県奨学金の利用状況
■杉本県議■私は県の奨学金制度などについてお尋ねをします。私たちは長年にわたって県が奨学金制度を実施することを一貫して求めてきました。ようやくそれが実現したのは一歩前進と評価をしますが、貸与制度しかないのでせっかくの奨学金が十分活用されていないのではないかと思っております。奨学金の貸与制度ですけれども、現在の利用状況は何人でしょうか。
■岡野高校教育課長■今年度の貸与決定者は11月末現在で2309名となっております。
■杉本県議■これは1高等学校に平均して10人あまりになります。これではあまり利用されているといえないのではないでしょうか。何故利用する学生が少ないのかと学校の先生方にもお聞きをしましたが、先行き不透明の時代で後のことを考えると借りても返せるかどうかの不安があるだから借りることに躊躇するようになっているとのことです。勝ち組、負け組が作り出され経済的な格差が広がる中で経済的理由で教育が受けられない状況も広がっています。このような人たちに高校教育を受ける条件を提供することこそ今求められているのではないでしょうか。神戸市や西宮市、尼崎市、宝塚市などは月7千円とか月5千円とかの給付制度を実施しています。この制度は大変喜ばれ、西宮市では生徒の16%が利用しています。ある県立高校では県の奨学金制度の利用は一人しかいないのに対して市の給付制度は120人も利用している。そういう状況もあります。県は貸与制度しかありませんが給付制度も検討すべきではありませんか。どうでしょうか。
■岡野高校教育課長■本県が行っている高等学校奨学資金につきましては、勉学の意欲がありながら経済的理由により就学が困難な高校生等に対しての無利子での貸与の事業でございます。本年度から独立行政法人日本学生支援機構いわゆる旧日本育英会でございますが、その高校部分が奨学金を本県に移管されたということを受けて従来からやっておりました高等学校奨学資金に統合一元化させて併せて諸要件の緩和これまでの連帯保証人・保証人の各1名を必要としていた部分を保証人要件を連帯保証人1名にとどめるとかなどの手続きの簡素化を行っております。また中学校3年生に対する予約作業の導入など奨学資金の貸与を希望する高校生がより利用しやすくなっておるのではないかと思っております。従ってその結果、昨年度に比べまして2倍以上の人数が今年度は貸与決定をしておるところでございます。次に、給付制にしないのかということでございますが、先ほど申しましたように無利子で奨学金の貸与を行うという制度でございますので、当然奨学金を受けて就学を終われば一人前の社会人として返還し後に続く後輩達に役立てていただくということを基本に貸与制度としておるところでございますので、現在のところ給付制度は考えておりません。
■杉本県議■そのようにおっしゃいますけれども、教育という点で貸付制度しかないことが適切なんでしょうか。世界人権宣言ではすべての者が教育について権利を有すとあります。そして日本国憲法ではすべての国民は等しくその能力に応じる教育を与えられなければならないものとし、国及び地方公共団体は能力があるにもかかわらず経済的理由によって就学困難な者に対し奨学の方法を講じなければならないとうたっています。それなのに貸付しか奨学金がないことによって、経済的に困難な生徒は借金をしなければ教育の機会が与えられない、裕福な生徒ならば心配をせずに就学できる、こういうことが教育の機会均等の保障になると思いますか。どうでしょうか。
■岡野高校教育課長■ご指摘の通り西宮市、尼崎市、神戸市等給付制の奨学金を実施しておりますけれども、やはり現在県が行っております給付にしますと4人家族で主たる生計維持者の方の収入が680万以上というぐらいのところで一つの基準を設けています。従いまして成績要件とかいったものを全く設けていませんので、より広い高校生に対して給付ができている現在の制度が望ましいものではないかというふうに考えております。
教育無償化の流れをすすめる奨学金「給付」制度を
■杉本県議■貸与の間違いだと思います。相変わらず貸与にしがみついておられますが、その発想は大変な時代遅れだと思います。
教育問題では今OECD調査が関心を集めていますが、日本は教育条件整備の点では大変な後進国です。国内総生産GDPに対する初等中等教育への公費支出の割合はOECD諸国で調査参加の29カ国中下から4番目です。フィンランド、ルクセンブルグ、スウェーデン、ノルウェーなどでは、全くの無償で私費負担はありません。
また、40年前の1966年に採択された国際人権規約第13条2項では、初等教育の義務化と無償に加え中等教育や高等教育でも特に無償化の漸進的な導入を定めています。世界はこの方向で40年間努力をしてきたのに日本はこの部分をまだ批准せず留保したままです。今留保しているのは、マダガスカル、ルワンダ、日本の3カ国だけになりました。世界の流れに逆行し無償化に向かって努力したどころか逆に負担を増やして、世界でも有数の高学費国とつきすすんできたのです。世界の流れに逆行した40年でした。国連社会権規約委員会は、日本政府に留保の撤回を求めて来年6月までの回答するよう求めています。日本が教育無償化という国際原則を実現すべきときですが、このような時に県としても無償化の流れに沿った施策をすすめることが求められるのではないでしょうか。改めて奨学金給付制度を求めますがいかがでしょうか。
■岡野高校教育課長■先ほど申し上げました通り、現在のとこと給付するつもりはございません。先ほど給付と申し上げましたのは貸与の間違いでございます。
■杉本県議■日本の教育に対する考え方、無償問題に対する考え方がいかに遅れているかということを私は憲法やまた世界の流れで質問をいたしました。全然考えておられないというお答えですけれども、憲法を生かし世界の流れに沿った方向で努力されますことを切に求めて私の質問を終わります。 |