私立高校生の授業料の軽減を
■杉本ちさと■ 早速質問に入る。
公立高校の授業料の実質無償化が実現したが、約4割の高校生が通う私立高校の学費負担は重く、これをどう軽減するのかが大きな課題になっている。そのよ
うな中で、先日、私たちのところに、失業したため授業料を滞納しており、このままでは高3の子供を卒業させられないと言われていると相談が寄せられた。
昨年からこうしたケースを救済するために、国が社会福祉協議会を通じて貸し出される生活福祉資金の教育支援資金を滞納授業料に充てることができる制度を
作っているが、この方はご存じなかったようである。これは新たな借金になるので十分な制度とは言えないが、急場を救うために改めて徹底が求められている。
併せて、県として各私立高校に経済的理由で卒業できない子がいないかどうかをつかんで対策をとっていただきたいと思うが、いかがか。
■藤森泰宏教育課長■ 本県では、経済的理由により授業料などの負担が困難な私立高校生に対する支援として、国の就学支援金に加えて、これまでから県
独自の授業料軽減補助や家計急変時における授業料軽減臨時特別補助、それから奨学金貸与事業、さらには各学校が実施する奨学金に対し利子補給などを行う就
学支援事業などを実施している。
また、ご指摘の生活福祉資金については、2月4日に厚生労働省の記者発表を受けて、2月9日には、いち早く各私立高等学校あて関係資料とともに通知し、周知を行っている。
各学校においては、県の各支援制度とともに、支援が必要な生徒を把握して、周知が図られていると考えている。今後、今回のような特例的な取り扱いがなされた場合には、各私立高校に対し速やかに連絡するとともに、周知徹底を図っていきたいと思っている。
■杉本ちさと■ 昨年、私学にも国の就学支援金制度ができ、県単の授業料補助と併せて一定の補助が行われている。しかし、先日、文部科学省が発表
した調査によると、兵庫県では初年度納入金の平均額が85万6587円と、全国第3位の高さである。一方、国と県の制度による補助単価は、生活保護世帯
で約36万円、所得250万円以下の家庭で約31万円、低所得の家庭で補助があっても50万円以上の負担が残るという状況である。
私立学校教職員組合連合の調査によると、昨年9月末で調査した9校で171人、1校当たり19人が授業料を滞納しており、経済的理由で退学が余儀なくされた子もいた。まだまだ家にお金がないために高校へ通い続けられない子もいる状況である。
ところが、県は新行革で県単独の私立高校授業料補助の所得制限を強化し、今年度は県単独の予算を前年度の12億円から6億円に減らしている。また、県は
補助を授業料相当分しか見ていないが、全国的には、京都や広島では低所得者には納付金全額を補助する制度にしている。財政難だからと言うが、2009年度
に、国が授業料減免事業支援の臨時特例交付金を設けて、県も基金として26億円を積んでいる。新年度限りの事業で、この取り崩し額は、現在1億7000
万円程にすぎず、このままでは来年度終わりに20億円程を国に返すことになってしまう。
経済的理由により修学困難な生徒の教育機会の確保が交付金の目的であるから、活用して、対象や補助額を広げるなど、授業料補助を拡大していただきたいと思うが、どうか。
■藤森泰宏教育課長■ 先程委員から納付金85万円というご指摘があった。これについては、授業料と、それ以外に施設設備費とか教育充実費がある。授業料だけではないということをまず申し上げたい。
それと、兵庫県としては、授業料軽減補助については、授業料を対象としている。京都などは、確かに他の納付金も対象にしているが、私どもとしては、国の就学支援金が授業料を対象としており、そういったことも考慮して、授業料を対象にしている。
私立学校の授業料軽減補助については、今年度から国の就学支援金制度創設に合わせて、低所得世帯に重点化した見直しを行った。
具体的には、県内の私立高校生に対して、生活保護世帯を含む年収約250万円程度未満の世帯に対して、全国あるいは県内の平均授業料までを無償化を実現するとともに、それ以外の世帯についても、国の就学支援金の逓減割合に応じて、県単独で軽減補助措置を講じている。
このことにより、全ての世帯において、従来よりも手厚い授業料軽減が図られている。
なお、補助単価については、従来から公立高校の授業料の改定に合わせて、おおむね3年ごとに見直しをしてきていること、それと国の就学支援金の支給単価も3年後をめどに見直すこととされていることから、来年度についての補助単価は据え置いている。
なお、ご質問の授業料軽減補助の財源として、高等学校授業料減免等事業基金を活用することについては、国において使途要件が定められている。また、この
基金が平成23年度までの時限的措置であること、また、制度をもし拡充する場合には、基金から充当する財源と同額の一般財源を別途必要とすることなどか
ら、基金を活用した施策化は困難である。
■杉本ちさと■ それでは何のための基金なのかと思う。先程の文部科学省の調査で、今年度は兵庫県内の平均授業料が昨年 度より6万円以上上がっていて、36万9753円である。すると今の補助単価では生活保護家庭であっても36万円であるから、授業料相当額にすら届かな
いことになる。最低限、せめて授業料相当額を補うよう単価を引き上げるべきだと思うが、この点ではいかがか。
■藤森泰宏教育課長■ 先程も申し上げたように、従来から授業料軽減補助単価については、公立高校の授業料の見直しに伴い、おおむね3年ごとに見直し
ている。それとともに、国の就学支援金の支給単価も、3年後をめどに見直すとされている。そういったことから、来年度については据え置くことで考えてい
る。
公立高校の通学区の拡大でなく、教育条件の整備こそ
■杉本ちさと■ ぜひ見直していただくことを要望して、次に、高等学校通学区域の問題について質問する。
昨年、検討委員会が中間まとめを出し、現在16ある高校の学校を減らして、教育事務所の範囲程度、つまり7学区程度に再編、拡大する方向で検討されてい
るが、これまで何度も指摘したように、この検討委員会は県教委が指名した委員で構成され、県民の傍聴もできない、いわば密室で審議が進められている。そう
いう検討が行われていることさえも、多くの県民にとっては知らされていない。そういうもとで、ことし、5ヵ所で説明会、意見交換会が行われた。県の資料で
も、いずれの会場でも学区を拡大することに対する不安の意見が多かったということである。
各地の議会で意見書が出され、但馬地域では3市2町の長から要望書が出され、PTAが1万人の署名を集めるなど、学区拡大に対して、反対、慎重審議を求
める声が広がっている。学区を拡大する方向を推し進める状況にはないと考えている。また、新年度予算では、通学区域についてパンフレット作成の予算がつい
ており、学区拡大を前提にしたものを作るのではないかと思うが、県民に結論を押しつけるのはやめるべきだと思うが、どうか。
■大石正勝高校教育課参事■ 高等学校通学区域検討委員会から、昨年4月、生徒にとって望ましい選択肢を確保するとともに、魅力ある高校づくりをさらに推進、発展させるためには、学区を統合し、通学区域を広げる必要があるという中間まとめを受けた。
その後、5月には学校関係者に、その中間まとめの説明会、ことしの1月には、先程もあったように、学校関係者に加え、一般公募した県民の皆様へ対して、通学区域の見直しに関する意見交換会を開催した。
また、その後にはインターネット、ファクス等による意見募集等も行った。検討委員会においては、これらの県民の皆様からの声も踏まえつつ、これまでの協
議の中から浮かび上がってきた現行の通学区域の課題等を整理しつつ、生徒が学びたい学校が選択できる環境を整える観点での検討を行っているが、今後も各議
論の進捗状況に合わせてパブリックコメント等を実施するなど、県民の皆様の意見を聞きながら、慎重に検討していきたいと考えている。
■杉本ちさと■ 最後になるが、学区拡大など、高校改革の押しつけではなく、経済的理由で学べない子が1人も生まれないような条件整備こそ必要だということを指摘して、質問を終わる。ありがとうございました。 |