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2010年(平成22年)度決算特別委員会企画県民部審査 杉本ちさと
2011年10月11日

台風12・15号の被災者救助と支援について

■杉本ちさと■ 台風12号、15号による被災者支援について質問する。
 近畿、兵庫県に大きな被害をもたらしたこの台風であるが、姫路市でも台風12号で浸水被害をあちこちで受けている。姫路市北部のある地域では、内水があふれて家屋に浸水し、夜中に胸のあたりまで水につかって避難した人や、消防団の人に背中におぶってもらって家から避難所へ行った高齢者などもおられた。90歳でひとり暮らしのおばあさんのお話をお聞きしたが、娘さんが夜中の11時頃に遠方から車で迎えに来てくれて娘さんの家に連れていってもらったまでは良かったのであるが、翌日、家に帰ってみると、家の中が床上30センチぐらいまで浸水して、何もかも泥だらけになって、それを見て仰天して倒れてしまったと言われていた。畳も布団もたんすの中のものもみんなぬれてしまったと言われていた。
 また、市内の南の方のある地域では、飲食店の方が営業用と居住用と共用している厨房が浸水してしまって被害がたくさん出ているのに、住宅被害になるならないで役所ともめたと言っておられた。下水から雨水があふれて、あたり一面の住宅や店舗が浸水した。
 県の9月16日時点、これが最新データとなっているが、被害のまとめでは姫路市は床上浸水293件、床下浸水862件となっている。しかし、これは個々の住家被害の判定をした数字ではない。国のマニュアル、災害に係る住家の被害認定基準運用指針に基づく判定が姫路市も含めて市町でどのくらい行われているか、把握されているのか。

■災害対策課長(坂本誠人)■ 現在、市町が住家の被害調査を実施している。台風第12号と第15号を合わせて、これまでに約5.500件の調査を行い、その結果については、現在、取りまとめ中である、このように聞いている。

■杉本ちさと■ 取りまとめ中ということであるが、姫路市では一定の調査がされて、9月28日発表で半壊が7となっている。兵庫県のデータにまだ反映されていない訳であるが、きちんと被害判定調査が行われれば、床上浸水から半壊判定が出ることは、2004年(平成16年)の台風被害、また23号などの連続台風のときに行った判定で貴重な経験をした。そのときに、一定程度、弾力的な被害判定の県独自マニュアルなども作成して、被害の再判定を広範に行った経緯がある。半壊になれば災害救助法の応急修理も対象になる訳である。2004年(平成16年)、2009年(平成21年)の台風災害での応急修理の実績、決算はどのようになっているか。

■災害対策課長(坂本誠人)■ 災害救助法に基づく住宅の応急修理の実績であるが、平成16年度が1733世帯、約5億2800万円、平成21年度が460件、約1億8000万円となっている。

■杉本ちさと■ 以前の災害では災害救助の実施、特に応急修理がこのように広く活用された。県は国への要望書の中で、災害救助について、災害の種類によってあらかじめ国で定めた救助の一般基準によりがたい場合が少なくなく、都道府県知事の裁量の幅を広げて、地域の実情に沿った弾力的な措置を速やかにとれるようにと求めている。そこでは応急仮設の他、民間住宅の家賃補助、住宅の応急修理制度の充実等による救助方法の多様化など、被災者の実情に沿ったより一層弾力的な対策がとれるようにと要望しておられる。
 ところが、今回の災害で本会議での我が党議員の一般質問の知事答弁では、災害救助法を適用として何をするのか、避難所はもう必要なくなっていると言われた。
 先程、指摘したとおり、兵庫県自身が国に要望したような内容で、兵庫県として努力したのか、とてもそのようには見られない。国に要望するのであれば、その立場で県自身が被災者のために努力してこそ国にも説得力を持って働きかけることができるのではないか。その点についてどうか。

■災害対策課長(坂本誠人)■ 災害救助法の適用要件については、一定規模の災害が発生し、かつ被災者が現に応急的な救助を必要とする場合とされている。厚生労働省の見解でも、仮に住宅の被災世帯数が基準の数に達したとしても、単なる床上浸水程度で浸水時間の短い場合には、現に法に基づく救助を要する状態とは言えないとされている。今回の場合、基準被災世帯数に唯一達した高砂市においても、浸水当日の午後には水も引き、避難所も翌日午後には解消し、応急仮設住宅の設置、あるいは救護所の開設など、法に基づく救助を必要とする状況に幸いにも至らなかったということであるので、同法は適用しないということを高砂市とも協議の結果、判断したものである。

■杉本ちさと■ 知事は2004年(平成16年)、そして2009年(平成21年)の台風災害と比較して、当時は被災者生活再建支援法が適用され、支援金が被災者の一部に支払われたので、支援金の対象にならない被災者がいるので、それとのバランスを考慮して、県独自の特別な給付金を設けた。今回は支援法の適用がなく、特別な措置をとらなかったと言われている。
 しかし、今回の台風被害は人数は少なくても、その時点で既に全壊や半壊が出ていた。実態に沿った被害判定を行えば、さらに半壊なども広がる可能性が大きいと思う。そういった被災者に対して、2004年、少なくとも2009年並みの支援は必要だと私たちは要求した。全壊にも、半壊や床上浸水の人に対しても県独自に支援を行うべきという問題提起をしたが、法適用がないからしないというのが県の姿勢である。国の事情で被災者を救済しないということになる。それでは被災者に寄り添った行政とはとても言えないのではないか。阪神・淡路大震災などを経験した県として、こんな姿勢でいいのか。
 実際に2004年災害のときは支援法も住宅本体が対象になっていなかったが、県独自に本体を補完し、年収や年齢要件も緩和し、全壊100万円、大規模半壊75万円、半壊50万円、床上浸水で損害率10〜20%未満に25万円の上乗せ支援をした。また、それに加えて小規模災害で法適用外になったものにも法基準と同じ水準で県独自支援を行っている。
 こうした対応を振り返ると、明らかに県の施策として後退しているのではないか。

■復興支援課長(高見 隆)■ 被災者の生活再建については、自立的な復旧・復興に向けた自助努力、県民相互の助け合いによる共助、そして、これらを支える公助が相まって実現されることが基本であると考えている。
 今回の災害では、公助として、兵庫県独自の災害援護金の支給や住宅の補修、自家用車、家財の買い替え等を対象とした被災者生活復興資金の無利子貸し付け、住宅災害復興ローン貸し付けなどの公的支援に加えて、共助の仕組みとして創設した住宅再建・家財再建共済制度の加入者等に対しては所定の給付金が支給されることになろうかと思う。
 過去の災害において、県独自の支援金を支給したこともあるが、当時と比較して、被災者生活再建支援法においては、年齢、年収等の要件が撤廃されるなど、大幅に緩和が行われている。また、小規模災害等についても、先程、申し上げた台風第9号の教訓に基づいて家財再建共済制度を設けるなど、被災者、県民の皆さんが自助として選択し得る対応というものも増加しているところであるので、現時点においては、県としてこれらの措置、今回の災害で予定している措置については今回の災害に対応した内容になっていると考えている。

■杉本ちさと■ 共済制度を理由に公的支援が大きく後退するということが、今の現状だと思う。共済制度はあくまで自己責任をサポートする制度である。私は兵庫県の公的支援制度が以前と比べて大きく後退しているという点を、今、指摘している訳である。災害からの復興はあくまで自己責任ということが阪神・淡路大震災で国などから言われてきた。それを住民とともに運動して作り上げてきたのが被災者再建支援法などの公的支援制度である。それを県の取り組みとして拡充する姿勢が現在の県政に乏しいことが残念でならない。結局、床上浸水が多過ぎるので、支援金を出せばお金がかかるからというのが本音ではないか。法適用外の全壊や床上浸水に独自の支援をすると予算が要る。県行革を進める中でこの予算が確保できないことが支援ができない理由なのではないか。

■復興支援課長(高見 隆)■ 先程も申し上げたように、被災者の生活復興というのは、全ての被害、全ての損害を公でカバーし尽くすということではないと考えている。被災者の皆さん、県民の皆さんが自分で対応、努力をする部分を公助、あるいは共助でサポートしていくというのが基本的な県のスタンスである。したがって、現時点においては、全ての被害、全ての損害額を県がカバーするということは非常に難しいのではないかと考えている。

東日本大震災の教訓をうけた、防災計画の見直し、津波対策の強化について

■杉本ちさと■ 被害額の全てを県が補助、支援するということを求めているのではないことはご承知のとおりである。私は以前に行っていた、兵庫県の公的支援制度が共済制度を理由にして大きく後退しているではないか、それではいけないという視点から、今、意見を言っている。きちんとお答えいただきたいと思うが、県の全ての事業に今、県行革が徹底されて、コストカットが迫られている。必要な被災者への公的支援までも、以前の水準から大きく後退させているということ、私は県行革の被害がここにも現れているということを指摘して次の質問に移る。
 次は、防災計画の見直し、特に津波対策について質問をする。
 9月28日、中央防災会議の東北地方、太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会が報告案を出した。そこでは東日本大震災からの教訓として、従前の想定手法の限界を指摘し、被害が想定よりも大きくなる可能性について十分に視野に入れて地震・津波を検討する必要があると強調している。そして、このような地震は東北地方・太平洋沖地震が発生した日本海溝に限らず、南海トラフなど、他の領域でも発生する可能性があるとしている。
 兵庫県の防災計画などもこうした議論を踏まえて見直しをする必要がある。中でも次の指標は重要だと考える。防潮堤などの海岸保全施設等について、これらは設計対象の津波高までに対しては効果を発揮するが、今回の巨大な津波と、それによる甚大な被害の発生状況を踏まえると、海岸保全施設等に過度に依存した防災対策には限界があったことが露呈したとある。そして、住民等の命を守ることを最優先として、どのような災害があっても行政機能、病院等の最低限必要十分な社会経済機能を維持することが必要であると指摘している。このような観点で、災害に強い兵庫県を作っていくために、防災計画などを抜本的に見直すべきと考えるがどうか。

■防災計画課長(村田昌彦)■ 中央防災会議の専門調査会のさきの最終報告において、1000年に1度程度とされている最大クラスの津波に対しては、いわゆる減災の考え方に基づいて海岸保全施設等のハード対策、それらに併せて迅速、確実、的確な避難を中心とするソフト対策、これらを総合的に組み合わせて実施するということとされている。
 この最終報告に基づいて、津波対策の記述が大幅に拡充される形で国の防災基本計画、これの修正も行われることとなる。これらを受けて、県の地域防災計画についても修正を行って、海岸保全施設の強化、そういったハード対策、それに加えて、避難対策などのソフト対策の充実を図っていきたいと考えている。
 さらに社会福祉、社会施設、病院等、これらについてもその整備について、この報告の趣旨を踏まえて地域防災計画の見直しに際しては適切に対応していきたいと、そのように考えている。

■杉本ちさと■ 浸水区域の想定は、今後、大きくなると見込まれるが、現在、役所や病院などの公的拠点施設が浸水区域にあるのはどのくらいあるのか、把握しておられるか。
 また、住民が避難する避難所が浸水想定区域にあるなどの問題点も指摘されている。県内の指定された避難所のうち、浸水想定区域や土砂災害危険箇所等のハザード内に位置しているものは避難所全体の中で幾つあるか。
 また、今後、仮に公的施設などが浸水区域へ移転するといった計画がある場合などは再検討すべき場合もあるのではないかと考えるがどうか。

■防災計画課長(村田昌彦)■ 現在の兵庫県の地域防災計画、この計画に示されている浸水エリアの中には、市町の地域防災計画に基づいて指定されている避難所が存在している。それについては22ヵ所あるということを確認している。
 2倍の想定については、今現在、市町とも連携しながら想定エリアの検討を行っている段階であり、その結果を受けて、今後、避難所についても、その他の施設についても安全性等について確認していくこととしている。

■杉本ちさと■ 報道では、政府が検討している津波防災法案では、都道府県知事が海沿いの低地で甚大な被害が予想される特別警戒区域を指定でき、建物の移転を勧告する権限も認めるとされている。兵庫県下の現状の把握と今後の対策を強く求めたいと思う。
 また、もう1点、これから3連動などの想定地震や対策する津波の高さなどを検討していくことになるが、その高さについても報告書案で、海岸地形や湾の形状によって想定される津波高、浸水高が大きく異なるとも指摘されている。津波工学の専門家である首藤東北大学名誉教授も、講演で、「計算が少し違えば、二、三メートル程度は変わってくる、防潮堤を乗り越えないから大丈夫では安心できない」と言われている。そうすると、例えば想定津波高が3.4メートルで、防潮堤がそれより上回っているとしても、避難が必要ない、大丈夫だと言えないということである。ここなら大丈夫という安心感が危険だということは、岩手県釜石市の経験からも明らかである。ここでは死者・不明者の65%がハザードマップで津波対策想定外の地域であった。結局、津波の高さも実際には想定と変わり得るし、防潮堤がそれより高いから大丈夫というのは危険であり、そのようなところでも対策や避難の体制をとっておくことが今後の地震・津波対策に求められると考えるがどうか。

■防災計画課長(村田昌彦)■ 委員ご指摘のように、海岸の形状であるとか、沿岸部の水深などによって津波の高さというものはさまざまに変わってくるところである。兵庫県においては、従来から浸水予測図の作成に当たっては海底の水深であるとか、海岸の地形の形状、あるいは海岸保全施設、防潮堤の高さ、そういったデータ等を考慮した津波高の想定、それに基づく浸水エリアの想定、そういったことを実施しているところである。
 今後、東海・東南海・南海地震、3連動、あるいは日向灘も含めた4連動、そういった国の震源モデルが示される予定になっているので、これを活用しながら、これまで同様、本格的なシミュレーション、浸水予測図の作成を行って、それに基づいて的確な避難対策を講じていきたいと思う。
 なお、防潮堤については2倍の高さが設定されると、一部越えて浸水することが想定される。東日本で見られたような防潮堤の倒壊、そういったことがないように、ハード対策についても、たとえ溢水したとしても機能不全に陥らないように防潮堤の背面の強化、そういった対津波対策についてはできるところから順次整備をしていきたいと、そのように考えているところである。

東日本大震災の避難者、被災者支援対策について

■杉本ちさと■ 県の事業の中でも、例えば県立病院の移転先に津波の危険性の高い海側により近い場所を選んで、津波対策としては、淡路では想定される3.5メートル、2倍想定を超える4メートルの高さの防護壁になるから大丈夫とか、神戸のポーアイでは海抜8メートルだから大丈夫などと説明されているが、これでは中央防災会議の指摘された津波対策の観点からはだめだということがはっきりしたのではないか。住民の命を守る、これを最優先にする兵庫県政にしていくことが求められていると思う。その点では防災行政の責任は重いことを強調して、次の質問をする。
 最後になるが、東日本大震災の兵庫県内の避難されている方々への相談・フォローへの支援についてである。
 福島からの避難者は、9月23日現在で214世帯、555人となっている。東日本大震災での避難者の中で5割を超えている。その福島からの避難者で問題となっているのが東電の賠償請求問題である。書類を受け取った人から、膨大な書類を読むだけでも大変との声が聞かれている。弁護士会も被害者が迅速、公正、適正な補償が受けられるように相談会などの活動を進め、会長声明でも請求漏れがないように、不十分な理解のまま提出しないように、安易に合意書に署名しない、不明な点は弁護士に相談をなどと呼びかけられている。
 兵庫県でも無料相談会などの開催を予定されているようであるが、県としても不安な生活を送っている福島からの避難者へ丁寧なフォローをしていく上で、この賠償問題は大変重要だと考える。県内避難者からのさまざまな要望や相談に応えていく一環として、弁護士会とも協力して相談活動への支援なども検討すべきではないかと考えるがどうか。

■被災者支援参事(山田聖一)■ 委員ご指摘のように、全国避難者情報システムで把握している兵庫県内への避難者については、福島県からの避難者が5割を超えている。
 避難者に対する東京電力原子力発電所事故の損害賠償手続に関する情報提供については、損害賠償支払いのための仕組みや賠償手続などの連絡先が掲載されている政府発行の「生活再建ハンドブック」を避難者登録システムに登録されている全世帯に配付した他、大阪弁護士会による原発事故賠償説明会であるとか、先程もお話のあった兵庫県弁護士会による東京電力に対する損害賠償についての無料説明会・相談会の案内の他、弁護士会が行われている無料相談の情報など、避難者に必要と思われる情報を適時提供しているところである。
 今後とも必要に応じて、避難者の方に必要な情報を提供することにしているので、よろしくお願いする。

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