「予算の編成替えを求める動議」の提案説明
自治体らしい自治体を
私は、日本共産党議員団を代表して、予算組み替え案についてその提案理由を申し述べます。
いま政府は、医療や介護、年金などで社会保障を2兆7000億円の負担増と庶民増税が押し付けられようとしています。特に健保本人3割負担については、医師会など、凍結を求める声は強くなるばかりです。
政府は、「財政危機」を口実に、このような社会保障の改悪をすすめています。兵庫県もおなじように、「財政がきびしい」とくりかえし、平成12年からは「行財政構造改革推進方策」をすすめ、県民負担増をすすめています。
国に従って、おなじように県民に負担を上乗せするだけでは、何のための自治体かわかりません。その存在意義が問われているのです。
井戸知事は今回の予算案の記者会見で、公共投資を「いくら確保できるかが最大の焦点」と言われたと報道されていますが、公共事業優先の予算であることが、これほど明瞭な言葉はありません。
わたしは、いま必要なことは、「住民こそ主人公」を地方の合言葉に、地方自治体が、予算の主役を公共事業中心から、くらし、福祉第一に切り替えることだと考えます。その立場から、県民から切実に要望されている事業、実現可能な事業、および、改善・拡充すべき事業の組み替えをする提案を行ないます。
以下、組み替え案の考え方と具体的な提案について主なものを申し述べます。
福祉・医療・教育を第一に
まず、福祉・医療についてです。
県は老人医療費公費負担助成制度について、このたびの3万人とあわせて、合計6万人の対象者削減の改悪をされようとしていますが、それを2001年以前の水準にもどすため、14億5000万円余を増額します。また、乳幼児医療費については、要望の強い完全無料化へ、一部負担をなくすために、17億円を増額しています。
介護保険制度の拡充も急務となっていますが、高い保険料を引き下げるための調査費を計上し、在宅老人介護手当についても、「行革」で削減された分を昨年並みにもどす予算を増額します。
次に、教育では、昨年に引き続き、小中学校で30人以下学級を3ヵ年で実現するための教員給与のための予算を増額し、私立学校の助成についても、交付税増額分に見合う県費補助分を削減せず、授業料値下げのための補助も増額しています。
県立大学の授業料について、「国立大学との格差」を理由に値上げを計画されていますが、国立大学の授業料も「私立大学との格差」を理由に毎年値上げされてきた経過からも、県立大学の値上げは認められず、中止のための予算を計上いたしました。
被災者支援の拡充
震災被災者への対策では、復興支援対策事業や、県外居住被災者支援事業も昨年並みに増額し、災害公営住宅で問題となっている被災者の家賃滞納をはじめとする生活相談の体制整備のための予算を計上しました。
また、国際防災・人道支援拠点形成推進事業は、自然災害だけでなく、紛争など日本のあらたな軍事的貢献につながる危険があり、削減いたしました。
経済・雇用対策の充実
次に、経済・雇用対策についてです。
この点では、本会議でもとりあげた問題ですが、金融機関による中小企業への「貸しはがし」防止について調査・研究する事業を新規につくりました。県条例の制定も含め、まともな地域金融の育成に取り組む事業です。
また、昨年度、日本共産党は独自に「中小企業・地域経済振興基本条例」の提案を行ない、経済の中心を支えている中小企業施策の抜本的な拡充を求めました。今年度の予算は、わが党が提案した方向とは逆に、外国・外資系の企業の誘致をすすめる産業集積条例や「構造改革特区」などの事業を拡大し、「産業立地促進費」は4割増額していますが、昨年の実績を見ると、進出企業が少なく、オフィス賃料や従業員補助など、ほとんど活用されていません。
そのような役に立たない事業ではなく、地場産業の振興や、モノづくり支援のための工業技術センターの機能拡充、中小建設業の「仕事おこし」に実績のある「民間住宅リフォーム助成制度」を創設します。
雇用問題では、サービス残業一掃のための広報活動を強化し、「兵庫型ワークシェアリング」導入促進の予算を削除し、リストラ抑制、県独自の雇用確保事業補助制度をつくります。
不要不急の公共事業を削減して、あらたな財源産み出す
以上のような福祉・医療・教育、中小企業に手厚い施策をするために、ムダな公共事業を削除、縮減して、一般財源を産み出します。
われわれは、これまで、一貫してムダな公共事業の問題点を批判し、兵庫県下でも、90年代に80年代の2倍の公共投資、4兆5000億円を投じてきたこと、ムダな大型開発のツケを国民や県民に転化することが許されないと主張してきました。いまでは「公共事業のムダを削れ」という声は、国民の共通した声となっています。
今回、部局審査や総括質問でも、淡路夢舞台の赤字対策について、質問してきましたが、その失敗について、県側から真摯な総括の言葉は聞かれませんでした。当初から過大な投資であると批判してきましたが、懸念した通りになっています。組み替え案では、夢舞台の国際会議場関連の予算3億2000万円を大幅減額していますが、この際、広大な土地を買い取って過大な箱モノをつくり、企業や人を呼び込む方式の公共事業は、全部見直すべきではないでしょうか。
県民向けの事業には「コスト」や「効率」を押し付け、公共事業には将来見通しも効率性も無視してすすめることに、全く道理はありません。
神戸空港と関西国際空港2期については、昨日も扇国土交通大臣が「関西で3空港問題の見直しを前提に議論してもらっている」と発言しているように、3つの「役割分担」論の破綻は明瞭です。需要予測や採算性、安全性に疑問があり、市民合意のない事業であり、削除は当然と考えます。その他、播磨空港の調査費や但馬空港の利活用促進費なども削除いたしました。
ダムをはじめとする河川総合開発事業の大幅削減や、明石海峡大橋にともなう本州四国道路公団への出資、紀淡連絡道路関連調査費など、過大な道路計画にもとづく道路関連予算も大幅に削減し、農林土木についても減額をします。
また、その他の不要事業として、市町合併押し付けにつながる予算、「人権」の名で同和事業を残す予算、住民基本台帳ネットワーク関連予算などを削除、または改善します。
今回、あらたに組み替えの対象とした特別会計ですが、公共事業用地先行取得事業のうち、開発事業用地費と土地開発公社への貸付金は、土地が値下がりする状況のなかで、先行取得の意義は薄れていることから、それぞれ30億円、50億円を減額しました。
このような76項目、約836億円の削減によって、一般財源117億円を生み出し、福祉・医療、教育などに回します。
社会保障と公共事業の「逆立ち」の転換へ
予算組み替え提案は今年で3回目ですが、1年目は188億円、2年目は614億円、そして今年、提案した予算組み替えによって、一般会計は、歳入、歳出それぞれ718億9958万2000円の減額で、土地先行取得の特別会計を加えた全体では、849億円の減額となります。
2002年度1月補正を含む15ヶ月予算では、3742億円余、対前年度比100%の公共投資を確保していますが、それに比べ、社会保障はILO基準で計算すると、公共投資額から1000億円以上すくない2700億円となっており、「逆立ち」ぶりは明らかです。
今回の予算組み替えによって、公共事業は765億円削減する一方、社会保障は25億円増えることにより、本来あるべき姿へ、一歩近づけるものとなっています。
また、新たな起債額、466億8260万8000円を減額することになりますが、後世に膨大なツケを残す財政運営を転換するためにも、県民一人当り200万円、4兆円を超える県債残高を減らし、財政を健全化していくことからも、特別な重要性を強調したいと思います。
以上、委員各位のご賛同を心から期待いたしまして、提案を終わります。 |