県営住宅のバリアフリーについて
■毛利りん■ まず、初めは県営住宅にかかわる問題である。
本来、住まいは生活の基本であり、憲法25条が保障する生存権の土台である。住まいが権利であることは、世界人権宣言や日本政府も批准している国際人権規約も認めている。安全で健康的な住宅に住む国民の権利があることからも住まいは人権と言われるゆえんである。
さて、高齢化は県営住宅入居者の中にも顕著にあらわれている。今は中層であってもバリアフリー、その中でもエレベーター設置は当然のこととなっているが、30年代、40年代、また50年代初めに建設された古い既存の県営住宅に入居されておられる方の中には、エレベーターがまだ設置されずに、非常に毎日の暮らしが大変になっている。脚やひざが痛んでとか、若いころから住んでいて、そして子供たちが巣立っていった後であるから当然高齢化して、体の調子も悪くなってくるという状況の中で、高齢者や障害者が多くいるという状況の中、今の既存の中層住宅の中で、管理戸数に対して、エレベーター設置がどれぐらい、率としても戸数としてもあるのか、設置されているのか、お答えいただきたい。
■坂井住宅建築局長兼まちづくり局参事■ 平成18年4月時点の県営住宅における中層住宅の戸数は約3万4,500戸であり、そのうちエレベーターが設置されている住宅戸数は約5,600戸である。
■毛利りん■ その中には既に建てかえた分があるかなと思う。私の地域の中にも神陵台であるとか、桃山台、また青山台というところにあるが、そういった建てかえ分を除いた形でのエレベーターの設置、そして設置率をお教えいただきたい。
■坂井住宅建築局長兼まちづくり局参事■ 先ほど、現在エレベーターが設置されている住宅が約5,600戸と言ったが、その内訳としては、建てかえ事業等によるものが約4,100戸、改修事業によるものが約1,500戸となっている。
■毛利りん■ そうすると、いずれにしろ設置率は非常に低く、まだ未設置のところが残っている。これでざっと計算しても15%ぐらいしかまだ設置をされていないのが現状かなと思う。ということは、今の高齢者、障害者の問題、これからの高齢者の問題ということにもなっていると思う。
住宅交換をいろいろな理由から要望されている方があると思うが、現在何世帯で、そのうち交換理由が一番高いのはどんな理由か、件数もあわせてお答えいただきたい。
■大住住宅管理課長■ 住宅交換については、世帯人員の増加により広い住宅へという希望とか…
■毛利りん■ 一番多いのだけで結構である。
■大住住宅管理課長■ 住宅交換で一番多いのは、エレベーターのない住宅で、高齢者や障害者のおられる世帯が低層階へ移転する交換で、平成13年度から17年度までの5年間で246世帯の実績である。18年度は2月末までで44世帯の実績である。
■毛利りん■ その理由が一番多いということで、これまでも私よく相談を受けるが、お聞きすると全体の7割5分ぐらいが、そういう形で希望されていると。その希望される方が書類を提出するということはよっぽどである。1階にかえてほしいという場合は診断書、あるいは申立書、こういうものが要るので、少々ひざが痛いというようなことでは我慢しておこうかということで、この数字には上がっていないと思うが、そういう意味では、快適な住まいとは到底言えない状況じゃないかと思う。
そこで、今件数も言われたように、非常におくれている既存の古い中層の団地、そこへの設置を早く進めるべきだと思うが、どのような改修というか、設置計画になっているのか。また建設の年数でいくのか、高齢化率でいくのか、そういう基準もあればお教えいただきたい。
■坂井住宅建築局長兼まちづくり局参事■ 今後の中層住宅も含めたエレベーター設置については、昨年4月に改訂した「ひょうご21世紀県営住宅整備・管理計画」において、今後10年間でエレベーターの設置戸数としては、建てかえ事業で約5,500戸、居住者が居ながらにして工事ができる新型改修事業では、前の計画に比べて3倍のペースとなる約9,000戸を予定している。
エレベーターを設置する県営住宅の選定に当たっては、建てかえ事業では、昭和42年以前の県営住宅のうち、老朽化や耐震性能に問題のある住宅を優先して行っている。また、新型改修事業では、自治会の合意形成を基本としつつ、まずは高齢化率が高い団地、5階建て棟の団地を優先して行っている。
中層住宅のエレベーター設置等について
■毛利りん■ 今の回答では、私がどこに焦点を当てているかということが明確じゃない。既存のあくまでも、それこそ古い中層の3階から5階のこれに限ってどういう基準になっているのか、この計画がどうなっているのか。これは実は、貝原知事のときにも、私、一度質問させていただいて、その当時には、まだまだ住みながら中層のエレベーターをつけるということは、なかなか困難だということで難しかったところを、それでもやるんだということで一定前進をしたときがあった。ところが、今見ていたら、とまっているのでお聞きしているので、それに限ってのお答えがほしい。
■坂井住宅建築局長兼まちづくり局参事■ 中層住宅のエレベーターを設置する基準としては、先ほども言ったように、まず高齢化率が高い住宅、中層住宅には5階から3階建てがあり、なるべく最上階のある5階建ての、要は高齢者の方が上り下りが大変しんどいだろうという形で、5階建てを優先してやろうと考えている。
■毛利りん■ ぜひ進めていただきたいと思う。今特別会計だけでやるというのは、財源問題、大変だろうと思うから、一般財源も含めて、ここへ投入するという思い切った形で、まさに最初に言った住まいは権利、人権という意味で、快適な住まいを県営住宅でも提供していただきたいと思う。
共益費について
■毛利りん■ 2点目は、共益費の問題であるが、現在、県は県営住宅における電気、水道など共益的に利用しているものについて、入居者に、その費用を共益費として分担させている。ところが、公営住宅法第20条「家賃等以外の金品徴収等の禁止」では、「事業主体、すなわち県は、公営住宅の使用に関し、その入居者から家賃及び敷金を除くほか、権利金その他の金品を徴収し、またはその入居者に不当な義務を課することができない」となっている。それなのに共益費を入居者に負担させる根拠は何に基づいているのか、お答えいただきたい。
■大住住宅管理課長■ 公営住宅法では、家賃、敷金以外の金品の徴収を禁止しているところであり、この条項の趣旨について、国土交通省の見解は、この法20条の規定は専用部分の使用に関し、家賃、敷金以外の金品の徴収を禁止したものであり、共用部分、共同施設の使用に関して定めたものではないとの見解である。この県営住宅の共益費というのは、団地内の共用部分及び共同施設の維持・運営に要する費用であるので、共同部分、共同施設を利用する入居者が負担すべきものと考えている。
■毛利りん■ 法にはそんなふうに書いてないと思うから、何に基づく見解なのかということは、私は法的には根拠はないと思う。ただ、県が、33年前になるが、1974年4月1日から要領をつくって、県負担の範囲だとか、負担方法というのを決めているが、これも納得がいかない。
まして、空き家の中で県の都合で政策的に空き家にしているものがある。いわゆる政策空き家というふうに言われるが、これに対しても、政策空き家であるにもかかわらず入居者に負担をさせているということは論外だと思うが、この政策空き家が現在何室になっているのか、その戸数を教えていただくのと同時に、政策空き家については県がはっきりと負担をするべきだと思うが、お答えいただきたい。
■大住住宅管理課長■ 建てかえや集約等のために入居募集を停止している住宅、いわゆる政策空き家は現在216団地に3,356戸ある。
先ほどもご答弁したように、県営住宅の共益費は、団地内の共用部分、共同施設を利用する入居者が負担すべきものと考えている。しかしながら、この共益費のうち、電気基本料金など、固定経費については、入居戸数が少ないと入居者一人当たりの負担額が増大することとなる。そういうことで、空き家戸数が10%を超える場合は、入居者負担の軽減を図るため、10%を超える空き家戸数分を県が負担することとしている。また、空き家戸数が30%を超える場合は、そのほとんどが集約対象団地など政策空き家によるものであるため、その空き家の全戸数分を県が負担することとしている。
■毛利りん■ 3割以上の政策空き家で県が負担と言われたが、具体的事例がある。例えば要望されているのが、西宮の巽高層鉄筋団地の例では、全体が80戸で、政策空き家が10戸である。そうすると、その計算に基づくと、8戸分を今入っている70戸の方々が負担をしなければならないと、これは今言った計算法では救えない。県負担じゃなくて入居者負担ということになる。
この問題と今の3割はちょっと違うと思うから、具体的な事例と含め、そもそも論のところからの共益費についての考え方を、山崎部長、どうか。
■坂井住宅建築局長兼まちづくり局参事■ 毛利委員が言われている県の空き家に対する共益費の負担の制度であるが、これは昭和49年4月1日から始っている。その当時の詳しい書類等が残っていないが、その当時のつくりを見ると、その当時から政策空き家はあり、政策空き家をしているところもあるので、その当時の制度としても、ある程度の政策空き家を含めた中で、県営住宅全体として空き家の対応をどうするかということで考えていった経緯がある。
現在、県営住宅の全体の空き家は約1割あるので、すべて10%未満の空き家については通常発生するものと考えており、現在県が取っている空き家の共益費の負担についても、約1割程度は皆様方で負担していただくと、その残りについて県が負担するという形で成り立っているので、この制度については、このまま当分この制度で続けていきたいと思っている。
■毛利りん■ 一番基本のところで、いわば県が勝手に政策的に空き家にしているところまでやるというのは、それは余りにもひどいんではないか。これは少なくともここの部分は考え直さないと納得できないが、その辺もう一度お答えいただきたい。
■坂井住宅建築局長兼まちづくり局参事■ 先ほども言ったように、県の平均的な入居率というか、9割であるから1割程度は空き家がある。空き家がある平均的な空き家の部分については、入居者の皆様方で負担していただく。政策空き家もその中に含めた中で、当初から政策空き家ありで、この制度をつくっているので、当時政策空き家がなくて、その後に政策空き家が出てこういう状況になったのであれば別であるが、当時から政策空き家があった中で、こういう制度でやっているので、1割程度については負担をいただいているということで、ご理解いただきたい。
■毛利りん■ 政策空き家も今現在3,356戸と言ったが、最初からあると言っているが、県が建てかえるときの状況等とあわせて、どんどんふえている。だから、当時からあったから今もそうなんだというのは違う。率なり戸数はふえてきている。例えば3年前でも2,800戸から今の3,356戸の500戸もふえている。そういうことを考えたら、今の答弁では到底納得できないので、引き続き入居者にとってもこれはテーマになろうかと思う。ぜひ改善をしていただきたいということを強く要望しておきたい。
JR塩屋駅のバリアフリー化について
■毛利りん■ 次は公共交通機関、その中でも鉄道駅舎のバリアフリー化についてである。
高齢者や障害者を含むすべての県民が生き生きと生活できる福祉のまちづくりの推進を理念とする「福祉のまちづくり条例」が全国に先駆けて15年前に制定された。この条例が県民の毎日の生活のあらゆる場面で貫かれ、実効あるものでなくてはならない。加えて、公共交通バリアフリー化促進事業の実施で、本県でも鉄道駅舎のバリアフリー化も進められている。それでも、さまざまな理由から実現できていない駅も少なからずあるのが現実である。
そこでバリアフリー化困難駅とも言われる駅のうち、地元で住民の皆さんからの大きな要求が挙がっているJR塩屋駅と山陽電鉄滝の茶屋駅について伺いたい。
まず、JR塩屋駅については、エレベーター設置ができない理由と県の対応について尋ねたい。
■上原まちづくり課長■ まず、JR塩屋駅は橋上駅になっており、バリアフリー化するには改札口の内外にそれぞれエレベーターの設置が必要であり、改札内のエレベーターについては、事業主体がJRと決まっている。一方、改札外となる自由通路でのエレベーターの取り扱いについて二つほど課題があると考えている。
具体的には、一つ目は、事業主体について、神戸市は、自由通路の利用者の大半がJR利用者であることを理由にして、これはJRがやるべきであると申している。一方、JR側は、そこはだれもが利用できる通路であるから、これは神戸市がやるべきだと主張しており、双方の言い分は平行線の状態であること、もう一つは、利用者の大半が北側にあるが、仮にそこにエレベーターを設置する場合、エレベーター設置場所はJR用地があるが、エレベーターと道路の間に第三者の土地があり、その使用についての交渉がまだ未解決であるとの理由から、整備に向けた結論が出ていないのが現状である。
■毛利りん■ JR塩屋駅は、ご承知のように、1日の乗降客が1万3,000人を超えている。しかも階段は急で、長い、こういう悪条件の中で、本当に利用者にとっては大変きつい駅になっている。当然、車いすなどを利用するのは至難のわざということになる。そのため、この間、多くの住民、自治会、婦人会、老人会、商店会、まちおこしの会など、幅広いまちづくり協議会としても、まさに地域ぐるみでJR、神戸市、県にも署名や要請行動を行って、粘り強く取り組まれている状況である。
今言われた状況の中で、県はよく調整役だというふうなことで、合意が得られてないということであるが、調整をするという意味では、単に合意が得られていくのを見守っているのではなくて、もっと積極的にやってほしいと思うのは、神戸市に最近、ついこの間お聞きしたら、昨年の9月26日に垂水区のまちづくり推進課長とJRが協議をして、先ほど言われた課題は、財政問題だとか、だれが事業主体だとかいうのはあるとしても、設置場所も困難だったところを、駅の構造上でエレベーターの設置場所についても、橋上のところに改札口があるから、その下にちょうど山陽電鉄の旧の駐輪場の進入路があるが、そこしかないなということで一致したと。それを受けて、神戸市の環境福祉総務部長とJRが協議したところ、同じ結果になったということである。
ということは、構造上大変だった、私たちもしょっちゅう見ているが、本当に大変だなと思うけど、知恵を出したというところまで少なくとも一歩前進をしている。
ところが、これ以後、半年近くもなるのに協議は進んでいない。そういう意味では、県も同じことを言うが、2010年──平成22年までには設置すると住民にも言うし、みんなにも言っているという状況の中で、県の調整という役割がこの時点に至って非常に重要になってくると思う。せっかく設置する場所が、市とJRがここだということがわかっているのだから、後の課題の問題も大きいが、今こそ定期的な協議も含め、どのテーブルに着くかということも含めて、後押しをしていただきたいと思うが、どうか。
■上原まちづくり課長■ 県としては、改札内外のエレベーターは、同時に整備されることが望ましいと考えており、内外で一体的な整備を求めていきたいということで、これまでも機会をとらえて早期着手に向けた協議を市、JR双方に要請を行ってきたところである。
機が熟したということであれば、今後、県として、市とJRの協議・調整の場を私どもの方から積極的に提案して設けることを含めて働きかけを強めてまいりたい。
■毛利りん■ よろしくお願いをしたい。
2010年にそれが実現できるということになれば、予算的にも本当はことし、遅くとも来年、国も県も市も予算化をしなければならない。そういう意味では、本当に力強い働きかけというのが求められるので、今の答弁で地域の方々、また、県もそうやって後押しをしてくれるんだということで、非常に喜ばれると思うので、お願いをしたい。
山陽電鉄滝の茶屋駅のバリアフリー化
■毛利りん■ それでは、最後は、もう一つの駅、山陽電鉄の滝の茶屋駅についてである。
当駅もバリアフリー困難駅の一つであるが、この駅を利用する乗降客には県立盲学校の生徒たちもいる。過去、山陽電鉄が駅員の無人化を推進したときにも、多くの障害者、住民の署名活動、要請行動などもあって、登下校の一定の朝夕の時間には有人化された経緯がある。まさにバリアフリー化、エレベーター設置が急がれているが、県はこの滝の茶屋駅にはどんな対応をされているのか。
■上原まちづくり課長■ 山陽電鉄滝の茶屋駅は、公道と改札口の段差を解消するエレベーターの設置場所の確保が難しいということから困難駅の一つとして、県では、平成16年度に整備方策の検討を独自に調査を行って、17年度には、1案として、今ある公道と改札口までの階段に昇降用リフトを設置する案、2案として、公道と高低差がないホーム東側に新たに改札口を設ける案を提示し、山陽電鉄側に検討を求めた。
これらに対して山陽電鉄は、リフトの設置や改札口の新設はいずれも新たなマンパワーが必要で、しかもランニングコストが増大するなどの課題があり、県の提案と別に設置可能な方法を社内的には検討していきたいという回答を得たところである。しかしながら、現在のところ、よりよい案は得られていないと聞いている。
■毛利りん■ コンサルに委託をして、具体的に図まで示して困難駅を解消するためにと、エレベーター設置の具体的な提案を県みずからが提示をしたということで、今、山陽電鉄の回答というか、現状をお聞きした。
山陽電鉄も我々言うと2010年までにはということを限定しないまでも、実施についてはっきりと言わない。公共交通機関、これを担う会社である。ただ残念なのは、JRと違い本当に中小の私鉄であるから、ここでは今言われたように、もう少し安くつくような実施方法がないかということで模索しているようだが、さらに強い働きかけ、県として福祉のまちづくり条例を生きたものにする意味では、知恵も出し、提案もされたが、もう一押し知恵も財政的にも応分の働きかけをしていただきたいということを最後に質問したい。
■上原まちづくり課長■ 私どもとしては、17年度に提案した案がなかなか実施困難だということに対して、山陽電鉄としてもさらに検討するということであるので、今後とも引き続き提案、早期策定するということを働きかけていきたいと考えている。
■毛利りん■ 困難駅のバリアフリー化、エレベーター設置化ということが困難だということは非常にわかるが、県土整備部全体としても、この兵庫県にいれば、どこで乗っても、5,000人以下のところであっても、本当にいいなという県にぜひしていただきたい。障害者や高齢者や、また、県民に優しい駅や街にしていただきたいことを要望して終わりたい。 |