土砂災害対策、開発規制と既存住宅への対策について
■ねりき恵子■ 日本共産党県議団のねりきで恵子である。
私は、土砂災害対策について伺う。先ほど来、同じような質問が出ているが、重複するところもあるが進めていく。
まず、総点検と防止対策の推進についてである。
一昨日の台風19号では、洲本市で1時間に83ミリの猛烈な雨が観測されたが、ここ30年の間に1時間に50ミリを超える雨や一日に200ミリを超える雨の回数が増えている。
土砂災害は、集中豪雨等の主に大雨によって引き起こされている。今年相次いだ土砂災害を教訓にし、防災対策の大きな柱と位置づけ、対策に全力を挙げることが求められる。
土砂災害対策は、情報の伝達や避難のあり方、山の水源涵養機能の回復も含め、総合的な対策が必要であり、構造物が万能という訳ではないが、8月豪雨の災害で砂防ダムなどが一定の役割を果たしたことから見て、砂防堰堤の設置など、ハードの対策も引き続き強化が必要である。
県は、第1次山地防災・土砂災害対策5箇年計画の緊急対策も含め、砂防堰堤やコンクリート擁壁の整備を進めてきており、今回総点検を行った上で整備を進めていくとのことであるが、今後5年間の第2次計画の計画数を全て整備しても、整備率は3割足らずにしかならない計算である。計画数の引き上げと抜本的な予算の充実でテンポを上げることが必要だと考えるが、同時に、計画を推進するための体制の強化も必要と考える。
県は、行革で5年前に土木事務所の地域事務所を廃止し、22あった事務所を13事務所に統廃合し、職員を983名から825名に減らした。災害復旧工事にも人手を割かなければならない中、総点検と防止対策の推進の体制は確保できるのか、どのような人的体制で進めていくのか伺う。
■県土整備部総務課長(中山裕規)■ 8月の丹波豪雨災害や広島市の災害を受けて、今年度から3力年をかけ、土砂災害警戒区域の総点検を実施するとともに、丹波市の約30の被災箇所において緊急的に砂防堰堤等を整備していくこととしている。
まず、総点検は、指定済みの警戒区域の見直し、残る危険箇所の再チェック、また新たな指定の検討などを行う予定である。業務実施に当たっては、専門知識を持つ民間業者に業務委託し、土木事務所職員の負担軽減を図る。
次に、緊急的な砂防堰堤の整備であるが、これらの事業を実施するため、10月1日に丹波土木事務所に復興事業室、またその中に復興事業課を設け、必要な人員を配置したところである。
今後とも、事業の進捗を踏まえ、必要に応じて人員の重点的な配置、また県・民間のOBなど技術を有する経験者の採用、コンサルタントの活用など、円滑な事業執行体制の構築を計る。
■ねりき恵子■ 仕事量が大変多いと思うので、抜本的な体制も必要だと思うが、私が聞いた丹波のある地域であるが、以前から砂防堰堤の設置を要望していたが、なかなか話が前に進まないうちに今回の災害が起き、田畑は大きな被害を受けたが、人家はどうにか助かったという状況で、復旧と予防の両方に力を入れてほしい、早く砂防堰堤を作ってほしいということで、ここを調べると、平成30年度までに完了予定の砂防ダムの計画があるが、一日も早く建設に向け取り組んでいただきたいと思うが、建設業界の人手不足、資材の高騰で公共工事の推進が困難な状況が生まれている中で、さらに景気対策の名前で補正予算が組まれたこともあり、各土木事務所では職員が超過勤務を行い、頑張っている。発注を急ぐため、仮設計を組み発注し、設計書のミスをチェックし切れず、入札の際にトラブルになるケースも出ていると聞いている。
分野は違うかもしれないが、土砂災害対策の分野でもこうしたことが起こらないよう、職員の人的体制の充実も改めて求めておく。
次に、土砂災害特別警戒区域の指定について伺う。
広島県での災害後、土砂災害危険箇所に対する土砂災害防止法に基づく区域指定の遅れが全国的に問題になっているが、兵庫県では警戒区域の指定は進んでいるものの、特別警戒区域の指定は1カ所に留まっている。急いで指定を進める必要があると思うが、1カ所に留まっている理由と、今後どのように進めていくのか、改めて伺う。
■砂防課長(市川和幸)■ 本県では、土砂災害危険箇所の周知や警戒避難体制の整備が最重要と考え、これまで土砂災害警戒区域の指定を先行して進めてきた。
この警戒区域の指定が平成24年度におおむね完了したことから、昨年度より土砂災害特別警戒区域の指定に取り組んでおり、相生市等5市町で、開発の可能性が高い土地を対象に調査を進め、今年度は約100カ所を指定、来年度は300カ所、その後更にペースを上げ、指定に取り組んでいく。
■ねりき恵子■ ぜひ進めていただきたいと思うが、特別警戒区域の指定が進まないということで、困った問題も起きてくると思う。これから進めていくということであるが、まだまだ必要なところに特別警戒区域の指定がされるには時間がかかるので、指定がされるまでも対策をとらなければならないと考える。それは、開発規制の問題で、今回の広島の災害では、あれだけの災害が発生した要因に、危険箇所で宅地開発が無秩序に進んでしまったことが指摘されている。山の斜面をはい上がるように住宅地の開発が進み、昔、蛇が降るような水害が起こっていたことが地名の由来であったような、災害の危険が高い場所にまで、たくさんの住宅が建てられたということも指摘されている。
人家に被害が及ぶのを防ぐ対策とともに、そもそも危ない場所に家などが建てられることのないよう規制を行うことが、予防策として大切だと考える。
もともと、土砂災害防止法は、99年の広島での土砂災害の教訓から、それまでできなかった直接の立地規制踏み込んだ法律であるが、それは土砂災害特別警戒区域に指定されている地域内のことであり、兵庫県では先ほども言ったように1カ所しかまだ指定されていないということで、規制が行われた例はない。実際に、こんなところに家を建てたら、確かに危ないという斜面にも家がどんどん建てっていく様子が見てとれる。
特別警戒区域の指定を急ぐことも大切であるが、それを待っていては対策が後手に回ってしまうのではないかと思う。危険箇所が開発されることを事前に抑制する手だてが必要だと考えるが、県としての考えを伺う。
■砂防課長(市川和幸)■ 土砂災害警戒区域のうち、渓流の谷の出口や崖直下などで、大きな被害を生じるおそれのある箇所については、土砂災害特別警戒区域に指定を進めていく。
現在、相生市等5市町で行っているのは、開発の可能性が高い土地を対象に、特別警戒区域の指定に向けた調査を進めており、来年度以降もそういったところを中心に指定拡大を図っていく。
指定によって、住宅分譲等の開発行為に際して土留め壁等の対策工事や、崖地側の壁を厚くするなど建築物の構造強化が義務づけられ、安全を確保するための規制が働く。
なお、特別警戒区域に指定されるまでの間は、警戒区域に既に指定されていることから、市町による警戒避難体制の整備やハザードマップの配布などによる警戒区域の周知を徹底していき、安全の確保に努めていく。
■ねりき恵子■ 特別警戒区域に指定されれば、開発規制がされるというのはそのとおりで、それをするよう、どんどん進めていってほしいが、それまでの間の開発規制について、県がもっと積極的に業者などに働きかけていただきたいというのが質問の趣旨である。
今、検討されている土砂災害対策基本法の見直しは、報道の限りでは直接的に開発規制を強化する中身になっていないと思う。
一方、基礎調査結果の公表の義務づけが行われるようであるが、例えばこれを生かして開発業者に事前に注意を促す。そういった場所の開発は避けるよう指導するなどの対策がとれるのではないかと思うが、そういった積極的な対応も含めしていただきたいが、いかがであるか。
■砂防課長(市川和幸)■ 大半のところについては、土砂災害警戒区域に既に指定している。そういったことをより周知徹底し、特に渓流の谷の出口や崖直下などは大きな被害の恐れがあるということについても、これから十分周知し、そういったところの実施について十分注意して行うよう、そういったこともこれから努めてまいる。
■ねりき恵子■ 同じ答弁の繰り返しであるが、家が建ってしまってからでは、今後の災害の危険性が高くなるということで、ぜひ土砂災害防止法の抜本的な改正というのも必要だと思うが、県としても毅然とした対応をしていただきたいと思う。
これ以上、危険な場所に住宅が建たないような規制が必要であり、この機能が果たせることが求められていると思うので、県としても働きかけを強めるなど、考えていただきたいと要望し、次の質問に移る。
既存住宅への対策についてである。
事前に危険箇所の開発が進まないような対策が最も重要だと思うが、現実には開発が行われ、家が建っている。そうした既存住宅に対する対策も重要である。
特別警戒区域に指定されれば、地区外への移転を勧告したり、移転や防災対策にかかる費用への支援も行われる。しかし、既に生活がありコミュニティが作られていれば、移転といってもなかなか簡単にはいかないし、住民への丁寧な説明が欠かせず、時間がかかることも考えられる。
また、特別警戒区域指定がされる、されないにかかわらず、危険箇所にある住宅に住む住民が被害に遭う危険を減らす必要があると考える。8月豪雨災害での被害を見ても、崖側に大きな窓があり、土砂に破壊され、流れ込んでしまう。あるいは、築年数が長い家はやはり弱いということで、そうした住宅の例えば崖側の窓をなくしたり強化する。また、鉄筋コンクリート造にするなど、住宅を土砂災害に強いものに改修するための助成や融資などの支援を行うよう求めるが、いかがか。
■砂防課長(市川和幸)■ 土砂災害特別警戒区域では、建築物の構造強化が必要となることから、県は、既存住宅の建て替えや新築に際し、建築物に作用する土砂の力やその範囲を明示するなど、住民に技術的支援を行う。
また、特別警戒区域では、区域外への移転希望があった場合に、国の助成制度を活用できる。この制度について特別警戒区域の指定時の地元説明会などを利用し、その周知に努めていく。
■ねりき恵子■ 今のは特別警戒区域に指定されたときのことで、それは私が質問で言ったので、それ以外の危険だと思われる箇所に対しての助成や融資を考えてほしい。それが非常に重要ではないかということで、その点について伺う。
■砂防課長(市川和幸)■ 土砂災害特別警戒区域の指定までの間についても、先ほどと同様であり、土砂災害警戒区域に指定されているそういった中で、住民の方への周知徹底の中で、どういったところが危険か、そういったことも十分これから周知していく。
また、それと併せ、どういった構造が安全か、そういったことについても周知をしていく。そういったことの説明もしながら、住民の方に安全な対策をとっていただくことに努めていく。
宝塚市武田尾地区の災害復旧について
■ねりき恵子■ 災害が起こらないよう、たとえ起きても最小限で済む対策をぜひ進めていただきたいということを要望し、次の質問に移る。
宝塚市武田尾地区の災害復旧についてである。
さきの豪雨災害は、宝塚市でも西谷地域を中心に県道の崩落や県有地の土砂崩れで全壊が出るなど、大きな被害となった。西谷、武田尾地域では、8月10日の台風で武庫川が増水し、床上浸水をした。その1週間後の豪雨で武庫川に合流する僧川があふれ、再び浸水し、武庫川のパラペットが崩壊し、住宅の一部も流された。
武田尾地区は、平成16年10月の台風23号により甚大な被害を受け、緊急対策としてパラペットが積まれたが、このパラペットが積まれたが、このパラペットが今回流された訳であるが、今後、武庫川水系河川整備事業にあわせ、護岸の改修と区画整理事業による高台移転の事業が進められようとしていたところである。
今回の水害で区画整理事業が進むまで、現在の住宅に住み続けるのは大変危険な状況で、住宅の仮移転が求められる。既に、2世帯は市の教職員住宅の空き室に仮入居され、また、市は50万円の独自の仮移転補助を決定した。県としても、仮移転のための支援が求められる。
一方、住民の方々は、今、仮移転をし、また区画整理事業が完了したら戻ってくることになるが、高齢者を抱え何度も転居を繰り返すのは負担が大きい。パラペットまで流されたのはなぜか。高台に移転しても安全か、不安だなど、さまざまな声が聞かれる。
また、この武田尾周辺では、新名神高速道路建設工事が行われており、山肌を削り川をつけ替えるなどの影響が水害の被害を大きくしたのではないかとの住民の声もある。
台風や大雨の予報が続く中、住民の方々は不安な日々を過ごしている。住民の要望をきめ細かく酌み取り、一日も早い災害復旧と抜本的な高台移転等を進めることを求めるが、いかがか。
■武庫川総合治水室長(高谷和彦)■ 武庫川武田尾地区では、8月16日に時間最大90mm、総雨量140mmの局地的な豪雨となり、支川、僧川の溢水や住宅への浸水、武庫川護岸の70mに渡る崩壊が発生した。
今後の出水での二次被害を防ぐため、速やかに大型土のうを設置し、被災箇所の応急復旧を終えたところである。
このたびの被災では、武庫川の水位が低い状況で、委員おっしゃったように護岸が崩壊したため、住民からはその原因について調査説明を求められている。このため、現在、専門家の意見を聞きながら、宝塚市とともに原因究明を行っており、整理を終え次第住民に説明を行い、原因に応じた対策に取り組む。
また、当該地区は、昭和58年や平成16年など数度にわたり浸水被害を受けていることから、先ほど話があったように、河川護岸のかさ上げに併せて土地区画整理事業を行い、地区内7戸の住宅敷地を4mから5m盛り土して安全を確保する計画としている。
実施に当たっては、地区外への仮移転を避けるため、段階的に盛り土することとしていたが、被災後の現状を踏まえると、早期に事業の完成を目指すことが望ましいため、工事計画を見直すこととした。具体的には、一旦地区外に仮移転していただくことで盛り土工事を一括して施工する計画に変更した。
この計画変更については、地元説明会を実施し、関係者の方々の了解を得ている。
今後は、円滑に移転していただけるよう補償交渉を進めるとともに、河川改修工事や造成工事を鋭意推進し、地区の安全・安心の確保に努める。
■ねりき恵子■ 今、説明があったが、十分な個々一人一人の状況が違うと思うので、十分住民の方の意見・要望を聞いていただき、一日も早い安全対策を求め、質問を終わる。
|