2008年度予算組み替え提案
私は、日本共産党県議団を代表して、2001年から8年連続となる、予算組み替え案について、その提案理由を申しのべます。
国の「構造改革」により、貧困と格差が大きく広がっています。地方分権と称した「三位一体改革」で地方交付税の削減が行われ、兵庫県においても大きな影響を受けました。さらに、国は地方公共団体の財政健全化を目指すとして、新たな財政指標のもと、職員の大幅削減といっそうの住民サービス切り捨ての行財政改革を地方自治体に強制しています。
こういった国の意向を受け、県が財政悪化を理由に提案した第一次の新行財政構造改革推進方策・「新行革プラン」は、平成20年〜30年の間に1兆2040億円の収支不足が生じるとして、県民の福祉や教育、医療の削減、県職員の3割削減、市町への多大な負担などに県民に大きな犠牲を強いる計画です。
2008年度予算は、この「新行革プラン」の具体化の初年度として、福祉医療の削減は1年先送りされたものの、一般事務費3割削減、職員の定員と給与の大幅削減が行なわれています。私立高校や幼稚園への補助や在宅老人・障害者の介護手当ての削減、県立高校の耐震化も削減されています。
非正規雇用や医師不足、少人数学級、子育て支援など県民の要望に十分こたえていない一方で、大企業誘致・立地補助には、松下などに手厚い予算となっています。
また、「公共事業を85%へ抑制した」というものの、道路関連はほとんど削減せず、無駄な開発も引き続きすすめようとしています。
このような本県予算に対し、地方自治体の自主的な運営で県の役割を発揮し、県民の暮らしを守り応援する予算組替え案を提案するものです。
組み替え案の全体の規模についてですが、一般会計を中心に不要・不急の事業を、121項目、合計840億円を減らして、捻出された一般財源・約114億円、宝くじ益金約6.6億円など、あわせて約121億円を、福祉・医療、教育、雇用・中小企業予算などに重点配分するとともに、県債の発行額を抑制し、新たな借金を約473億円減らしました。
次に、組み替え案の主な内容についてです。
今回の組替え案の特徴として、第一次の「新行革プラン」の初年度の県予算であることから、それによって削減された県民サービスの回復や充実を図るようにしています。
長寿祝い金や在宅老人介護手当の復活、障害者介護手当や重症心身障害児の指導交付金を昨年並みに、聴覚障害者センターの運営や仕事の予算を充実しました。
また、障害者「自立支援」法による応益負担の撤廃をめざし、低所得者の利用料を無料にできるよう12億円増額し、以前の県「行革」で削減された重度心身障害者・児の医療費助成について、精神障害者1級と内部障害3級も対象としています。
教育分野でも、スクールアシスタントや高等学校の耐震化、私立学校の授業料軽減補助が低所得者に重点化され、その他の階層が改悪されたのを昨年並みにもどしています。
また、消費生活などで機能強化が求められる生活科学総合センターへの支援を強化し、バス対策費補助や交番相談員などを昨年並みの予算に回復しています。
これら、「新行革プラン」により削減された、高齢者、障害者、教育分野などの予算を、昨年なみ、あるいは充実して予算をつけています。
次に、県民の願いに応えた県予算にするための組み替えです。
第一に、医師不足や医療問題に対応するため、研修医師の県採用人数を増やし、救命救急センターの運営費補助が、国基準に伴い削減されている金額を増額しています。深刻な二次救急を担っている病院への支援をするための県独自の制度をつくる予算を計上しました。
また、直前にせまっている後期高齢者医療制度の保険料を市町とともに軽減するための予算として7億円をつけました。
第二に、子育てや教育への支援を強めるために、こどもの医療費を、0歳から中学3年生まで所得制限なしで完全無料とし、以前の「行革」で削減された入院給食費補助も復活させるため、68億円を増額し、義務教育全学年での少人数学級の実施をめざし、中学校1年生で35人学級を実施する予算を増額しました。
妊婦への健診補助の充実や、お産の救急で搬送拒否が起こらないように、全国ではじまっている周産期の救急搬送コーディネーターの設置をします。
また、学童保育・児童クラブで、県補助を充実しました。
宝塚で最後まで残った高校入試の総合選抜制度は、受験競争と高校間の序列をなくす意味で大きな役割があり、市民の意見も二分しています。県として、総合選抜制度の廃止や複数志願制を導入すること、学区の拡大を検討することは、地域の意見を無視することになります。「高校改革」は立ち止って考え直す必要があり、削除しました。
第三に、大企業優遇でなく、格差と貧困の原因となっている非正規雇用の増大に歯止めをかけるとともに、中小企業を支援します。
若者を正規雇用する中小企業に対し、一人当たり100万円の補助を行う予算を2億円計上しました。昨年、県がはじめてつくりましたが、今年も引き続き若者むけに働く権利を知らせる冊子を発行します。
中小企業に対しては、原油高騰対策とあわせ、資金繰りやつなぎ融資のための県独自の制度創設に2億円を計上し、金融や事業相談窓口を各県民局に設置するための予算も計上しています。また、地場産業振興のため県としての指針策定費も計上しました。
さらに、中小・零細の建設業者、大工さんの仕事おこしとなる民間住宅リフォーム助成をつくり、耐震化やバリアフリーの予算も増額しました。
正規雇用や地域経済の拡大につながっていない、松下プラズマディスプレイ尼崎工場など大企業を優遇する、企業誘致・立地補助の25億円は、削減しています。
第四に、豊かな自然環境を守ることについてです。
地球温暖化防止のための実効あるCO2削減のために、電力や鉄鋼などの排出量の多くを占める企業の責任が重大であり、県としての協定強化や情報公開をすすめるための予算を増額しました。
自然環境のバロメーターといわれる生態系の頂点に位置する猛禽類などの希少動植物の実態調査などの予算や、森林の再生のため林業振興を図る基本計画策定の費用を計上しました。
第五に、公共事業の見直しについてです。
「道路特定財源」の一般財源化・暫定税率が、国民的な議論となっていますが、新名神高速道路や播磨臨海地域道路など、採算性や必要性に疑問のあるにもかかわらず、多額の税金の投入が必要な高規格の道路が、優先的に事業化されています。
東播磨南北道路や鳥取豊岡宮津自動車道、三菱電機に出す必要のない移転補償をする園田西武庫線などの道路も来年度予算ですすめることになっており、道路関係の予算は大幅に削減しました。
県営の但馬空港や、神戸空港、関西国際空港への補助・出資など7億5千万円、ダム事業のうち、無駄・環境破壊と指摘の事業14億円、六甲グリーンベルト事業3.3億円などを削減しています。
国直轄の事業については、国が全額負担すべきものであることから、約240億円を全額削除しました。
隣保館など不公正な同和行政が残っている事業や、住民基本台帳ネットワーク関連事業、「道州制」につながりかねない関西広域機構の分担金なども減らしました。
また、「県民交流広場事業」は、法人超過課税を財源にしていますが、16億円を減額し一般財源としてこどもの医療費拡充に充てることとしました。
議員の海外渡航費も昨年に引き続き、日程や人数を限定するなど簡素化をはかり、1千万円を減額しました。
以上、予算組み替え案の主な内容について説明しましたが、県民本位の予算にするため、委員各位のご賛同を心から期待いたしまして、提案を終わります。 |