面から申し上げると、公立学校の教職員定数を規定をした、現行の義務標準法、高校標準法いずれにおいても、スクールソーシャルワーカーの定数は措置がされていない状況になっている。正規職員として配置するためには、そのため県単独での予算措置が必要となってくるが、現在の厳しい県の財政状況の中では非常に困難な状況である。
一方、スクールソーシャルワーカーの常勤化に向けての調査研究が文部科学省の平成30年度概算要求に盛り込まれているので、私どもとしてはこうした国の動向を注視していきたいと思う。どうぞよろしくお願いする。
■庄本えつこ■ 国もスクールソーシャルワーカーを認め、1万人を目指して頑張ると言っているが、やはり困難を抱えている子供を支えるのは多忙な担任だけでは無理である。それでも家庭訪問をしたり、不登校の子供を迎えにいくなど、担任、学校の先生たちは本当に努力をされている。子供の心を支えるスクールカウンセラーや、子供の貧困などに対応できるスクールソーシャルワーカーなど、教員のほかに専門職員を多く配置することが望まれると思う。アメリカやイギリスでは教員とほぼ同数の専門職員が配置され、子供たちの育ちを支えている。教員の長時間労働を解消するためにも、子供たちのためにも、必要な専門職員を増やしていくことが大事だと考える。長時間労働解消のためには現場の教職員が求めているように、1学級の定員を35人以下学級などの少人数学級にすることと併せ、教職員、そして、専門職の定数を増やして、1人当たりの仕事量を減らすことに尽きると思う。その実現を要望して質問を終わる。ありがとうございました。
|