伊丹市の救急搬送問題について
■星原さちよ■ ことし1月20日、伊丹市内で交通事故で重傷を負った男性が、救急搬送の際、3次救急病院を含む14の病院に断られ、約3時間後に死亡するという事故が
起こった。伊丹市でもそうであるが、阪神間7市1町で見ても、救急搬送で11回以上断られた件数が2007年の199件から、2008年には267件と急
増している。
県は、救急受け入れ交渉開始から30分経過した場合で、かつ、患者がプレショック状態と救急救命士が判断した場合、県内の3次救命救急センター、特定機
能病院へ搬送する通知を出していたが、今回の伊丹の事故ではうまく機能しなかった。
伊丹市消防局は、独自に、15分を経過しても受け入れ先が決まらないときは、消防指令室が協力体制をとることを徹底するとしたが、県としても救急搬送の
仕組みについて、さらに改善策をとる必要があると考えるが、いかがか。
■毛利医務課長■ 伊丹市の救急搬送問題についてのご指摘であった。
先ほどもあったように、救急搬送事案の発生時、病院前トリアージを行って搬送先を判断しているが、この際には呼吸あるいは脈拍、血圧といった生理学的判
断、それから外表に大きな傷があるとか、大きな骨折が見えるであるとかいう解剖的な診断、それに加えて受傷機転の推定、これについては特に6メートル以上
の高さからの墜落であるとか、50キロ以上の追突事故等の高エネルギー外傷を除外するということが重要である。この三つを判断して搬送先を決定していると
ころである。特に、生理学的判断が軽症であっても、他の要素から3次救急に搬送されるということが判断される事例もある。
今回も、重篤とわかった段階で、県の災害医療センターがすぐに受け入れ可ということをお返ししているが、当初の段階では、高エネルギー外傷の患者の例と
いうことが推測され、現場での判断は困難であったと考えられる。
阪神北圏域の2次救急病院群輪番制に参加している病院は16ある。これ自体は、ここ10年間ほとんど変化はないが、休日・夜間における1次救急患者の2
次救急医療機関への時間外受診の増加、そして訴訟リスクの増大による担当医の専門に限定した受け入れにより、消防機関によって搬送に時間を要するケースが
増加していることを認識している。
そこで、県としては、平成19年12月の姫路の事案後、各医療機関に、兵庫県広域災害・救急医療情報システムの空床情報の更新を、毎日朝夕の2回の定時
更新に加え、更新時間以外でも満床等、状況の変化にあわせた適宜更新を行っていただくよう通知をしてきた。
しかし、実態としては、夕方以降の適宜更新ができていないことから、救急事案発生時には、改めて現場の救急隊から電話で各医療機関への受け入れ先の確認
を行っている。これが、時間がかかっている原因である。
今後の対応であるが、来年から、救急事案が発生したとき、消防本部あるいは現場の救急隊から、対象となるエリアの診療科を指定して、すべての関係医療機
関に一斉に受け入れの要請を行うことができるように変えさせていただく予定である。今後とも、消防や医療機関との協調により、救急体制の確保に努めてまい
りたいと思う。
兵庫医科大学病院など、救命救急センターへの支援について
■星原さちよ■ システムを変えるということであるが、一番の問題は、システムの問題じゃないと思う。それを整備しても、病院側の体制が整って
いないと何もならないわけであるから、全部から断られるということもあるので、救急医療体制の確保がなされているかどうか、これが問題であるはずである。
阪神間では、昨年、関西労災病院が救急体制を縮小せざるを得なかった。そのほかの救急告示病院も減少している。その結果、2次救急で受け入れていた患者
も、3次救急病院に流れて、慢性的に満床状態で、受け入れを断らざるを得ないという、こういう状況があるわけである。
3次救急を担い、年間約1,500件、延べ1万1,000人を受け入れている兵庫医科大学病院の救命救急センターの運営費補助額を見てみると、新年度は
8,104万6,000円であるが、平成17年度の9,300万6,000円から1,196万円も減っているのがわかる。これは、国が減らしたのであるこ
とはそうであるが、こういう状態の中で、県として上乗せをすると。それこそ命を守るためには、そういうこともやっていかなければならないのではないか、こ
ういうことを支援すべきだと思うが、いかがか。
■毛利医務課長■ 3次救急医療については、現在、県下を6ブロックに分けて、八つの救命救急センター等で重篤患者に対応している。阪神圏域において
は、ご指摘のとおり、兵庫医科大学病院がその役割を担っている。
県では、一つには、救急現場・搬送途上に医師が出向き、救急車に同乗するドクターカーの運営経費、二つには、救命救急センターの運営に必要な人件費等、
同センターを運営するために要する経費について、国庫補助基準額をもとに、兵庫医科大学病院に対して補助を行っているところである。
救命救急センターの運営経費に対する国庫補助基準額は、全国の救命救急センターの収支状況や診療報酬改定により見直されており、平成19年度までは減少
傾向にあったが、平成20年度以降は増額されている。平成21年度についても、国の基準額に基づき、引き続き兵庫医科大学病院に補助してまいる。
今後、県としては、救命救急センターの運営経費に係る補助以外についても、可能なものについて国庫補助制度の活用を図りながら、兵庫医科大学病院に対す
る支援を行い、3次救急医療体制の維持に努めてまいりたいと考えている。
県立加古川医療センターの体制整備、勤務医師の確保・処遇改善を
■星原さちよ■ 極力、努力をお願いしたいと思う。
この救急医療の危機というのは、どこでも進んでいるわけであるが、姫路市でも起こったように、非常に大きな問題となっている。私の住む東播磨地域では、
今回、県立加古川医療センターが救命救急センターとして、ことし11月に開設することになっている。こういう問題の中で、やはり同じような問題が起きない
ためには、どう体制整備をするかというのが求められていると思う。
安心できる救急医療を築く上で、やはり先ほども申し上げたように、非常に大事なのは、勤務する医師の確保ということになると思う。
最近、鳥取大附属病院では、救急専門医が全員退職、4人であるが全員退職。非常に大きな問題、崩壊寸前になっているということが報道された。この救急医
療に参加する病院が、先ほど答弁にもあったようにだんだんと減少している。そういう中で、勤務医に大きな負担がかかる。その負担が、医師をもう本当に疲れ
果てさせて、人手不足で残った医師にさらに負担がかかるという、こういう悪循環が、今、起こっている。その悪循環をどこで絶つかというのが、非常に一番の
問題であろうと思う。
日本医療労働組合連合会の調査によると、救急医の当直回数の平均は月5回、他の部門の医師の倍にも及んでいる。しかも、当直明けには通常勤務に当たると
いう医師が96%にも上っている。
新年度予算では、救急医療機関勤務医の確保対策として、休日・夜間の救急勤務手当の一部を補助する、そういう予算が計上されているが、県としては勤務医
師の労働実態がこれでどの程度改善されると考えておられるか、お聞きする。
■毛利医務課長■ 2次救急病院群輪番制に参加する病院は、全県で見ると170病院あるが、これは平成9年の196病院に比べると26病院、率にして
13%減少している。特に神戸、阪神南、中播磨圏域の都市部において、減少率が約20%と顕著であり、参加取りやめの理由としては、先ほど委員ご指摘のと
おり、救急医等のスタッフ不足というものが挙げられている。
救急に従事する医師が不足する原因としては、委員ご指摘のとおり、一つには当直回数が月6回を超える場合があるなど厳しい勤務環境、二つには、いわゆる
モンスター患者と呼ばれる方からの暴言や暴力、三つには、訴訟リスクの増大などがあると認識している。
救急医の確保に向けては、来年度から国庫補助制度を活用して、救急医療機関を対象に、医師への救急勤務医手当の支給の支援を行うほか、訴訟につながるい
わゆるモンスター患者への対応、あるいはコンビニ受診の抑制の啓発を行う調整員を救命救急センター等に配置するなど、医師の処遇改善と勤務環境の改善に努
めていくところとしている。そういった意味で、待遇面と、それから勤務環境について、可能なところから改善を図ってまいりたいと考えている。
■星原さちよ■ 予定の時間がもう過ぎているが、やはり人の命を救うということを、まず一番に考えなければならない。そういう意味では、財政が
苦しくても、どこにお金を使うかということをまず考えていただきたいと思う。
最近、ある記事で、埼玉医科大学の高度救命救急センター長をしておられた堤さんという方が、医療崩壊の原因を、これをつづっておられた。30兆円の医療
産業、これを財界が営利目的で参入しようとして、政・官・財が描いたシナリオどおりに医療崩壊が進んでいるのではないか、こういう指摘をされておられた。
私たちも、これまで社会保障費2,200億円削減、医療構造改革には財界の要求があるということを指摘してきたが、福祉を市場原理にゆだねる、こういう
やり方というのは、もう既に破綻を来している、このように思う。公の役割が問われている今こそ、地域医療を守るために、県も国に要求すべきことは要求し、
また自治体として責任を果たすよう求めて、私の質問を終わらせていただく。ありがとうございます。 |