企業立地補助金と、中小企業、小規模企業の支援について
■宮田しずのり■ 中小企業、小規模企業の支援について質問する。
皆さん、211分の135、この数字は何かお分かりであるか。これは、企業立地補助金制度が作られて以来、支出された補助金のうち、パナソニックが受け取った金額の割合を示すものである。211億円のうち135億円、実に64%、関連企業分も含めると約7割を同社が受け取っている。この補助制度はパナソニックのためにつくられたといっても過言ではないと思う。しかし、尼崎工場はわずか2年から6年で完全に撤退をして、姫路工場には、補助が続けられているが、地域の雇用、あるいは、中小企業への波及効果はほとんど増えていない。私たちは何度もこの大企業呼び込み型の施策が破綻していることを指摘をして、先日の本会議でもこの立地補助を地域にある中小企業中心の対策に切り替えるよう求めてきたが、新年度予算では、企業立地補助が更に拡大されている。中小企業も使えるようにしたと言われるが、外からの呼び込み型という従来の発想は変わっていない。
しかし、今回は地域経済の土台をなしている部分に焦点を当て、実態を踏まえた、施策や対策に切り替えていくべきだとの立場から質問をさせていただく。
その一つは、中小企業、小規模企業に対する賃上げ支援についてである。
新年度予算の中小企業向け施策は、保証料を減らしたり、低利重視で利子補給をする施策が中心になっており、体力のある企業は助かる場合もあると思うが、大企業には多額の補助金を出す一方、中小企業には、融資頼みという発想が変わっていないと言わざるを得ない。
中小企業は、消費税が上げられて、価格に転嫁できずに苦しんでいる。また、特に今、深刻なのは、アベノミクスのもとで一時120円ともいう円安がその後も続いているが、原材料高を転嫁できず、中堅企業でも利益が上がらない状態が続いていると言われる。
せんだって中小企業団体の方にお話聞くと、今もうかってるのは3割ぐらい、利益が出てないのが3割ぐらい、収支が均衡しているのが3割ぐらいではないかと言われており、中小企業の皆さんの多くが困っておられる話も聞いた。そういう中で、中小企業団体によると、給料を上げられるとしても、ベアどころか、定期昇給分も、半分ぐらいしか上げられないのではないかと話をされていた。地域経済の回復のためには、どうしても中小企業を含む賃金の引き上げが不可欠だと思う。
そこで中小企業が賃金を引き上げられるような支援策を講じるべきだと思うので、所見をお伺いする。
■産業政策課企画調整参事(今井良広)■ 経済の好循環には、GDPの約6割を占める個人消費の回復が不可欠であり、そのためには、賃金上昇が欠かせない。
このため、中小企業が将来にわたって収益基盤を確立し、持続的に賃上げを行えるよう、その事業拡大や新事業展開を後押ししていくことが肝要である。
このため、本県では、ひょうご経済・雇用活性化プランに基づき、研究開発、設備投資、販路開拓、海外進出等に係る施策を講ずることで、中小企業の前向きな取り組みを支援している。
また、本県では、中小企業の経営努力では解消し切れないコストアップ要因を軽減する価格転嫁を認めるよう、関西広域連合を通じて、国・経済界に対し緊急提言を行った。
さらに、ひょうご産業活性化センターにおいて「下請かけこみ寺」という窓口を設け、調査員を置き、中小企業の価格転嫁に係る相談にも乗っている。
なお、賃金については、労使の自主的な交渉に委ねるとの基本姿勢は守りながらも、労使の円滑な話し合いができるよう、政労使の三者会議等を通じて、必要な情報提供や要請も行っている。
今後とも、さまざまな支援策を講じることで、本県の活力の源泉である中小企業において、賃上げとそれによる人材確保が円滑に進み、経済の好循環が実現するよう努めていきたい。
■宮田しずのり■ 大企業は莫大な内部留保金を持っているから、その一部を活用するだけでも相当な賃上げができると言われている。
しかし、中小企業は賃上げをするにしても、体力が非常に弱っているので、何らかの支援が必要なことは言うまでもない。
私は最初に、パナソニックの問題を取り上げたが、今年もパナソニックに対する補助金は10億円支出される。もしこの10億円を地元の中小企業に支援すれば、地元にお金が循環して、経済波及効果が何倍にもなることは明らかだと思う。これから中小企業の賃上げのために一層検討を続けて、支援していただきたいと申し上げておきたい。
もう一つ、中小企業の人材確保の支援も非常に重要である。学生は大企業志向と言われるが、それは待遇面の差ももちろんあるが、それよりも、地元にどういう企業があるのか知られていない。就職活動では、大々的にネットを使って人材会社がさまざまな採用情報を知らせているが、地元のすぐれた中小企業は出てこない。
どんな企業があるのか知っていたら、大手でなく、近いところで就職したいが、情報が伝わってこないという学生たちの話を聞いたこともある。
そこで、地元の中小企業が宣伝費を使わずにPRできるような支援をしてはどうか。また、本会議でも提案したが、非正規雇用が広がる中で、中小企業が正規雇用を行う際の補助制度を作るなど、人材確保への支援を更に強めていく必要があると思うが、この点はどうか。
■しごと支援課長(大谷俊洋)■ 本県においては、中小企業の人材確保のために、さまざまな面接会等をハローワークと共催で実施している。
まずは、新規学卒向けであるが、本年度についても新規高卒向けに既に4回就職面接会を開催し、788人参加していただいている。
また、新規大学生向けの面接会も6回開催し、998人の参加をいただいている。
さらに、ふるさと人材確保応援事業として、5県民局で合計で546社、1,572名の面接会も実施している。
特に中小企業は理系の人材が欲しいので、理系の大学へ直接出向いて面接会をしており、115社が参加し、629人の学生と面接をしている。
来年度は特に、兵庫の若者を積極的に採用しようとする中小企業を募り、ひょうご応援企業、就職応援事業として、企業のPRも県が応援することを進めていく。
また、ふるさとの企業が面接等で旅費を支援した場合に、県が助成することで、若者の就職支援に併せて中小企業の人材確保に積極的に努めていく予定である。
■宮田しずのり■ 次に、小規模規企業振興基本法の具体化についてお聞きする。
昨年6月の国会で、従業員20人以下、商業・サービス業は5人以下の個人事業者を含む小規模事業者が地域経済と雇用確保に大きな役割を果たしていることに着目をして、小規模企業を支援する施策を国、自治体、支援機関等が連携して実施することを定めた小規模企業振興基本法が全会一致で成立した。
経済産業省では、1963年に中小企業基本法が制定されて以来、51年ぶり、戦後2本目の基本法と言われる。
その第7条で地方公共団体は小規模企業の振興に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有すると定めている。
そこで、県当局は、この基本法に基づいて、県内の諸条件に応じて、どのような施策を策定し、実施をしようとしているのかお聞きする。
■経営商業課長(法田尚己)■ 小規模企業基本法であるが、委員ご指摘のとおり、都道府県も、それぞれの地域の実情を踏まえた各般の施策を実施していくこととしている。
本県では、これまでから、ひょうご経済・雇用活性化プランに基づき、兵庫のしなやかな産業構造の構築に向けて取り組む中で、地域の小規模事業者に対しても経営改善普及事業や、相談・助言等を通じた経営基盤の強化、経営革新支援や、設備貸与、金融支援など、県として各般の施策を関係団体や市町、関係機関とも連携しながら支援してきている。
平成27年度についても、先ほどの経営改善普及事業や商店街などの地域産業の活性化、若者等のUIJターンの促進等をはじめとする雇用・就業支援など、幅広く施策を実施していく予定である。
■宮田しずのり■ ひょうご産業・雇用活性化プランに基づきさまざまな施策を実施していると言われるが、中小企業団体の関係者からは、中小企業がひょうご産業・雇用活性化プランを見ても、どうやって活用できるのか、全く分からないとの話を聞く。皆さんも仕事をしておられて、ひょうご産業・雇用活性化プランが、どこまで使われているかよく御存じだと思うが、本当に一番困っているところに届いていないのではないかと、指摘しておきたい。
ひょうご産業・雇用活性化プランは、先端技術などの成長産業の支援が中心となっている。
そこで、今回の小規模企業振興基本法は、いわゆる成長・発展のみならず、小規模企業が地域で事業を継続して行っていること自体を評価して、持続的発展をめざす小規模事業を支援することを正面から取り上げた法律と理解しているが、見解が正しいのかお答えいただきたい。
■経営商業課長(法田尚己)■ 小規模企業振興基本法の基本原則は小規模事業者の持続的発展と国からも示されている。
■宮田しずのり■ 兵庫県で従業員20人以下、商業・サービス業では5人以下の小規模事業所が企業数で約13万4,000社で、全企業数の約85%を占めており、従業員数でも48万人、約3割の雇用を支えている。これらの小規模事業者が地域に根差して、持続して事業を続けて、50万人近い雇用を担っており、地域経済を支える大きな役割を果たしている。
そこで、兵庫県としても、ここをもう一度評価して、光を当てて、持続的発展をめざす支援を抜本的に強化するための方策を検討すべきだと思う。部長にお答えいただきたい。
■経営商業課長(法田尚己)■ 小規模事業者が地域経済に大きな役割を果たしている認識は持っている。
本県では、こういう認識のもとに、昨年、県議会の議決を得て策定した、ひょうご産業・雇用活性化プランに基づき、各般の施策をする中で、小規模事業者の持続的発展という、小規模事業基本法の趣旨にのっとる施策も展開しているので、ご理解いただきたい。
■宮田しずのり■ 今申し上げたような、小規模の事業者が、ひょうご産業・雇用活性化プランをどこまで使えるか、皆さん自身がよく分かっていると思うが、本当に小規模事業者に届くような施策になっていないことを指摘しておきたい。
次に、支援策を検討する上で、提案をしたい。県も恐らく小規模事業者の実態は、余り詳しく把握されていないと思う。
そこで、まず小規模事業者の実態をつかむため、対象事業所の悉皆調査を市町と共同して行う必要があると思う。
ちなみに、中小企業振興条例は全国では31都道府県、150市町村でつくられ、広がっている。その多くのところで全事業所調査を行うと、自治体の職員自身が直接、小規模事業者に触れて役割の大きさを痛感し、支援策の策定などでの、その後の振興の大きな力になっていると聞く。
私は、一昨年、中小企業振興条例をつくった愛知県に行って、担当者の話をお聞きした。愛知県でも、それまでは企業城下町であるから、リーマンショックまでは大企業に目が向いていた。しかし、あのリーマンショック以来、中小企業にこそ目を向けないと、大きな経済変化が起こったときに、非常に大きな痛手になることから、中小企業振興条例を作り、行政が現場に足を運び、実態をつかみ、常に中小企業の存在を念頭に置くことになったので、施策を考えるに当たって、発想が変わってきたと話をされたのが非常に印象深く覚えている。ぜひ、こういう経験も踏まえながら、兵庫県でも中小、小規模事業者の悉皆調査をやっていただきたいと思うので、お答えいただきたい。
■経営商業課長(法田尚己)■ 本県の小規模事業者の実態については、規模別、分野別の事業者、従業員数などの、基本的な情報について、国の経済センサスにより把握している。
また、経済動向については、日銀神戸支店の短観のほか、県独自のものとして、産業労働部において地場産業及び中小企業等に対するヒアリング調査をもとに毎月作成している兵庫県の経済・雇用情勢や、ひょうご産業活性化センターが四半期ごとに実施する製造業300社程度を対象とした、中小企業経営動向調査がある。
また、兵庫県中小企業団体中央会が毎月実施している情報連絡員報告書による業種別景況調査など、各種団体の調査も活用して実態把握をし、各種施策にも反映している。
■宮田しずのり■ 先ほど申し上げたが、雇用の面でも非常に大きな役割を担っている全県で13万4,000社の中小、小規模事業者を支援して活性化していくことは、兵庫県の地域経済を発展させていく上で欠かせないことだと思う。
先ほども述べたが、今後の産業政策、兵庫県の地域経済の対策の柱に据えて、今後取り組みを進めていただきたいと強く要望して、私からの質問とさせていただく。
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