宝塚市総合選抜入試制度の維持を
■ねりき恵子■ 宝塚では40年間、地域で総合選抜制度が守られ、この総選が最後に残った地域となっている。過度の競争がなく、公立高校が地域の学校として発展する豊かな実績を上げてきた。宝塚市教育委員会としても、過度の受験競争の緩和や地域に根差した高等学校の育成が図られてきたことなど、多くの成果を上げてきたと評価している。
しかし、県の高校教育改革の方針に沿って複数志願制の導入が進められようとしている。宝塚市では、高等学校入学者選抜制度等検討委員会が設けられ、そのまとめを受けて複数志願制の導入の要請が先日行われた。
しかし、そのまとめを見ると、その内容そのものが入試制度改変に賛成も反対も両論併記の形で整理され、多様な意見が書かれたものになっていて、まとめとは言いがたい内容になっている。宝塚市が行った市民へのアンケートでも、新しい制度に見直すべきとの意見は25%にしかすぎない。一方、改善が必要なものも含め、総合選抜制度をよい制度だとする意見が29%、わからないと答えた人が3割以上いる。
このまとめに対するパブリックコメントでも、総選廃止に反対する意見が多く、検討委員会の中でもパブリックコメントをして反対意見が多いと感じた。すべての意見を率直な意見として受けとめ、さらに時間をかけて検討し、2月に県に意見を提出するのは早いのではないかとの議論もされている。市の検討委員会の中ですら意見がまとまっていないのは、市民の声を反映したものだと思う。このように、市民の声が二分しており、まとまっていない現在の状況で複数志願選抜制度導入を強行すべきではないと思うが、いかがか。
■平井高校教育課長■ 本県では、平成12年2月に策定した県立高等学校教育改革第一次実施計画に基づき、複数志願選抜と特色選抜から成る新しい選抜制度を順次導入してきた。また、本年2月に策定した第二次実施計画において、「神戸第一・芦屋学区、神戸第二学区、宝塚学区へは、新しい選抜制度を早期に導入すること」としている。
従来、総合選抜であった尼崎学区、明石学区については平成20年度から、西宮学区、伊丹学区については、平成21年度から新しい選抜制度を導入することとしている。これらの学区においては、各市町教育委員会で入学者選抜に関する委員会を設置するとともに、保護者への学習会やパブリックコメントを実施した上で、各委員会からまとめが提出されている。このことを受けて、市町教育委員会から県へ要請文が提出され、県において検討の後、新しい選抜制度の導入を決定している。
宝塚学区においても、本年1月に宝塚市における高等学校入学者選抜制度等検討委員会のまとめが宝塚市教育委員会に提出され、本年2月には市教育委員会から県へ複数志願選抜導入の要請が出された。このことから、県教育委員会では、学区内の個性化、特色化の状況や市の要請内容も踏まえ、市の教育委員会とも連携しながら、新しい選抜制度導入について検討しているところである。
学区統合・拡大の問題について
■ねりき恵子■ 市から要請文が出ているが、検討委員会の中身を見ると、意見が二つに分かれているので見直しをしてほしいと質問している。さきにも言ったように、もっと慎重に議論すべきだという意見も出ているし、この議事録を見ると、県の立場からいえば、もっとすっきりした要望書を出せ、極端に言えば、あとは県に任せるという内容にしてくれということなのだろうが、そういうことにはなりにくいというような発言もされている。
ということは、いろんな意見があり、市の特色とか実態をもっとわかってほしいということがいろいろと検討されているし、それが市民の声だったと思う。総合選抜制度の宝塚で、複数志願制を無理やり持ち込むと、矛盾が大変大きくなるのではないかということが危惧されている。それは今後、第二次実施計画の中に宝塚学区は学区統合、学区拡大も検討の視野に入っているとされているが、学区拡大が行われれば、やはり競争が激しくなり、今までの総合選抜のよさは発揮できないのではないかという指摘もされている。
それは、はっきりとこの検討委員会の議論の中でも、たとえ複数志願制度になったとしても、宝塚の中でやるべきではないという議論もされているので、そういった意味からも学区統合、学区拡大はすべきでないと思うが、いかがか。
■平井高校教育課長■ 本県の学区の統合については、昭和39年にそれまでの小学区制から中学区制へ移行した後は、大きな統合は実施していない。近年では、平成17年度に小規模学区となった芦屋学区の生徒の選択肢を確保する観点から、神戸第一学区と芦屋学区を統合し、神戸第一・芦屋学区としたのみである。
平成18年度に設置した県立高等学校長期構想検討委員会からは、学区については、「生徒が学びたい学校を選択できるよう、新しい選抜制度の導入に際して、学校数の少ない学区については近隣学区との統合を検討するとともに、全県の通学区域については、今後の見直しを含めて望ましいあり方を検討していく必要がある」との提言をいただいた。
この提言に基づき、本年2月に策定した「第二次実施計画」の中で、「学校数が少ない神戸第一・芦屋学区、宝塚学区については、新しい選抜制度を導入した後、地域の実情を勘案しつつ、学区統合を検討する」とともに、「全県の通学区域のあり方について検討するために、教育関係者等による検討組織を設置する」としており、県教育委員会としては、この計画に基づき学区のあり方について、今後検討を進めていきたい。
■ねりき恵子■ 計画がそのようになっているのはわかっているが、地元の宝塚では、学区拡大をせずに4校でやってほしいという意見があることを指摘しておきたい。今までも私たちは、高校教育改革についての議論を公開にして、もっと父母や生徒、地域の住民の声を聞いてほしいと要望してきた。第二次実施計画も、傍聴が認められない検討委員会で進められて、その具体化がこれからされようとしているが、それもまだこれからの検討がどうなるかわからないとなっている。
先ほども芦屋の話が出ていたが、芦屋の教育委員会から複数志願制の導入や学区統合を発表されたことに対し、芦屋市教育委員会から県の教育委員会へ抗議が出ているとも聞いている。阪神間の多部制高校の設置についても、定時制の募集停止が伴ってくると思うが、働きながら学ぶ生徒たちの人生と学ぶ権利に大きくかかわってくる重要な問題だと思う。そういった意味からも、これからも広く検討委員会なども公開して、多くの県民の声を聞く仕組みづくりをしてほしいと要望して終わる。ありがとうございました。 |