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2013年度予算特別委員会産業労働部審査 きだ結
2013年3月8日

兵庫県経済とモノづくり産業について

■きだ 結■ 日本共産党県会議員団のきだ結である。
 私からは、まず兵庫県経済とものづくり産業についてお聞きする。
 今、兵庫県内の労働者や中小業者の実態は大変深刻なものになっている。例えば神戸経済を100年以上にわたって支えてきた基幹産業の三菱重工神戸造船所が、昨年、造船建造事業から撤退をした。労働者や下請業者は、事業の継続を強く求めたが、撤退は強行されてしまった。
 神戸の造船を残そう連絡会が昨年行ったアンケートによると、下請事業に従事していた労働者は、造船建造に係る組み立て、溶接関連だけで約400名だったのが、今、約30名にまで激減し、塗装、艤装などの他の業務を含めれば、多くの労働者が仕事を失った。必死の努力で従業員の仕事確保に苦しんでいる下請関連業者であるが、三菱重工からの仕事が激減して全くなくなったりしている。多くの人が商船建造を復活してほしい、どんな仕事でもよいから発注してほしいと願っている。
 また、川崎重工の機械部品を作る下請業者も、仕事をとるため設備投資をしたのに、その機械を使う仕事が来ない、単価が安すぎて見積書を作るのに本当に苦労する、こういったこれまでと同じような単価では仕事がとれないといったような悲鳴が上がっている。
 労働者や下請業者を物扱いにする企業は、技術者の流出にもつながり、企業の競争力も失うことになり、企業自身も経済利益を失うことは明らかである。人を大切にしない企業では持続的な経済発展はないということである。また、優秀な技術者のリストラなどは、兵庫の強みであるものづくりにとっても大打撃になるのではないか。
 そこで、こういった大手企業の撤退や縮小等の事態になりそうだと分かったときや、起こったときに対して、県はやはり雇用や地域経済守れと、しっかりと企業にも働きかけるべきだと思うがいかがか。

■工業振興課長(松原昭雄)■ 経済を支えていくためには、大企業のみならず、大企業、下請企業が相まって進んでいかなければならないということは論を待たないところであると思っている。そのために下請企業、特に下請の中小企業の振興を図るために、下請中小企業振興法というのが制定されている。その中には、その法律に基づいて、各都道府県に下請企業振興協会を設置することになっている。
 本県においては、ひょうご産業活性化センターがその協会に位置づけられており、各種の相談、取引の紹介やあっせん、あるいは苦情処理のようなものも行っている。
 また、先ほどいわゆる神船のお話が出てきたが、神船については、商船を撤退するというのを、6月であったので2年前に発表した。そのときに地元の行政機関、もちろん神船もそうであるが、神戸運輸監理部、労働局等と連絡会議を立ち上げて、今までに10回近い会合をしてきている。その中で神船については、三菱重工の神戸造船所のみならず、三菱グループ全体を挙げて、三菱電機やキャタピラーの仕事もあっせんをしていくという相談体制を構築していくことを今までしてきており、それに伴って非常に大きな打撃を受けるという苦情などは聞いていないところである。

■きだ 結■ 大打撃を与えるような苦情は聞いていないとのことであったが、今、アンケートも紹介したように、造船があっての地域経済だったので、やはり関連の、周辺の商店街等からすると、やはり致命的なのである。労働者の方にとっては、違う職種に紹介するとか、いうのもあるかもしれないが、下請の方はそうはいかないので、こういうアンケートの声もしっかり受けとめていただきたい。また、いろいろ窓口を設けているということをおっしゃっていただいたが、県としてはこういう動きに対しては、しっかりと強く物を言うことを求めていきたいと思う。もう一度、ご答弁いただけるか。

■工業振興課長(松原昭雄)■ 先ほども申し上げたように、大企業がよかったらそれでいいのではなくて、下請の中小企業、大企業ともに進んでいかなければならない。特に兵庫県下には製造業の事業所が約1万ある。大半は中堅・中小企業であるので、そこが力をなくしては何もならないと思っている。
 基本的には委員のおっしゃられたことは民民の話になるので、公共としてどこまでのことができるのか、ということはあるが、大企業も社会的責任のもとにいろいろな経済活動を行っている。兵庫工業会という団体とも密接な関係にあるので、それらを通して、いわゆる下請いじめのようなことがないようにしたい。また、大企業としてどのようなことを取り組んでいくのか、大企業としての役割や、下請があっての大企業なのだということについてや、先ほど申した下請企業の振興法の趣旨にのっとって仕事を進めていただきたいということについては、兵庫工業会とも意見を一にしているところである。

賃上げの促進を

■きだ 結■ 民民の関係であっても、県民生活に直結することであるので、県としては態度を抜本的に転換して、やはり十分に言うべきことは言うことで頑張っていただきたいと思う。
 次に、県民生活を底上げするために欠かせない賃上げについて質問する。
 予算委員会の1日目にも触れたが、大手企業に対しては、ため込んだ内部留保を活用して賃上げを図るように働きかけるべきだと考える。例えばパナソニックであれば、3兆2,198億円、三菱重工業は1兆1,873億円、川崎重工業は3,687億円の内部留保がある。労働者や下請業者に利益を還元する力が十分にあり、そうすることが企業の発展にもつながるし、ひいては兵庫県経済の好転にもつながる。
 そこで、県として県民の賃金をどうやって増やしていくのか、県として県民の雇用者報酬、今、下がり続けているので、これをどこまで、いつまでに引き上げるのか、こういった目標と戦略を持つべきではないかと思うがいかがか。

■労政福祉課長(境 照司)■ 兵庫県経済は、一昨年の東日本大震災や急激な円高、また、欧州・中国の景気減速などに直面し、厳しい状況が続いてきた。
 一方、発電用機械や自動車生産に関連する部品産業で持ち直しの兆しも見られ、1月の有効求人倍率も4年3ヵ月ぶりに0.7倍を超えるなど回復が進みつつあり、明るさが見られるようになっているところである。今春闘では、まだ現在、春闘の途中ではあるが、ベアや一時金に前向きな回答をする企業についての報道もあるところである。
 労働基準法では、賃金水準を初めとする労働条件は、労働者と使用者が対等な立場において決定すべきものであるとされているところである。この原則に基づき、賃金が決定されるべきものと考えているところではあるが、そのために、労使が円滑な話し合いに必要な情報提供を県としても適宜行っていきたいと考えている。よろしくお願いする。

企業立地補助金のあり方の見直しを

■きだ 結■ 今の例はローソンとかセブンアイの話かと思うが、こういう企業の自発性もそうであるし、先ほどの協議をするということもあったので、県としてどういった企業にどういう働きかけをするのかというのを、ぜひ考えていただきたいと思う。
 次に、企業立地補助金の問題である。
 来年度予算案を見ると、産業労働部局の一般会計予算は、金融関係を除けば74億円程度で、このうち企業立地は16億6,400万円となっている。大変重点を置いた政策と言えると思う。
 これまでの企業立地補助を合計すると、平成14年から平成23年の間に約169億円が支払われ、そのうち約98億円がパナソニックに出されている。率にして実に58%となっている。部品など関連する会社なども入れると63%になる。まさにパナソニック関連のための補助金と言われても仕方がないと思う。
 昨年、パナソニック尼崎工場は、第1工場と第3工場を閉鎖して12億5,700万円の補助金を返還した。これは県民の声に押されたもので、本当に当然のことだと思う。兵庫県は、これまでパナソニックに百数十億円もの莫大な補助金を出して、来年度以降も支給する予定であるが、今のような閉鎖、撤退ということが起きているが、この誘致、そしてこの立地補助は失敗だったという評価をすべきじゃないのかと思うがいかがか。

■産業立地室長(坂田昌隆)■ 立地補助金のあり方についてである。
 まずパナソニックの尼崎工場であるが、先ほどご指摘のとおり、昨年から生産休止をしている。ただ、この尼崎工場全体では、これまでに5,000億円近い設備投資がある。また、休止後も第2工場を中心に約1,000人の従業員が雇用されていると承知している。
 また、尼崎市内の電子部品、デバイス関係の製造品種価格が工場稼働前と比べると9倍以上に増加しているというデータもあるので、そういう意味では間違っていたということは思っていない。
 一方、立地補助金については、これまで先ほどご指摘があった169億円であるが、96社に対して支援をしている。これを含めて補助金以外の支援も含めて587件の企業進出を支援してきたところである。この96社のうち約3分の2は中小企業である。これらの企業は、相当の効果を及ぼしていると考えているので、そういう意味では、この立地補助金については一定の効果があったものと考えている。

■きだ 結■ パナソニックへの補助金は一番大きいので、これをお聞きする。一定の効果があったとのことであるが、パナソニック尼崎工場で、第1工場と第3工場の生産停止によって、常勤の従業員数だけで、平成21年3月末には2,799名おられたのが、平成24年3月末には984名まで、3分の1まで減っている。県当局は当初つかんでおられなかったので、尼崎市議会で我が会派の議員が質問して、市当局が答弁して分かったことであるが、こういったことを繰り返していると、やはり逆に地域経済を疲弊させるのではないかと思う。
 県は来年度、新たに産業集積条例改正して、市街地の低未利用地の高度利用や工場跡地を活用するために企業立地補助制度、これまた新たに作ろうとされている。中小企業にも利用できるものだと説明されるが、低未利用地の高度利用では、要件見ると3,000平米以上、そして工場跡地再生促進では設備投資が10億円以上、これを考えると、やはり体力のある、一定規模以上の企業しか対象にならないのではないかと思う。こういったことがパナソニックのような、私たちは失敗事例だと思っているので、繰り返してしまわないかと懸念している。
 企業立地補助金のあり方については全国的にも問題となっており、報道でも効力が薄い、曲がり角、という報道もなされているところである。また、新しい企業を呼ぶことばかりでなくて、地域の経済圏を拡充する視点も重要だと考える。これは一例であるが、例えば三重県では、既存企業が、今ある企業が雇用や投資で地元にどれくらい貢献したか、これを数値で評価をして、それをポイント化して、たまったポイントに応じて補助額を決定するという制度を設けているそうである。
 今のは本当に一例であるが、現在のような立地補助、総額を決めて渡すというのではなくて、抜本的に見直して、既存の企業が地域に再投資することを促すための補助制度などを検討してはどうかと思うがいかがか。

■産業立地室長(坂田昌隆)■ 立地補助金については、先ほどもご指摘あったように、このたびの産業集積条例の改正に伴って、補助要件や対象業種の一部を緩和して、中小企業なども含めて、より多様な企業の立地が支援対象になるように見直したところである。
 今後とも、今、ご指摘のあったことや、経済環境あるいは企業の投資動向も踏まえて、必要に応じて、今後とも見直しを行っていきたいと思う。

■きだ 結■ ぜひ検討していただきたいと思う。
 時間の関係で最後は要望にさせていただくが、今、県は経済成長戦略として、スーパーコンピュータ京やSPring−8、X線自由電子レーザーSACLA、再生医療など、科学技術基盤の産業利用を促進する施策、これに取り組んで、関西イノベーション特区構想を進めておられる。研究開発そのものを推進することは大変重要だと考えるが、それらは本来、国がやるべきことだと思う。例えば神戸市の医療産業都市構想に多額の市費をつぎ込んでいるが、地域に根づいた産業として発展することになるのか、非常に疑問に思っている。今回の県が行おうとしていることが、とりあえず税金を入れてみるといったばくちのようなことにならないように、しっかりと見極めていただきたいことを要望しておく。
 兵庫県経済の発展は大企業に任せる、お願いするというだけの経済対策でなくて、安定した雇用と、中小企業の仕事を増やして富を得る対策に軸足を置いていただくことを求めて質問を終わりたいと思う。

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