県民負担増の「新行革プラン」の見直しを
■ねりき恵子■ それでは、早速質問に入りたいと思う。
平成20年度当初予算案における収支不足は1195億円になっている。引き続き厳しい財政状況と当局は説明されているが、特に収支不足の財源対策についてお聞きする。
その一つは、行政改革等推進債の発行350億円についてである。
昨年度の県の行革債発行額の許可額は250億円であった。また、地域再生事業債239億円の見込みが許可額41億円にとどまり、合わせて291億円の許
可。平成19年度当初予算と比べると、181億円少ないという見込み違いで、大変なやり繰りをしなければならなかった。県の行政改革等推進債の発行が昨年
より多い350億円も本当に見込めるのか、見通しがあるのか、お伺いする。
■小谷財政課長■ 委員からご指摘あったとおり、19年度については行革推進債、それと地域再生債、これを合わせて291億円
の発行ということになっている。来年度はことしとちょっと制度が変わって、ことしその2本であったものが来年度は地方債計画では行政改革等推進債というこ
とで1本になった。全国の発行枠である地方債計画を見ると、今年度それぞれ3000億円、1500億円、計4500億円。それが投資事業量、地方財
政計画上2.3%落ちた4400億円を全国枠で行政改革等推進債の発行ということになる。この発行に当たっては、行革努力等を、言い方が悪いが、国のほ
うで査定をしてその配分がされるということになっている。
実際にこの発行額が予算額どおり発行できるかということだが、来年度の本県、それから日本全国の財政運営の中で、例えば税収がどうなるかとかいろいろな
要素がある。その中で、今年度法人税収が大幅に落ち込み、地方財政法の特例措置ということで法律改正まで行われて、法人関係税分が落ちた場合には減収補て
ん債が特例債として発行できるという制度改正があった。こういう年度途中の資金不足の原因がそういった法人税収の見込み違いによる落ちであれば、そちらの
方でまず対応できるということもある。
それから、全国枠4500億円、ことしの状況は、まだ全体状況はよくわからないが、多分地域再生債部分1500億円については、かなりな余裕も残っ
たんではないかと考えているところであり、来年度4400億円のうち本県は350億円、かなりウエートは高いところではあるが、この確保に向けて引き続
き行革努力をきっちりやって、その状況、あるいはそもそも阪神・淡路大震災の関連公債費の償還に苦しんでいるという本県の事情、このあたりを総務省などに
よく説明し、理解を得ることによって、確保に努めてまいりたいと考えている。
■ねりき恵子■ 今ご説明あったように、国の地方債発行計画では、昨年より100億円少ない4400億円ということで、それに合わせると、県
が100億円多く350億円見込むということは、本当に見通しがあるのかということが非常に心配される。今いろいろとご説明いただいたが、それは結果どう
なるかということは、今後の財政運営にかかっているわけで、やはりこういった見込み違いがあってはならないと思う。
そこで、行革債と言われるこの中身についてお伺いするが、もちろん皆さんご存じのとおり、この行革推進債の発行許可には、国の改革プランに従って県の行
革の推進が条件になっている。平成20年度のこの行財政構造改革の取り組みによって、歳出の削減の総額は幾らになるかお聞かせいただきたい。
■古川財政企画参事■ 今回の新行革プランの見直しに伴って、平成20年度の行革見直しによる効果額については、歳入対策で県税の徴収率アップで32
億円、歳出については人件費で173億円、事務事業で169億円、投資事業で82億円、合計歳出として424億円、合計456億円の効果額を見込んでいる
ところである。
■ねりき恵子■ 合計456億円の効果額ということだが、県行革による県から示された今年度の歳出削減の総額1413億円という数字もある。
これによると、その内訳は、福祉や医療などの削減による事務事業費の削減で664億円、人件費の削減で332億円ということである。合わせると、
1413億円のうち約1000億円が福祉や教育、または職員の給与費ということである。
これを見ると、県民の暮らしや職員の犠牲のもとに行革推進債を発行しているのではないかと考えられるが、こういった県の財政運営は非常に問題であると思
う。しかも、この行革推進債というのは、投資事業にしか使えないと考えられる。結局、借金に借金を重ねて投資事業を進める、そして行革で県民に負担を押し
つけることになり、さらに起債残高もふえるという仕組みになっている。
一般会計を含む全会計の起債残高は4兆2000億円を超えて、これを県民1世帯当たりに直すと191万6000円にも上るということである。これ以
上借金をふやさないためにも、この行革債を発行しないで、歳入に見合った予算規模にすべきだと考えるが、その点のお考えをお聞かせいただきたい。
■小谷財政課長■ 三位一体改革に伴う交付税の大幅な削減があった。日本全国の地方公共団体は、極めて厳しい財政運営を余儀なくされているところである。その上、本県については阪神・淡路大震災の関連県債に係る公債費の償還、これは他府県にはない特別の事情である。
こういった財源対策によらず、しっかりと体質を見直すことにより対応すべきということであるが、定数削減や投資的経費の削減、こういった対応をしても、その効果が十分あらわれるまでにはやはり時間がかかるところである。
そこを短期間で無理に改善を図ろうとすると、本県の場合、収支ギャップが毎年1000億円を超えてあるという状況で、これを一気に切ることを仮にやろうとすると、行政サービスの急激な低下により住民生活に深刻な影響を与えることが懸念される。
こういった非常に厳しい本県の財政構造を考えると、その回復にはやはり時間がかかるかと考える。一定期間は特別な財源対策、起債の活用、それから県債管理基金の取り崩しにもある程度は頼っていかざるを得ないかなと考えている。
■ねりき恵子■ いろいろな、特に震災の影響が大きいということで、一定期間の特別な対策ということであるが、これは国全体の仕組みとして、こ
の行革債が行革をしないともらえない。行革を推進するともらえるが、それは公共投資にしか使えないということでは、私たちは従来からこの公共投資の見直し
について指摘してきたが、やはり行革が県民にも職員にもしわ寄せが行って、さらに借金をふやして、さらに公共事業をふやしていくということになっているの
ではないかということを指摘したいと思う。そういった意味で、財政運営の転換が必要だと思っている。
もう一つ、この資金不足を補うために県債管理基金450億円を一時借用するということになっているが、この点についても問題だと思っている。この基金を
利用してやると言っているが、実質公債費比率が今、全国ワースト2位という問題点、これも連動していくと思うし、将来に借金のツケを先送りするもので、認
められないと考えている。
こういった点からも、この基金取り崩しをやめるべきだと考えるが、この点についてお聞かせいただきたい。
■小谷財政課長■ まず、委員からご指摘いただいた点について若干の説明をさせていただければと思う。
先ほど行政改革等推進債については、いわゆる人件費とかそういったサービス的な経費を削って公共事業のために充てる起債を確保しているというご指摘が
あったが、この本来の考え方は、やはり地方債というのは基本的には将来にわたって存続するものの、世代間の負担の公平ということで、建設事業に充てられる
ことになっている。
通常、建設事業でいろんな施設をつくる場合には、それぞれの施設に応じた地方債のメニューがある。学校であれば学校、道路であれば道路の起債がある。そ
れは充当率、全体事業のうちの何%まで起債で発行できるとなっていて、行革等推進債は、確かに建設事業に充てることになるが、その残り部分には、普通は税
か交付税を使って事業を行う。ここの部分を起債で充てていいとされている。ただ、その考え方は、その分、税と交付税が余ってくることになるので、その分を
使っていろいろな福祉サービスとかに充てたらいいということになっている。
本県は大変厳しい収支ギャップがある中で、これを活用しているのは、何も公共事業を進めるためということではなくて、住民サービスの展開等についての一般財源を確保するために使っている。その点、まずご理解をいただければと思う。
基金の活用についての質問であるが、先ほどの行革等推進債の活用についての答弁と重なるが、やはり本県の場合、交付税の削減、それから震災関連公債費と
いうことで年間1000億円を超えるような収支ギャップを抱える大変厳しい状態である。これを一気に王道というか、サービスの見直し、人件費のカット等
で対応しようとすると、やはりこれは余りにも額が大きいので、急激な変更ということは、やはり住民生活等に多大の影響を与えるので、これはかなり厳しいか
と思う。
こういった中で、やはり改革効果が十分に出てくるまでの特に改革期間前半については、一定、起債の活用とともに基金の借り入れといった対応は必要になるかと考えている。
しかし、ご指摘あったとおり、県債管理基金の借り入れというのは実質公債費比率の悪化を招くものであり、一定程度に厳しく、持続可能な行財政運営ができる範囲内にとどめる必要がある。
今回、新行革プランの中では、県債管理基金の一時借用について二つの制約を設けたところである。一つは、期間トータル、平成30年度までの借用額についての制約、それと毎年度の借用額についての制約である。
実質公債費比率を何としても30年度には18%水準を達成したいと考えている。このためには県債管理基金残高の回復は必要である。平成29年度末の残
高、これで30年度の実質公債費比率が判定されるが、それまでに大幅に基金の不足を解消していく必要がある。18%水準を達成するということで、一つに期
間トータルの制約がまずある。それともう一つは、毎年度の借り入れ額について、県債管理基金への満期一括償還に備えるためのルール積み立て分のおおむね3
分の1以下に抑制する。こういった二つの制約を設け、持続可能な行財政構造の確立をめざしていきたいと考えている。
■ねりき恵子■ どちらにしても、借金財政を転換するためにやはりお金の使い方を大きく見直しをしていくということが必要だと思う。そういった意味から、投資事業の問題点について伺う。
これまでも私たちは繰り返し指摘してきたが、公共投資の中で大型公共事業偏重にあるということが大きな問題だったと思っている。先ほど来、震災復興の問
題が出ているが、震災復興ができたのは、知事は16兆3000億円を投じたからだと言っているが、震災復興事業の7割が震災とは関係のない一般の公共事
業であって、直接被災者の支援に回ったのはわずか2%であった。そのほとんどが神戸空港や関西空港の2期工事、本州四国連絡道、山陽自動車道など震災を好
機ととらえた大型公共事業であった。こういった事業には一部の大企業だけが復興して、多くの中小企業や県民は置き去りにされてきたということを従来から指
摘してきたところである。
このことは、広島修道大学の豊田利久教授が研究論文の中で、道路などハード中心の復興政策が長期的に被災地経済を支えられなかったこと、復興には中小企業などへのきめ細かい政策や住宅再建を含む生活者の視点に立った復興政策が必要だと指摘をしているところである。
こういった指摘もあることから、大型公共事業に偏ってきたというところに財政運営の問題があったと思うが、この点について改めてお伺いする。
■小谷財政課長■ 本県のこれまでの最大の課題は、やはり震災からの復旧・復興であった。それに当たっては、単にもとに戻す復旧ではなくて、創造的復
興をめざし、阪神・淡路大震災復興計画――フェニックス計画を定め、県民総意のもと一丸となって取り組んできたところである。
16兆3000億円という話があったが、これだけのことをやって、人口、地域の活力が震災前を上回ったというのは、ようやく昨年度のことであった。本県は今、ようやく震災を乗り越えて、新しい兵庫づくりのステージを迎えることができたと理解している。
大型公共事業という話であったが、復旧・復興過程においては、住宅や生活の再建に合わせ、道路、鉄道、港湾などの社会資本基盤の整備が不可欠である。こ
のような社会資本基盤の上に立って、初めて産業や通常の生活、活動を営むことができる、そういう意味でそういった復旧を急いだ面はある。
創造的復興の話をしても、多分ずっと平行線のまま時間がかかると思うので、この程度で答弁を終わらせていただきたいと思う。
■ねりき恵子■ 平行線だということだが、やはり問題点は問題点として指摘せざるを得ないということである。
これは県の復興10年委員会による総括検証、提言報告を私も改めて読んだが、ここでも復興事業の89.4%、約9割が県外に流出したと指摘されている。
大規模な復興事業が行われていたにもかかわらず、多くの被災企業が回復した実感を持たなかったことは、さまざまな場面で指摘されてきたが、この数字は被災
地企業の感覚を強く裏づける結果となっていると検証している。つまり東京や大阪などの大企業が復興事業で大もうけをしたが、被災地の中小企業にはその効果
が余りなかったということ、被災地は疲弊したままだと言える。
私たちは、先ほど来から言っているように、大型公共事業偏重を正して、財政運営のゆがみを転換していくということが必要だと考えている。こういった点か
らも、改めて財政運営の転換を求める意味から、借金の大もとになっている大型公共事業を変えていくということが必要だと思うが、いかがか。
■小谷財政課長■ これまでやはり復旧・復興ということを第一に県政を進めていた。そのため、いろんな事業をやってきた。確か
にそのこともあって、本県の投資事業は高い水準になっている。これについては、震災復興事業が一段落したことを踏まえ、投資水準を見直すことにしている。
新行革プランの策定における見直しに当たっては、急激な抑制による地域経済への影響や関係者の激変緩和等にも配慮するが、まずはこういった投資事業の財
源保障がされているのは、地方財政計画の水準であるので、そこまでまずは見直すこととし、さらには全国都道府県の平均水準まで段階的に抑制することとして
おり、平成20年度の予算編成に当たって、補助、単独合わせて投資事業の約15%の削減としたところである。
■ねりき恵子■ 全国平均水準まで見直すということで15%削減するということだが、この全国平均もどんどん下がっている。そういった点から見
ると、全国平均よりももっと下げた水準を検討していかないと、なかなか全国に追いついていかないという現実があると指摘をしたい。
今、国会で問題となっている道路特定財源問題について、マスコミの世論調査でもこの道路特定財源を道路整備以外の目的にも使える一般財源に賛成するとい
う人は59%と、約6割近くになっている。国民は10年間に59兆円という膨大な予算を道路事業に投じる道路中期計画を批判をしているところである。
また、国会論戦の中でも、道路中期計画の地方負担分17兆円に加えて、さらに地方負担がふえることや、地方の道路予算が道路特定財源の配分に左右されて、一番求められている生活道路が後回しになっている、その仕組みなどの問題が明らかになっているところである。
県の新年度予算を見ても、先ほど来言っているように大型の投資事業を推進する姿勢、これは道路事業予算にあらわれていると思う。道路予算は昨年並みの
1900億円が見込まれているが、これは県の公共事業予算の約3割にも上るものである。道路予算が突出していると言えると思う。
やはり福祉よりも道路など投資事業優先の姿勢では、県民の暮らしは守れないと思っている。投資事業の中身も変えていくという観点から、播磨臨海地域道路
や地域高規格道路建設優先を改めて、生活道路や県住建設、福祉や教育、県民の暮らしを守る県政予算に転換していくべきだと考えるが、その決意をお聞かせい
ただきたい。
■小谷財政課長■ 本県の取り組んでいる事業については、これは投資事業から福祉、教育といった各種住民サービス、すべて非常に重要なものばかりである。厳しい財政状況のもと、必要な事業の中のどこをどの程度我慢していただくか、これは非常に難しいことである。
今回、新行革プランの策定に当たって、特に聖域を設けてその部分について見直しをしないということは行わず、元気で安全・安心な兵庫をつくるため、しっかりとした持続可能な財政的な基盤を確立するため、あらゆることについて見直しを行っている。
今回、投資事業についても削減した、人件費についても削減した、福祉的経費を初めとする事務事業についても、できる限りサービスは継続して行うというこ
とを念頭に起きながら、その水準や達成度との整合性等も勘案して見直しを行った。こういったことですべての分野について削減というか、見直しを行ったもの
である。
道路関係経費については、本県には広い県土があるし、多様な地域を持っているということがある。面積も大きい。こういったこともある中で、一定の事業量
の確保――必要なことについては、必要以上に切るということはどの分野についても行っていないので、そういった中で現在の予算計上枠ということになってい
るが、今後1年目、急激な削減はしないということで段階的な削減としたところでもあり、来年度以降またその事業量等についての見直しは行うことにしてい
る。
■ねりき恵子■ 聖域なき見直しということで、これは行革特別委員会でも議論がされてきたわけだが、やはり私たちは今ま でも申したとおり、今回の新行革プランの中身、11年間の計画というのは、福祉や医療の削減、私学助成の削減など教育予算の削減と、中小企業への支援がな
いということ、その一方で、先ほど来言ったように投資事業、削減したとはいえども確保されているという点、そして松下電器など大企業への投資補助などは温
存したままである、こういったものになっていると指摘せざるを得ない。
県民には、県のサービスを切り捨てて、財政運営に責任のない一般職員に給与カットなども押しつけ、県民負担増を求める財政運営になっていると思う。改めてこの新行革プランの見直しを求めたいと思うが、いかがか。
■小谷財政課長■ 新行革プランの策定に当たっては、単なる一律の財政削減、収支不足の解消のための単なるつじつま合わせではなく、元気で安全・安心
な兵庫をつくるための財政的枠組みを確立するため、組織機構の見直しに伴い、仕事のやり方も見直しながら、職員定数の削減と給与見直しによる人件費の抑
制、それから選択と集中の徹底により少子・高齢化対策等の重点課題に積極的に取り組むことを可能にする事務事業の見直し、復旧・復興が一段落した投資事業
の水準見直し、それから独自歳入の確保等により収支ギャップ対策をとるとともに、県債管理基金や特別の地方債の活用など、特別の対策もあわせて行うことに
より、県行財政の運営の基本的な枠組みの確立ができるものと確信している。
平成20年度の当初予算についても、この新行革プランの初年度として適切なスタートを切る。そして、少子化、高齢化、地域づくりなどめり張りある対策をめざした。必要な事業については対応するということで取り組んでいる。
後期高齢者医療制度関係の経費や介護保険制度関係経費など、国の一方的な制度変更等に伴う義務的経費が増嵩する中にあっても、投資事業の見直し等により
地方債発行を抑制することにより、プライマリーバランスについては平成2年度以来18年ぶりの黒字にすることができた。県民の要請に対応し得る持続可能な
財政基盤、枠組みが確立できた予算になっているものと確信している。
■ねりき恵子■ 今までいろいろ指摘してきたが、やはり県、地方自治体の本来の仕事というところで、安心して暮らせる県政という県民本位の県政
実現のために、私たちとしても予算の組み替え提案等を示して、また今後取り組みを進めていきたいということを申し添えて、発言を終わる。
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