高校生の修学保障について
■星原さちよ■ 私は、どの子も安心して教育を受けられる、そういう社会を願って質問をする。
今回、公立高校授業料の原則不徴収が実現したけれども、これで、どの子もお金の心配なく高校に通えるようになったかというと、そうではない。ある県立高
校の生徒の保護者から、学年費、生徒会費、PTA会費、教育振興費など、年間6万円近くの口座振替をするよう学校からお知らせが来て非常に困っているという訴えが寄せられた。この学校では、昨年度までは、授業料減免を受けていた家庭に、PTA会費や教育振興費の徴収を免除する措置を行っていたけれども、授
業料免除手続がなくなったため、併せて免除する訳にいかなくなったということで、今年度から徴収が始まった訳である。従来から、授業料免除されていた家庭
にとっては、新たな負担増にもなっている訳である。家庭状況の悪化で、昨年度の授業料全額免除者は約2万4,000人、これだけの家庭が授業料免除で、恩恵がないだけでなく、むしろ教育費の負担が新たに増えているという、こういう事態は大変な問題だと思う。授業料以外の教育費負担の状況、学校のそれに対する対応について、少なくとも県立学校についてすぐ調べるべきだと思うが、いかがか。
■高校教育課長(高見忠之)■ 県立高等学校における授業料を除く教科書代等保護者負担の状況については、昨年度文教常任委員会で、新町先生の方からご質
問を受けたけれども、その折は年度当初ということで資料がなかったけれども、文部科学省が実施している「子供の学習費調査」を通じて、全体の情報は、私ども手元にあって、それによると、年間を通じてだけれども、本県の全日制高校における平成20年度の保護者の負担額は、生徒一人当たり平均で年額24万円程
度というふうになっている。この中には、年度当初だけにかかるもの、教科書であるとか制服であるとか、それに加えて年間の授業料等ということになるので、
年度当初にかかる負担額というのは、およそ15万円程度になっているんではないかというふうに見ている。
■星原さちよ■ 文部科学省も調べているということだけれども、やっぱりそれぞれの学校でいろいろと状況が違うので、ぜひ県としても調べていただ
きたいと思うけれども、県内の16校の全日制公立高校について、高等学校教職員組合が調べたんだけれども、それによると、入学金、各種の学校納付金、制服
代、体操服代、教科書代など、昨年度の初年度の保護者負担から授業料を除いた平均負担額は全日制男子で23万4,427円、女子で23万6,324円、最
高が30万7,980円にも上っている。定時制高校でも7校の平均で3万7,850円、最高が6万1,500円に上っている。これに通学費などが加わるけ
れども、同じ調査で、通学費の最高は年間42万円にもなっている。これでは経済的理由で高校を続けられない生徒とか、修学旅行などをあきらめる生徒がなく
ならないと思う。また、学校納付金を授業料と一緒に払っていたときは振替手数料が要らなかったのに、授業料不徴収になってからは保護者負担となり、ただで
さえ払うのが大変なのに手数料までつくようになったという不満の声をたくさん聞いている。こうしたことを含め、授業料以外の負担を軽減する対策を考えるべきだと思うが、いかがか。
■高校教育課長(高見忠之)■ 県教育委員会では、勉学意欲がありながら、経済的な理由によって高等学校での修学が困難な生徒に対して支援をするため、平
成14年度から高等学校奨学資金貸与事業を実施しており、これまで所得や成績などの貸与要件の緩和、それからまた、申請手続の簡素化などを行って、より多くの生徒がこの制度を利用できるよう、制度の充実を図ってきたところである。また、昨今の経済状況の悪化により、さらに修学困難な高校生が増加していることが懸念されることから、従来の奨学資金に加えて、昨年度から通学交通費を貸与する、こういった新しい制度を設置をして、拡充を図ってきたところである。
今後とも経済的な理由により、修学の機会を子供たちが逸することのないよう、制度の周知徹底を図っていきたいと考えている。
■星原さちよ■ 奨学金があるということだけれども、それから通学費、これも貸与ということ、どちらも貸与というふうになっている。手数料の問題もちょっとお聞きはしたけれども、これはちょっとさておいて、奨学金について質問する。
保護者の経済的困難が増す中で、奨学金を希望する子供が増えている。県の奨学金貸与、これを申請する生徒も2004年度1,177人から、昨年度
7,384人へと増えている。これは文部科学省の調べでもはっきりと数字が出ているけれども、昨年度は申請したのに借りられなかった生徒も増えた。もとも
と学ぶのに借金をしなければならないというのは、教育無償化の世界の流れにも逆行しており、私たちは従来から、貸与ではなく給付制の奨学金創設を求めてき
た。しかし県教委は、受益者負担とか、自己責任で返済すべきものだといって、創設を拒んできた。学ぶ権利の保障ということを考えない、これは時代遅れと言
われても仕方ないと思うけれども、給付制の奨学金制度、この創設を求めるけれども、これはいかがか。
■高校教育課長(高見忠之)■ 給付型の奨学金制度については、現在、文部科学省において概算要求をしているというふうに聞いており、今後、その動向を注視して対応していきたいというふうに考えている。
それから、本県の現行の奨学資金貸与制度であるけれども、修学が終わったら一人前の社会人として、きちんと返還をし、一定の原資を有効に活用して、後に
続く後輩たちのために役立てることを基本にしており、生徒の自己責任や自己意識の確立を促すこと、それからまた自らの責任において返還させることを認識さ
せること、こういった教育的な意義からも、無利子の貸与制度としている。これを無利子とすることによって、より広範な多くの生徒たちに修学資金を提供できるというふうに思っている。しかしながら、病気や災害、求職中など、やむを得ない事情で返還ができない場合、通算して10年を限度として、返還猶予ができることとしている。返還指導を行う際や、相談を受けた場合は、あらゆる機会をとらえて、この猶予制度等の活用も指導しており、今後とも周知をしていきたい
というふうに思っている。
■星原さちよ■ この奨学金については、返還免除、猶予の規定、これもあるということだけれども、現行の猶予規定というのは条件が非常に厳しく
なっている。期間も通算10年を超えられないという、こういう条件というのがある。そういう点、やっぱり今ワーキングプアが増えている、本当に生活だけで
も大変だという、そういう中では非常に厳しいんではないかと思っている。
先程、この奨学金の問題も給付制というふうなことで、文部科学省が今概算要求しているというふうなことであった。それも承知しているけれども、今検討さ
れているその国の制度というのは、実現されれば一歩前進だと、私としては喜ぶ訳だけれども、その支給対象が年収350万円未満世帯、それから先程おっ
しゃったように支給額もわずか1万8,000円ぐらい、教科書等相当額というものに限られている。しかも民主党政権の特定扶養控除見直しによる増税という
のがあって、定時制、通信制、それから特別支援学校の生徒がいる世帯は、授業料軽減額よりも増税額が上回って負担が増えてしまう。これもよく御存じだと思
うけれども、その授業料無償化でも痛みだけが増えた世帯、これを給付奨学金などで補おうというものだけれども、これでは事実プラスマイナスゼロになるので
はないか。教育費の保護者負担軽減にはならないと思う。県として対象も、額ももっと充実したものを国待ちにならずに作ってほしいと思うけれども、教育長、
いかがか。改めてお答えいただきたい。
■高校教育課長(高見忠之)■ 先程も申し上げたけれども、本県が実施している奨学金貸与制度、これについては、国の日本学生支援機構からの補助金を、基
金を活用して実施しており、基本は貸与ということで、給付とはなっていない。他府県も同様である。先程も言ったように、貸与とすることで、より広範な生徒
さん、子供さんを支援できるということが大きなメリットかというふうに思う。ただし、無利子貸与という形になっているので、ご承知のように返還率というの
が必ずしも良くないということで、非常に大変な形で、一生懸命支えているわけだけれども、こういった本県の奨学金貸与制度の趣旨というものをご理解いただ
いて、今後ともご支援いただきたいと思う。
■星原さちよ■ 今、返還がかなり少ないというふうなことだったと思うけれども、それこそが、やはり卒業して就職しても正社員になれないとか、本
当に非正規雇用で生活が苦しい、生活だけで精いっぱいという、そういう若者が増えているという証拠ではないかと思う。そういう現状を見たら、やはりこの給
付制というふうなことをもっともっと充実させていかなければならないと思っている。
最後の質問に移る。
高校授業料を今も徴収されている生徒がいる。専攻科の生徒、再入学の場合で、今年、全日制で151名、定時制で166名、特に再入学の場合、27道府県
が不徴収となっており、当初徴収していた県でも見直して、再入学の場合も不徴収に変えている県もある。兵庫県としてもそうすべきだと思うけれども、いかが
か。
■財務課長(大谷俊洋)■ 今ご指摘のあった再入学者について、例えば本県においても、中途退学等で、再び学び直したいという生徒さんについては、私ども
も不徴収としている。ただし、一度高校を卒業した生徒さんについては、既に高校卒業という一つの資格ではないが、課程を卒業されていらっしゃる。二度目に
また高校を学ぶということなので、一つの生涯学習といったような観点で学び直しをされている。こういうことについては、国の法律では、就学支援金の対象外
であるというふうに規定がされているので、この法律の趣旨にのっとって、私どもは、二度目の卒業された方についての授業料は徴収させていただくということ
にさせていただいている。なお、原級留置、いわゆる留年生については、兵庫県は、これこそ全国に先行して、これは不登校や病気などによる場合があるという
ことで、兵庫県は不徴収ということにさせていただいているところであって、この授業料無償化の趣旨に沿った対応を図っているところである。
■星原さちよ■ 不徴収に変えている県もかなりあるという、こういう現実からも、またお考えいただきたいと思う。
たまたまきのう、母子・寡婦福祉大会というのに来賓として行ってきた。そこで体験談、お二人の方が言っておられた。皆さん、本当に涙涙で聞いていたんだ
けれども、そのお母さんは、4人の子供を育てるのに、時によっては、6つの仕事を一日抱えていた、それで、やっと子供を育てることができた。中には修学旅
行にも行けない、それからクラブの用品を買うこともできないような、そういう状況の中にもあったということを訴えておられた。そういう事例というのは、これは母子家庭だけではないと思う。非正規のお父さんたちが増えている、そういう中では、両親がおられても、本当に経済的には苦しい、貧しい、そういうところというのもあると思う。こういう子供たちが本当に安心して教育を受けることができる、友達と本当に友情をはぐくむことができる、そういう教育というの
を、やっぱり私たちは教育を受けさせる義務を持っている大人として、しっかりと保障していかなければならないんじゃないかなというふうに考えている。この
ことを主張させていただいて、質問を終わらせていただく。ありがとうございました。 |