被災者支援について
■ねりき恵子■ 兵庫県内にも大きな被害をもたらした8月の豪雨災害は、改めて災害対策における課題を浮き彫りにした。
被災された皆様に改めてお見舞いを申し上げ、復旧・復興に当たっておられる住民、ボランティア、職員の皆さんに敬意を表する。
災害の教訓に学んで、備えを充実させる立場で質問をする。
まず、生活再建支援の問題である。
阪神・淡路大震災の被災者の運動で制定された生活再建支援法は、改正を経て、災害で住宅が全壊した場合に、最大300万円、大規模半壊で最大250万円の支援金が支給される制度である。
ところが、制度の対象となるには、全壊した戸数が1市町村で10戸以上の場合などの要件が必要となってきている。そのため、3年前の台風12号・15号では、全県で合わせて全・半壊6棟、昨年の淡路島地震の際には、淡路島3市で全壊・大規模半壊が11棟などの住家被害が発生したが、法の適用にならず、災害援護資金20万円の支給などしか受けることができなかった。
私たちは、県に独自支援を求めたが、そのときは実現しなかった。
今回の台風、豪雨災害では、法の適用がなかった自治体の被災者に対し、淡路島と宝塚市であるが、県は独自に全壊で最大150万円を支給する制度を作ったが、今回、支給を決めた理由は何か、お聞かせ願いたい。
■復興支援課長(亀井浩之)■ このたびの8月豪雨災害では、丹波市が被災者生活再建支援法の適用となった。生活再建支援法の法支援金については、大規模半壊以上でないと対象にならない、委員ご指摘のとおりである。また、丹波市以外の被災市町は対象とはならないということがあり、これらのバランスを考慮して、法支援金の支給対象とならない、全壊、大規模半壊のもの、また、対象地域でも半壊、損害割合10%以上20%未満については支給の対象にならないということなので、これらの世帯に対し、県独自の被災者生活再建支援金を支給することとしたものである。
■ねりき恵子■ 県独自の支援金を作っていただいたのは非常にありがたいことだと思っている。けれども、法の適用があったからだということで、バランスを考慮したという点が一番のネックだと思う。私たちは、どんな災害を受けても、例えば、1戸だけが大規模半壊があったとしても、被害を受けたお宅の住宅再建をしていくという課題には変わりがないと思っている。今回、法の適用があった丹波市では、最大300万円、適用のなかった宝塚市、淡路市では県の制度で最大150万円と、受けられる制度に差が当然出てくる。均衡というのであれば、この法の適用のなかったところにも国制度並みに300万円の支給を決めるべきだと思うが、その点についてお聞かせいただきたい。
もう1点、この問題の根本的には、法の改正が必要だと考えている。法の戸数要件をなくして、1戸であっても適用を受けられるようにすべきだと、根本的には考えるが、法改正を待つまでもなく、県として被災者支援の拡充を行うべきだと思っている。例えば、昨年の淡路島地震であるとか、その前の台風被害であるとか、国の支援金の対象とならないような被害が起きたときにも、県の今回のような独自支援をすべきだと思うが、この点についてお答え願う。
■復興支援課長(亀井浩之)■ 被災者生活再建支援法については、自然災害によりその生活基盤に著しい被害を受けた方に対し支援金を支給し、その生活の再建を支援し、住民の生活の安定と被災地の速やかな復興に資することを目的としている。被災地の復興ということを大きな目的として、被災者生活再建支援法については、大きな災害を受けた場合に、被災地域がかなり弱ってしまうということに着目して制定した法律である。
したがって、市町村では、先ほど申されたとおり、全壊が10世帯以上などの大規模災害において、全壊、大規模半壊など大きな被害を受けた方を支援対象としており、支援法のうち2分の1を全都道府県の拠出により賄うこととしており、本県についても3回にわたり多額の拠出をしている。
また、本県では、阪神・淡路大震災を教訓に共助の仕組みとして創設した共済制度がある。先ほどもご質問あったが、住宅再建共済制度の加入者であれば、全壊・再建で法支援金を上回る600万円を支給されることとされている。共済については、半壊の方にも、再建等をする場合に600万円を出すという形で、非常に有利な制度として制定をしているものである。
被災者生活再建支援法及び県独自の取り組みである住宅再建共済制度を車の両輪として、被災者支援を行いたいということが本県の基本的な考え方である。
このたびの県単支援金の支出については、一部地域、丹波市で支援法適用が行われたこと、県独自の取り組みとして共済制度を行っているということ、また他府県の動向等を総合的に勘案の上、決定したものであり、ご理解いただきたい。
法律については、先ほどもご説明の中で一部申し上げたとおり、大規模な災害について、被災地域を救うという目的でやっているので、本県もそれに対して拠出をした。
繰り返しになるが、本県の独自の取り組みとして共済制度、非常に有利な取り組みとなっているので、こちらを推進していくことで600万円という金額のものを確保できるということで、こちらの方を推進しているということである。
■ねりき恵子■ 被災地の復興というのは、非常に重要だと思う。大規模であればあるほど、課題があると思うが、昨年の淡路島の地震でもかなりの被害があったと私たちも記憶をしている。また、被災をされたお宅にしてみれば、同じ思いをして復興していかないといけないということがあると思うので、ぜひ県独自支援制度を作っていただきたいと思う。
フェニックス共済を私たちは否定はしていないが、やはり公的支援として、県の独自支援をすべきだという立場である。
今回のことに関連して、全体的に災害が起きているので、内閣府で被災者支援に関する検討会が行われていると思うが、ここに県独自に一般的な制度として被災者生活再建支援法と同程度の支援を行う制度を持っているのが、全国的に16府県ある。そして、今回京都府が8月豪雨災害の支援策として、適用外地域に全壊最大300万円、大規模半壊250万円、半壊150万円、床上浸水50万円の支援金を市町とともに支給して、これを恒久的制度とすることを発表された。
内閣府の会議でも、議論中であるが、現行の支援法の対象にならない規模の災害に対しては、都道府県が制度を作るのがよいのではないかという方向が示されている。
私は先ほど来申し上げているように、法による要件緩和も行われるべきだと思う。被災者が生活を立て直すことができてこそ、地域が守られるという、この阪神・淡路大震災の教訓からも、法改正を待つのではなく、県として率先して行っていただきたいと思う。また、法の適用外の地域への支援と法の適用外の被害、例えば半壊や一部損壊、浸水への支援を含む恒久的な制度を作ることを改めて求めるが、いかがか。
■復興支援課長(亀井浩之)■ 委員が今おっしゃられた件で、全国で16団体ということであるが、内容的に見ると、2団体が上乗せで、あとは一部支援法が適用になったときにやるということで、300万円まで上げているのを含めて16団体ということである。逆に言うと、ほかの部分については、上乗せしていないということと、それから内閣府の検討会で、特に議題になっていたのは、竜巻災害等のような形のもので、発生したときに、これも支援法の適用にすべきではないかということについては、本県も全国知事会と同様の意見であり、そういうことを申し上げている。
学者においては、それはすべきでないという意見もあるが、兵庫県も委員として参画しており、その辺については要望しているところで、特に同一対応、竜巻のような、一部が支援法が適用になったような場合については、すべきだということは強く働きかけていきたいと思っている。
それと併せて、独自の取り組みとして、自助・共助・公助ということで、共済制度を推進しているので、そういう取り組みの中で、被災者支援についてはやっていきたいと考えている。
■ねりき恵子■ あくまでも共済制度が基本だということであるが、ぜひ公的支援をどうしていくかという点で、共済ではなく、独自支援を考えていっていただきたいということを要望して、次に移る。
被災の問題で、災害のたびに中小業者など、生業を再建するための支援が融資制度しかないことが問題になってきている。今回の災害でも、店舗などが大きな被害を受けて、いまだに営業を再開できず、生活の糧が失われている状態なのに、改修のための費用が重くのしかかっている被災者も出ている。
災害救助法では、生業に必要な資金、器具または飼料の給与、もしくは貸与という規定があるにもかかわらず、給与ということは行われていない。
一方、生活再建支援法は、住家被害に着目して支援金を支給する制度なので、店舗や工場、事務所が被害を受けても、支援金を受けることはできない制度のはざまに陥っている。生活と生業が一体となっているような被災者の場合、生活再建には生業再建の支援が必要だし、そのことが地域の復興にもつながると考えるが、県のこういったところへの支援のお考えはいかがか。
■復興支援課長(亀井浩之)■ 被災者生活再建支援法において、住宅と店舗が一緒になっているような店舗兼住宅の場合、住宅部分が全壊等の被害と認定されたときは支援の対象となり、このたびの単独の支援金についても、基本的に支援法と同じような扱いにしているので、同様の取り扱いとしている。
なお、今ご質問の生業に係る施設・設備への支援を盛り込む被災者生活再建支援法の改正には都道府県の合意形成が不可欠であるが、知事会の危機管理・防災特別委員会での検討もされていない状況である。
■ねりき恵子■ ぜひ兵庫県からも声を上げていっていただきたいことを要望して、次に移る。
長期的できめ細かな被災者支援についてであるが、丹波市での被害は、人的被害こそ少なかったが、土砂の流出量は広島の災害と同程度と言われている。復興には長い時間がかかると見られているが、先日、私も現地に何回か行っているが、その中で、被災に遭われた方が戻ろうか、自宅を再建しようか迷っていたが、支援金の支給が適用され、生活のめどが立ってきたので、やっぱり戻ろうかと迷っているという声も聞いた。しかし、生活ができるようになるにはまだまだの状況である。集落全体で考えても、集落に戻ってこれない人もいるのではないか。これから集落の維持がどうなっていくのか心配だという状況もある。
9月末に行われた丹波市への支援を考える会合では、新潟中越地震の被災地と似ていると、住宅だけでなく田畑を含めた生活環境の復興が必要という指摘があったそうだが、大事な指摘だと思う。特に、中山間地での被害では、個人の住宅再建と一体に田畑などのなりわいや集落としてのコミュニティを再生させることが重要である。
例えば、現地で見てきた訳だが、集落の人たちのほとんどが檀家であるお寺が本堂をはじめ、土砂に潰されて全壊された。宗教施設なので、当然公的補助はなく、檀家も皆さん被災をしているので、再建に頭を悩ませている。もちろん、宗教施設であるが、同時に集落のコミュニティが成り立つために不可欠な存在でもある。
あくまで一例であるが、こういう直接的な支援制度の枠に入らなくても、地域として存続できるためのきめ細かで長期的な支援が必要だと考える。
一つの手だてとして県も出資をして、復興基金などを作り、そうした支援を継続して行っていくことが有効ではないかと考えるが、県のお考えをお聞かせ願う。
■復興支援課長(亀井浩之)■ 災害からの復興を目的とする復興基金については、これまで阪神・淡路大震災、ご指摘の新潟県中越大震災、東日本大震災などの大規模災害の発生時に国の交付税という財源を活用しながら設置されているものである。
そのため、今回の8月豪雨災害については、阪神・淡路大震災等、過去の大規模災害と同様の復興基金の創設については、困難ではないかと考えている。
豪雨対策に当たっては、過去の災害対策を踏まえた必要な支援策をこのたび県会でも成立させていただいた9月補正予算に提案させていただいたところであり、今後とも被災者の生活や住宅の早期再建のため、全力を挙げて復旧・復興対策を推進していきたいと考えている。
私学助成について
■ねりき恵子■ いずれにしても、ぜひ制度の拡充、そして制度のはざまになっている人たちを救うような支援の制度を拡充していっていただきたいという要望をして、次の質問に移る。
次は、私学助成についてである。
私立高校の学費負担軽減の観点から、高校授業料軽減補助について伺う。
私学授業料軽減補助の決算額の推移を見ると、平成21年度は11億2,700万円だったものを国の支援金制度が始まった平成22年度には6億3,700万円と半減させられてしまった。国が充実した分、県が予算を減額しなければ、もっと私立高校の学費軽減策が充実できたはずである。
私立高校の学費負担軽減について、今年度の新入生から低所得世帯の高校生には、国の就学支援金が増額されることとなった。これによって、学費の負担軽減が少しは前進すると期待されていたが、県が上乗せを充実しないために、国制度と合わせても支援金で年収250万円未満世帯で授業料をカバーできるぐらい、それ以上の世帯では授業料にさえ届かないというレベルにとどまっている。
国が増額をした分、生保世帯では、県の補助額を3万8,000円減額、390万円未満世帯では1万円の減額、590万円未満世帯では3万円の減額などとなっているところである。
県内の私学の授業料と施設整備費などを含めた学費は、約80万円で全国的に見ても第4位に入るほど高くなっている。奨学金を目いっぱい借り、高校卒業時に数百万円の借金ができている。納付時期になると、定期預金を解約するなど、経済的負担はまだまだ思いのが実態である。
ある学校では、2年生の修学旅行で、経済的理由で不参加の生徒が290人中、約30人もいるというお話を聞いた。授業料のみならず、学校生活全体を支援することが教育的配慮ではないか。授業料以外の学校納付金に対する減免制度は、今年度4県が新設し、24府県で実施されている。類似県で平均学費も兵庫と近い埼玉県では、10万円の入学金補助や20万円までの施設整備費補助も県独自支援で行っている。
国の文教科学委員会の中で、国務大臣も今回の見直しに当たっては、授業料減免制度の充実だけでなく、その他の経済的負担の軽減策についても併せて考慮しなければならないと考えていると答弁された。国の制度の趣旨からいっても、まだまだ重い私立高校学費の経済的負担を解消するため、県の授業料軽減補助の減額はやめ、授業料以外の学校納付金に減免の対象を広げるなど、充実するべきと考えるが、いかがか。
■私学教育課長(小川佳宏)■ 本県の授業料軽減補助は、本年度の制度改正で、改正後の国の補助と合計すると、生活保護世帯及び年収250万円未満の世帯では、37万9,000円となり、授業料の実質無償化を図ったところである。
年収350万円未満の世帯では従前の22万8,200円から約5万円増の27万7,600円、年収570万円未満の世帯でも従前の14万8,800円から約3万円増の17万8,200円となるよう措置したところである。
本県の補助は、国の補助と同様に授業料を対象としており、その他の学校納付金については、本年度より創設された奨学給付金のほか、入学資金貸し付けや奨学資金貸し付けにより支援を行っているところである。
県単独予算は減額されているとのご指摘であるが、補助額は、低所得者層に重点を置き充実しており、保護者負担の軽減と生徒の就学機会の確保が一層図られるものと考えているところである。
■ねりき恵子■ 今、貸付金とか、いろいろおっしゃったが、国は都道府県に対して7月に本制度改正が確実に生徒・保護者の経済的負担の軽減策等の一層の拡充をお願いするという通知を出していると思う。国の制度の趣旨を生かすべきだと思う訳であるが、高校授業料無償化を廃止して、就学支援金の支給に、公立・私立とも910万円の世帯収入制限を設けることと引き換えに、今回の拡充が行われた訳であるが、都道府県の制度を見ると、全国的には世帯収入の上限は、5都府県が910万円未満と国の制度並みで、750万円未満としているのも12県に増えている。兵庫県は逆に、平成25年度年収590万円未満まで対象であったが、今年度は350万円未満までに引き下げられてしまった。
新行革プラン実施前の平成19年度までは707万2,000円までであった。せめて県の授業料補助額がゼロの世帯をなくして、国制度の910万円未満まで対象を広げるべきと考えるが、いかがか。
■私学教育課長(小川佳宏)■ 授業料軽減補助については、国は本年度から所得制限を導入し、年収910万円以上の世帯を対象外とした上で、生活保護世帯や年収250万円未満の世帯等の低所得者層への支援に重点化を図ったところである。
また、今年度より生活保護世帯と年収250万円未満の世帯の生徒を対象とした奨学給付金制度も創設されており、低所得者層への支援が一層拡充されているところである。
こうした見直しにより、年収250万円から年収570万円までの世帯においても、改正後の国の補助だけで、従前の国と県を合わせた補助額以上となることを踏まえ、本県の補助についても低所得者層に重点を置いて拡充を図ったところである。
■ねりき恵子■ 国の支援制度金が増えたので、1人の生徒が受け取る金額は増えているというのは実態であるが、私はその分を県が減らすのでなく、増やしていただきたいと言っている。ぜひ、それを増やしていただき、更に拡充をしていっていただきたい。そういった観点から県内と県外の生徒に対して、差を今年から設けてしまった。これは、教育の中に格差を持ち込むものだと私は思う訳だが、平成25年度の私立高校の在籍者は8,031人で、県外通学者は2,418人である。
授業料軽減補助対象の割合は県内通学者が31.26%、県外通学者は30.11%で、経済的な状況はほぼ変わりがない。県内、県外で区別することなく授業料補助を軽減すべきだと思うが、いかがか。
■私学教育課長(小川佳宏)■ 県外の私立高校通学者への補助については、本県私立高校への通学者に対し補助を行う隣接府県に所在する私立高校への通学者には、相互主義の観点から、従来どおり県内通学者の2分の1の補助を継続することとし、それ以外の府県に所在する私立高校への通学者には、県内通学者の4分の1の補助を実施することとした。
これは、現在、少子化の進展などにより県内私立高校には生徒の受け入れ余力があること、また県の補助については、改正後の国の補助だけでも、従前の国と県を合わせた補助額以上となることを踏まえたものであり、県内外で補助に一定の差を設けることは適切なものであると考えている。
■ねりき恵子■ やはり、県内と県外を分けるということ自体、問題があると思っている。
特に、阪神間、私が住んでいる宝塚などは交通の事情などからも、大阪府の私立高校に行く生徒も大変多い中で、ぜひそういった格差をなくしていただきたいと思う。
もちろん、県内私学の育成という観点は非常に重要だと思うが、1人の生徒の経済的状況を改善をしていくという観点に立って、私学助成の拡充を求めて、質問を終わる。
ありがとうございました。
|