阪神間定時制高校の募集停止について
■ねりき恵子■ 私も、阪神間定時制高校募集停止問題についてお伺いする。
多くの反対の声を押し切って、県立川西高校、宝塚良元分校、伊丹市立高校の三つの定時制高校の募集停止が発表されたことに怒りの声も上がっている。多様なニーズにこたえるとのお答えがあったが、この計画を進めてきた。このニーズにこたえるというのであれば、貧困と格差の広がりの中で、定時制高校の必要性はむしろ高まり、充足率も近年高まっているのが現実である。授業料減免の状況を見ても、定時制では2008年度で全日制13.9%に対し、29.3%に上っており、経済的に困難な家庭が多いことをあらわしている。
なぜ定時制を選んだかというアンケートで、定時制を選んでいるのは3割だと言われるが、ほかの理由を選んでいても、多くの生徒がアルバイトをしながら通学しているのが現状である。家庭の事情で授業料を払えなくて、私立学校をやめ定時制に入学して、なお働きながら学び、定時制高校があったから高校を卒業できたという生徒もいる。
定時制の必要性を、先ほどの答弁でもお認めになっているし、そういう意味からも、定時制高校の募集停止は、こうした状況、生徒の実態に逆行するものであると考えるがいかがか。
■高校教育課長(高見忠之)■ 定時制高校は、本来、仕事をしながら学ぶ生徒を対象として設置をしているが、近年、非常に多様な生徒が入学をしてきている。先ほど来、説明を申し上げているとおりである。県教育委員会では、4年に1度、定時制高校の生徒を対象に実態調査をしている。直近では昨年実施をしているが、その中の実態調査において、働きながら定時制高校へ行くということで定時制を希望している者は、先ほど委員のお話にもあったようにおよそ3分の1程度、残りはやはり全日制を不合格になったから定時制に来たと、それからあと3分の1程度は、自分のペースでじっくりと高等学校を学びたいといったことが中心になっている。
こうしたことから、県教育委員会でも、定時制高校から多部制高等学校、昼間、それから夜と昼間定時制、それから夜間定時制をあわせ持つ多部制高等学校の設置ということを推進しているところである。
ただ、夜間部については、当然ながら私立が経営をしていないので、この部分については、県の責任であるというふうに考えており、新しく設置する多部制単位制高等学校も、1部、2部、3部の案分については、今後、22年、23年度の志願状況等を勘案しながら決定していきたいというふうに考えている。
■ねりき恵子■ 私も、先ほどの質問の中で、いろいろなニーズを持っていても、実際には働きながら学費にかえてるという生徒が大変いる、家計を応援してるという生徒が実際にいるので、やはり定時制を残すということが必要ではないかということである。
そして、香風高校の実態を見ても、やはり倍率が大変高いので、結局そこを漏れるという生徒も実際には出てくるという意味では、現在、定時制が担っている役割が十分果たせないのではないかということが非常に懸念されるわけである。
こういった生徒たちが、本当に中学校で不登校を経験したり、いじめに遭った生徒など、さまざまな困難を抱えていることが多いわけであるが、やはり規模が小さくて、いろんな立場の子供たちが入学してくるこの定時制に、やっと居場所を見つけたという子供たちもたくさんいる。働きながら学ぶ子供、困難を抱えた子供、こういった子供たちの最後のとりでとなっている定時制高校を、その地域に残してほしいというのが今の生徒や父母の願いである。
宝塚や川西、西宮市議会では、募集停止を行わないように求める請願が採択されて意見書が県教委にも上がっているし、宝塚市では市長名で要望書が上がっているというふうに思う。伊丹でもそういった今、活動が行われていると思うし、県にも要望書が上がっているというふうに思っている。
今、貧困の連鎖ということが大きな社会問題になっている中で、家庭の経済的困難がさまざまな不利を子供にもたらし、教育の機会や進路が狭められることによって、就職も不利になる、生きる上でさらに困難をもたらすということになる。教育を受ける権利、学習する権利は、生きていくために欠かせない権利である。定時制高校の募集は、さまざまな、今言ったような困難を抱えた子供たちの学習権を侵害するものであり、やはりこの募集停止は撤回をすべきだと考えるがいかがか。
■高校教育課長(高見忠之)■ 阪神地域の武庫荘跡地の多部制単位制高等学校については、昨年10月に設置を公表して、通常の計画であれば、ことしの3月に対象校等、クラス等公表というふうな予定であったわけであるが、1月から3月にかけて、関係市等での説明会、それからまた各関係方面からの意見、そういったものを承ってる中で、例えば川西方面からであれば非常に新しく設置するところは、川西高校からかなり南下するので交通事情が悪いとか、それから高等特別支援学校の併設、これについてもさまざまな説明を求められたところである。
そういったことから、いろいろともっと多くのご意見をお聞きしながら、ご納得いただけるような形でのスタートということを考えて調整を続けてきて、この10月に公表させていただいたわけである。
そういったことを勘案した結果が、各方面のいろいろご意見を聞きながら勘案した結果が、例えば川西高校に多部制単位制高校の川西教室を残す、あるいはまた良元の方にも良元教室を残すといった形での公表ということになったわけである。この間、時間があるので、交通の便等も関係方面と調整をしながら、何とか便利な学校としてスタートを切らせたいというふうに考えている。
■ねりき恵子■ いろいろと次善策を考えて発表されたという、こういうご説明だと思う。その中で、時間があるので、今後、川西教室や良元教室についてのことを考えているということであるが、やはり働きながら学ぶ生徒に対しては、通学区域を広域化するのではなくて、それぞれの地域に学校があることが非常に重要だというふうに思っている。であるから、この三つの地域の高校を一つにするというのは、やはり効率優先なのではないかと思わざるを得ないわけである。
当初から指摘されているように、現在ならば安心して便利に通学できているのに、通学ができないんではないかという意見、こういった意見に対して、やはり生徒は通学が不可能になるという子供たちも中には出てくるというふうに思うが、そういった状況が今後解決されるのか。
■高校教育課長(高見忠之)■ 先ほどご説明とちょっと重複してしまうが、現在、関係方面、公共交通機関等とも調整を進めており、何とか北部地域、今現在、川西高校に通ってる子供たちはそのまま川西高校、あるいは良元高校に通ってる子供たちは良元高校で卒業していくので、今後の在校生が何か支障を来すということではなくて、今現在、中学校等に通う、新しい中学生たちが、例えば北部地域に住んでる、そういう子供たちをどうやって川西のさらに日生中央の奥の方、そういうところに住んでる子供たちで、例えば多部制の3部へ行くという子供たちに対して、どういうふうな手だてができるかということを今現在考えて関係方面へ調整をしている。可能な限り、県民の皆さんの不便にならないような努力を続けてしていきたいと思っている。
■ねりき恵子■ 実際には、地理的な問題を考えたりとか、実際に自分が働きながら学校に通おうと思って想像すると、非常に無理があるなというふうに思う。やっぱり新しい多部制に行きたくても行けない生徒たちが出てくるのではないかという、こういう心配はなくならないのではないかというふうに指摘をしておきたいと思う。
もともと、先ほど説明の中に、関係機関といろいろ調整をしていく、各市教委にも説明をしたし、学校関係者にも説明をしたとお聞きしたが、本当に当事者の人たちの意見がくみ入れられているかどうかということについてお伺いする。
根本の問題に、やはり高校教育改革の計画の決定の問題があるのではないかというふうに考えるわけであるが、私たちは、これまでも繰り返し指摘してきたが、定時制の配置も含めた第二次実施計画は、住民が傍聴できない検討委員会で検討されてきた。そのこと自身が問題であるが、この検討委員会の報告の中では、募集停止も視野に入れてとなっているだけであるのに、募集停止は決まったことのように進められ、それが発表されたわけであるが、この募集停止について、県民の意見を聞いたことはまだないのではないか。
学校の統廃合という、子供たちの学習権、親の教育権にかかわる重大なことが、やはり知らない間に決められているというのは問題があるというふうに思っている。今回もやはり対象となる高校名は直前になって公表されたので、全然わからなかったと、ことし入学した生徒は少し関係するわけである。状況がわからないまま入学して、入学してからこの発表がされて、事情が知らされたと、一体どうなるのかということで、状況説明もしてほしいという意見もあるわけであるが、やはり検討委員会ですべて決定してしまうやり方は考えるべきだというふうに思っている。
特に、今回、川西や良元分校などからも要望書も上がっているかと思うが、定時制の市立伊丹高校からも要望書が上がっているというふうに思う。その中に、やはり今言ったように、生徒が多部制へ移転しなければならないことを知らずに出願した状況もあるということが指摘されて、当事者へ説明が足りないと、改めて当事者の声を聞く機会を設けてほしいということを、市立ではあるが、やはり多部制とかかわっているので、県教委に要望書を出されたというふうに思う。
やはりこの時点で、市教委は、今の時点でも説明会をしないというような対応をされているようであるので、その点についても、県からも意見を申し述べるとか、また、兵庫県の教育委員会として説明会を改めて開催すべきだと思うがいかがか。
■高校教育課長(高見忠之)■ 最後の伊丹市立高校の件であるが、私どもが聞いているのは、市教委の方が説明会、それを開催をしたというふうに伺っている。私どもの方も、丁寧に説明をしてもらいたいということは伊丹市教委に対して申し述べている。
■ねりき恵子■ 開催をしたと言われるので、いつ、どこでされたのか、だれを対象にされたのか、ぜひお聞きしたいというふうに思うし、私のところに関係者の方から夕べ電話があって、向こうからあった、私が求めたのではなくて。まだ説明会がされないということで、ぜひ説明会をしてほしいということを要望されているし、特に伊丹の生徒たちが、今、存続を求めて、募集停止をしないでほしいという趣旨の署名活動をずっとされている。今月いっぱいされると、毎日、子供たちの要望でするんだということである。ぜひそこの現場にも出向いて、子供の声を直接聞いてほしいと思う。それも含めて、この説明会の件、いま一度お答えいただきたい。
■高校教育課長(高見忠之)■ 説明会の方は、改めて確認をさせていただく。ただ、市教委の方からは、そういうことをするということは過去形で聞いていたので、もう一度、それができたかどうかということ、再度確認させていただく。
■ねりき恵子■ いずれにしても、やはり計画を決める段階から生徒の意見を聞く、または父母の意見を聞く、県民の意見を聞くということが必要であるというふうに思っている。
また伊丹のことで恐縮であるが、伊丹の学校教育審議会の議事録を少し読ませていただくと、県教委は、計画を決めたら、なかなかもう意見は変えないので、今のうちに言っておく必要があるというような旨の意見を述べている人もいるわけである。そういう指摘がされているということも含めて、やはり大変子供たちの進路ということに大きくかかわる問題であるから、高校教育課だけではなくて、ぜひいろんな問題で、特にこの高校教育改革については、当事者の意見を聞くということで、今後取り組んでいただきたいと思うし、説明会のこともぜひ善処していただきたいというふうなことを強く求めて、次の質問に移る。
高校新卒者の就職について
■ねりき恵子■ 高校生の問題では、雇用状況が深刻な中で、高校新卒者の就職も非常に厳しいということが新聞でも報道されている。厚生労働省の調査でも、昨年同時期に比べて求人が半減し、求人倍率が0.71倍と厳寒と報道される状況で、高校生の進路が心配されている。
ことし7月末現在、兵庫県では、高校新卒の求職者数6,615人に対して、求人数は4,625人しかない。実際に現場で大変な状況を聞いてきたが、ある高校では先週11人が就職試験を受けたが、2人しか決まっていないという状況である。
今、兵庫県で昨年の同時期に比べて就職の状況、実際にどういう数字なのか、お聞きしたいというふうに思う。そして、現在も産業労働部やハローワークと連携した取り組みを行っているというふうにお聞きしているが、企業努力を呼びかけるだけでは、なかなかこの厳しい経済状況の中では企業も採用に踏み切らないというふうに思うので、県教委として改めて知事にも働きかけて、経済団体だけでなく、個別企業にも働きかけるなど、さらに強い取り組みをしていただきたいというふうに思っている。高校生が社会の第一歩を希望を持って踏み出せるよう、力強い支援を求めるがいかがか。 ■高校教育課長(高見忠之)■ 就職の内定者数であるが、この時期、文部科学省の調査が10月末で実施することとなっており、現在の手元には把握をしていない。
ただ、例年と比べてということであるが、昨年度10月末の内定率、昨年度であれば、就職希望者5,625人に対して、本年度よりも1,000人ほど少ないわけであるが、内定者が4,355人、内定率が77.4%、こういった状況から本年度の就職希望者数、あるいは求人者数を見ると、大幅に落ち込む数字が出てくるだろうというふうに認識をしている。
それから、本県としての就職支援活動であるが、これまでも主要経済団体を訪問し、採用枠の拡大等の要請をしてきたが、実はきょう、知事部局、それから労働局、それから教育委員会と三者合同で主要関係団体の方を午後から訪問して、求人拡大要請を改めて実施することとしている。
それから、また今後、ハローワークや高等学校の進路指導研究会、こういったところとも連携をしながら、就職未内定の生徒を多く抱える学校の進路担当者等を対象にした研修会を実施するなどして、引き続き就職希望の生徒への支援に取り組んでいきたいというふうに思っている。
給付制奨学金制度の創設を
■ねりき恵子■ さらに取り組みを強めていただきたいというふうに思う。
次に、給付制奨学金の創設についてお伺いする。この問題は、本会議でも質問をし、教育長の答弁があった。教育長は、奨学金の返済について、生徒の自己責任を強調されたわけである。けれども日本は、OECD諸国で教育への公的支出が最低レベルであるということ、教育費の家庭の負担が世界一高い国であることが明らかになっていて、その中で経済的理由で学べない子供がふえていることが大きな社会問題になっており、高校教育の無償化を求める声が高まって、それが今の政治状況にあらわれているというふうに思っている。
そういった意味で、教育長の答弁が時代おくれなのではないかということを指摘をさせていただきたいというふうに思うが、県下でも、授業料減免が2001年度に1万422人であったものが、昨年度は1万3,322人にふえている。一方で、奨学金の返済が滞って未返還額が約5,000万円にも上るなど、家庭の経済状況が非常に悪化していることが示されている。さらに、この経済的理由で中途退学を余儀なくされる子供も出ている。やはり教育の機会均等という考えから、借金をしなければ学べないという状況を正していくというのが、憲法にのっとった教育のあり方ではないかというふうに考える。
やはり中等教育の段階的無償化という国際人権規約を批准をしている国が154ヵ国に上っているが、この世界的にも、高校にも大学にも授業料があって、給付制度の奨学金がないのはOECD加盟国では日本と韓国しかないという、こういう日本の状況である。
教育長答弁では、「一定の原資を使って返してもらった奨学金を後輩に役立てる」と言われて、図らずも現在の県の制度が互助制度に等しいものであることが明らかになったわけである。経済状況の悪化に伴って、毎年応募者がふえ、申し込んでも受けられない子供もふえている。それに対し、県下自治体では、20の市町が月額5,000円から最高2万5,000円の給付制の奨学金制度を実施している。非常に広く活用されており、私の宝塚では6,000円から1万2,000円の給付制奨学金制度、公立高校で110人、私立高校で47人、合計157人が利用している、県の奨学金を借りても、これが給付されるというふうに補完をしているわけであるが、市町もこれだけ頑張っているわけであるから、県として改めて子供たちの教育権を保障するという観点から、給付制の奨学金を創設を検討するべきだと考えるが、教育長のご決意をお聞かせいただきたい。 ■高校教育課長(高見忠之)■ 教育長からは、さきの定例議会で既に答弁しているところである。同じことになるが、高等学校奨学資金貸与制度は、修学が終われば一人前の社会人としてきちんと返還すると、後に続く後輩たちに役立て、一定の原資を有効に活用して、より多くの生徒に役立てるということを基本に、生徒の自己責任や自己意識の確立を促すこと、また、みずからの責任において返還させることを認識させることというのが教育的な意義であることから、無利子の貸与制度としているところである。
このことから、現在のところ、県独自の給付型奨学金制度の創設は考えていない。
それから、この場をおかりして申しわけない。先ほどのご質問にあった伊丹市教委の会であるが、伊丹市教委が保護者を対象に8月24日、伊丹ホール、それから伊丹市教委が生徒を対象に9月16日、学校で、それからまた伊丹市教委が、育友会を対象に10月1日と10月16日、学校で説明会を開催している。
■ねりき恵子■ 奨学金の問題は、ぜひ今後も検討課題としていただきたい、生徒の実態を見ていただきたいということと、伊丹市教委の説明会の問題であるが、これは説明を今の段階でしてほしいという育友会なり、生徒たちの要望に対して、説明会がまだ行われていないということであるので、ぜひ今の段階で、いま一度確かめていただいて、よろしくお願いしたいというふうに思う。 |