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2006年度決算特別委員会産業労働部審査 新町みちよ
2007年12月11日

非正規雇用、特に「ネットカフェ難民」の問題について

■新町みちよ■ 11月4日の新聞であるが、若者を中心にしたネットカフェ難民の神戸における調査が掲載されていた。
 調査を行った兵庫労働局に聞くと、8月末に神戸市内の24時間営業のインターネットカフェの受付責任者に電話で聞き取りをしたそうである。その店でインターネット使用が可能かどうか、また24時間営業であるかどうか、常に深夜利用をしている者は何名いるかという電話での聞き取り調査である。
 神戸市内の13店舗に調査を行い、そしてそのうち三宮、元町の3店舗で90人という数字が出ている。90人のネットカフェ難民がいるという意味である。
 そこで、私は生まれて初めてであるがこのネットカフェに行ってきた。該当する店舗も含め、兵庫青年ユニオン労働組合「波」のメンバー、若い人たちと一緒に三宮でネットカフェ3店舗調査を行った。寒い中であったが、店頭前でのアンケート調査なども行った。
 個室は1時間で400円の料金であった。仕切りがあり、隣が見えない程度の仕切りである。いすがリクライニングシート、その前にはパソコンが置いてある。リクライニングシートではあるが、ベッドにはもちろんならないし、また禁煙ではない、そういう環境の中で寝泊まりをするというのは本当に大変だと思った。自動販売機があるが料金は要らず、飲み物は飲み放題である。壁面には漫画がずらっと並んでいるという、こういう環境の中であった。
 アンケートに答えてくれた青年は、夜8時まで働いて月収が20万円。正社員でも15万円という回答もあった。この店の街頭呼び込みのアルバイトの青年にも聞いたが、よく見る常連で9人から10人泊まっている人はいるという返事であった。
 終電直前までこのネットカフェにいた。11時過ぎぐらいになると泊まらない人は帰っていくが、それぞれの個室、仕切りがあるだけであるので個室と言っていいのかどうかわからないが、その中にはかなり泊まっているように思った。
 このネットカフェの厚生労働省の調査では、全国では推計で5,400人、非正規労働者は約2,700人、正社員が300人、失業者1,300人、無業者900人。実際はこんなものではないという声もあるが、この厚生労働省が発表した全国ネット調査で同時に雇用の実態も調査され、日雇い派遣労働者の実態がこれで明らかになった。日雇い労働者を派遣している事業主への調査である。調査対象は10社である。わずか10社であるが、この10社だけの合計でも派遣労働者というのは1日当たり平均で6万5,000人、そのうち1ヵ月未満の短期派遣労働者は5万3,000人、日雇い派遣労働者も5万1,000人とその大半を占めている。
 不安定雇用というものは働く人の3分の1、若い人では2人に1人がこの不安定雇用だというふうに言われている。雇用の調査というものはいつも国任せの姿勢であると思うが、兵庫県下の雇用の状態がどうなっているのかは県としてもしっかりと把握する必要があるのではないかと思う。
 ネットカフェ難民の調査、兵庫県としてもやるのかどうか。私はぜひするべきであると思うが、いかがか。

■藤原しごと支援課長■ 先ほど委員から話があった兵庫労働局の調査、神戸市内13店舗を調査し、3店舗が約90人ということであるが、実は兵庫労働局においては聞くところによると、今一部つまみ食いをしたような状態であるので、さらに詳細な調査を全県下を対象に、実態の恐らくアンケート調査のような形になろうかとは思うが、調査を実施するというふうに聞いている。それも、年内に恐らくやるのではないかと思っている。
 県としては、県単独で今の時点で実態調査をやるというのは、経費面においても若干非効率というか、同じようなことをやることになるのではないかと思われるので、そういう調査に協力し、労働局の調査により実態を見きわめていきたいと考えている。

■新町みちよ■ ワンコール派遣、日雇い派遣という、仕事のあるときだけ携帯にメールが届いて仕事に出ていく。もちろん社会保険、雇用保険などは適用されず、年休や産休、育児休暇とは無縁ということになる。また交通費も支給されない。安定した収入がなく、ネットカフェで寝泊まりをしているという状況である。これは今言われている格差・貧困の象徴だというふうに思う。
 東京都では、1ヵ月の平均収入が10万7,000円、食費に充てられるのは1ヵ月2万5,000円で1日に直すと833円の計算になる。
 ワンコール派遣、日雇い派遣などは人間をまさに材料や部品の調達と同様であり、トヨタの看板方式というのがあるが、人間を人間として扱わないやり方だというふうに思う。
 先ほど、兵庫労働局は今年度内に県内初の実態調査をするということを言ったが、神戸市でも我が党の議員がこの質問をしたとき、県と情報交換をしたいと言っている。ぜひ県も協力して、しっかりとネットカフェの調査をすることと同時に、県下の不安定雇用の実態をぜひ把握していただきたいと思うが、いかがか。

■藤原しごと支援課長■ ネットカフェ難民のみならず、県下のいわゆる非正規労働と言われる労働の実態なりについて、全般的にきちっと把握しておくべきではないかという質問の趣旨ではないかと思う。
 当然のことながら、一つは、いろいろな統計データがあることから毎年質疑している非派遣労働者の実態について的確に把握していくことは当然必要であると考えている。
 あるいは個々の企業サイドについては、さまざまな雇用の動きについて産業労働部としていろいろな企業から聞き取り調査をしており、そういう中から雇用についても実態面の把握ということで努めていきたいと考えている。

■新町みちよ■ 厚生労働省の調査では、先ほども言っていたが、ネットカフェ調査では20代が26.5%ともちろん多いのだが、50代も23.1%である。将来がない、未来が見えないのである。
 若者は、自分の未来はホームレスだというふうに言っている。少子化の問題が大きくなっているが、住む家がないので結婚もできない。1人当たり子育てに2,000万円かかると言われているが、子育てもできないという状況である。
 こういう状況の中で、しっかりこの実態を把握する。統計的に数字は出るかもしれないが、若者たちの状況、そしてずっと不安定雇用で暮らしていかなければならない県下の働く人の状況を産業労働部としても把握するべきであると思う。それを把握しなければ、ここからどう解決をしようかという方向には向かないのではないかと思う。
 今、ネットカフェでの生活を強いられている人たちに脱出支援をするということをしっかりと考えるべきであると思う。住居をなくした人、この人がネットカフェに寝泊まりをしているわけであるが、その理由、つまり住居をなくした理由の大半が失業である。もちろん住居に住みたいと思うが資金がない、敷金がないし家賃を払い続けられるかどうかわからないということで大きな壁があるわけである。
 先ほどもお話があったが、こういった状況を踏まえて、東京都では来年度からネットカフェで寝泊まりする人に対して支援をしようというふうにされている。
 職業訓練を受けて正社員についてもらいたいということで、生活費として訓練を受けている間に月15万円を支給し、住居不定者、住居がないという人には上限60万円の無利子貸し付けもする。対象は、定住場所があるかないかにかかわらず年収が200万円以下の人。母子家庭も含めて仕事がない人も含めるという方針で、就労意欲があるかどうかというのは、都の新設するサポートセンターや市区町村の窓口で審査をして当たることとされている。
 希望や経歴を踏まえ、就労カウンセラーと訓練をする職種も決める。訓練期間は3ヵ月から半年で、カウンセラーは就職支援もしていくということである。こういったきめ細やかな支援をしていこうということである。
 兵庫県としても、この東京都のような支援策、生活や家賃の補助という支援をぜひ検討し、実現してほしいと思うが、いかがか。

■藤原しごと支援課長■ 兵庫県でとるべき施策という話であったが、厚生労働省が全国でネットカフェ難民を推計調査した。その結果によると、全国で5,400人いるということであり、そのうちの2,000人が東京都であるという結果になっている。あくまで推計値であるが。
 例えば、名古屋では200人で、大阪が900人というような状況かと思うが、そういう状況の中で、今、我々が実態として把握しているのは兵庫労働局の調査程度の簡易な実態しか把握できていないという状況もある。
 もう1点は、国において来年度から住宅の確保もにらみながら早期の安定した就労機会を図るため、雇用開拓推進員や職業相談員を新たに配置する、あるいはトライアル雇用を実施するなど生活相談や就労相談の一体的な実施をするというような住宅喪失不安定就労者、ネットカフェ難民を対象とした支援事業を実施する予定であると聞いている。
 また、兵庫労働局においても、年内に先ほど調査を実施すると申し上げたが、当然そこで多数のネットカフェ難民の存在が確認されれば、例えば住宅つきの求人のあっせんなども当然考えられる。したがって、まずは国の新規施策なり地域の国の機関と連携しながら支援施策を実施していくのが妥当ではないかと考えている。以上である。

■新町みちよ■ 85年成立以降、労働者派遣法が改悪されてきて、こういう状況がずっと続いてきたわけである。やはり真剣にこの状況を把握して解決しようという姿勢がなければ国待ちの施策になると思う。兵庫県はぜひ、先ほどからも言っているように実態把握をし、そしてこれを解決しようというふうに進めていってほしいと思う。
 非正規雇用というのは、民間だけではなく自治体でもこの公務労働の間にも大きく広がり始めていると思う。ついせんだって神戸新聞にも載ったが、兵庫県の自治体問題研究所と労働組合県内31の自治体のアンケート調査で判明したのは、非正規労働者は全職員の3割で、そして4割を超える自治体もある。自治体の中には3割、4割非正規雇用を抱えているというのが出ている。そして月々の給料は20万円以下というのが8割を占めているという実態も明らかになった。
 また、兵庫県の職場の中でも例外ではない。非正規雇用がふえている。行政職だけで見ても日々雇用が593人、臨時が152人、再任用が78人、合計で823人もいる。
 先ほども言ったように、85年に決められ86年から施行された労働者派遣法は次々と改悪され適用業種がふやされ、そして99年には原則自由となった。2003年には、これが製造業にも拡大をされた結果、非正規雇用がふえてきたのである。
 そして、これは短期臨時ではなく正社員から非正規雇用、正規雇用から非正規雇用へ大きく置きかえられたというのが問題である。この結果、働いても働いても生活保護水準以下というワーキングプアが大量に生み出された。
 来年またこの労働者派遣法が見直しをされようとしているが、日本経団連は派遣労働の全面自由化を要求していると言われている。兵庫県も国と同じようにこれまで多様な雇用、多様な働き方を経営者団体と連合の3者で推進してきたが、この方針を転換すべきであると思うが、改めるという気持ちはないのか。

■藤原しごと支援課長■ 多様な働き方の推進については、政・労・使の三者合意に基づき、県としても力を入れて推進しているところである。
 この多様な働き方の推進事業というのは、働く人があくまで主体的に選択するというものである。
 例えば、女性が継続して働くことができるようなシステムや、あるいは高年齢者の方が定年退職後もいろいろな形でなるべく長く働くことができるような形のものを推進しようとしているものであり、決して非正規雇用を広げようというような趣旨のものではないのでご理解いただきたい。

■新町みちよ■ 18年度の決算でも労使団体との連絡会が緊密な連携と協力を図るためとして行われている。兵庫県雇用対策第三者会議が毎年開かれているということである。
 18年度では、本庁で6回、各県民局でそれぞれ2回から3回、合計で32回開かれている。メンバーでは、本庁で見ると連合兵庫の会長、県の経営者協会の会長、県は知事、そして兵庫労働局も局長がオブザーバーとして参加している。実務者会議では連合の事務局長、経営者協会の専務理事、事務局長、県では産業労働部長、しごと局長、関係課長、労働局では職業安定部長、こういった方が参加していると聞いている。
 これらの会議の中で、否定されるが、多様な働き方を進めて不安定雇用を拡大するのか、それとも正規雇用をふやすのかというのは天と地の違いである。
 産業労働部長もこのメンバーとして参加しているが、こういう気持ちがあるかどうか。不安定雇用をなくしていき、ネットカフェ難民を支援する方向と対策を進めていくのかどうか決意を伺いたい。

■表具産業労働部長■ 非正規雇用、不安定雇用はできる限りなくしていくべき方向で進むべきであるという認識は一致していると思う。ただ、多様な働き方の推進については、先ほど担当の方からも答弁したが、我々はそれが非正規雇用、さらには不安定雇用を拡大するものとは全く認識していない。
 働く人の主体的な選択により、働き方の多様さを広げていく、それぞれの勤労者の立場に立って場を広げていくという視点で多様な働き方の推進をしている。
 今後、少子・高齢社会が進んでいく中で、多様な働き方の推進というのはますます重要になってくるものと認識している。

■新町みちよ■ 働く側が選択できるという状況ではないというふうに思う。不安定雇用をなくすために、もちろん、国の方のルールのないこういう労働の状況はわかるが、ネットカフェ難民を兵庫からゼロにするという決意でぜひ頑張ってほしいと思う。これで質問を終わる。

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