国連「勧告」の早期完全実施で被災者支援を
■質問■森田委員
私は阪神淡路大震災の被災者の一人として震災問題について質問します。
国連規約委員会が昨年の8月21日、日本政府の第2回報告の審査をおこない、8月31日に最終見解を発表しました。この中で、阪神淡路大震災の被災者についても、主な懸念される問題と提言および勧告が出され、日本政府と兵庫県に具体的措置をとることを求めています。
勧告にたいする認識についてです。まず国連社会権規約委員会のしくみについてです。国連社会権規約は日本政府も批准をしております。もとより憲法98条は、国際規約は国内法としての効力を持ち、誠実に順守することを必要とするとうたっています。しかし、日本政府は、規約にしたがって5年毎に勧告への対応を含め、規約の達成状況を国連事務総長に報告する義務があるにもかかわらず、第2回報告書を前回から12年後の98年に提出、7年も遅らせました。その上に95年の未曾有の阪神淡路大震災被災者のことは、全く記述をしていないという二重の誤りを犯しています。国連が、社会権規約の各項目について、締約国に一体何を求めているのか、規約委員会のゼネラルコメントに明記をされており、政府の態度は不誠実だと思いますが、そのように認識を県はされているか。
▼答弁▼藤原復興推進課長
条約は国家間で交わさる約束事で、私どもとしては解釈等について十分承知していないが、社会権規約の第11条において「締約国は食料、衣類及び住居を内容とする相当な生活水準並びに生活条件の普段の改善についてすべてのものの権利を認める」として、また「この権利の実現を確保するために適当な措置をとる」としています。さらに同規約第2条において「締約国は日本国政府ですが、立法措置その他のすべての適当な方法により、この規約において認められる権利の完全な実現を前進的に達成をするため、自国における利用可能な手段を最大限に用いることにより、個々にまたは国際的な援助および協力特に経済上および技術上の援助および協力を通じて行動することを約束する」とされています。
■質問■森田委員
それでは日本政府が98年に国連に提出した第2回報告書に、阪神淡路大震災の被災者のことが盛り込まれているかどうかを県は確認をされたのか。またその後、被災者のことを盛り込むように政府に働きかけはされたのでしょうか。併せて明確に簡潔にお答えください。
▼答弁▼藤原課長
これは国家間の約束事の問題ですので、私どもが日本国政府にたいして国際間の約束をこうしろああしろと申し上げる立場にないと認識しています。
■質問■森田委員
確認をしていなかったということですね。ゼネラルコメントにたいする認識が県としても不十分であり、また社会権規約の軽視を示すものであるということを指摘しておきます。
政府報告に震災問題が欠落していることにたいして、日弁連などNGOが国連へ訴えたことによって、社会権規約委員会が2000年5月、日本政府に阪神淡路大震災被災者についての報告を求めたのが真相です。今回の震災関連の勧告は、政府が昨年8月21日の審査直前の7月に提出をした追加報告によるものです。そして、最終勧告に至る審査の過程で、委員会は、日本政府の追加報告や、委員会での日本政府代表の説明や質疑だけでなく、NGOの日本政府報告にたいする反論書いわゆるカウンターレポートや、NGOにたいするヒアリングを始め、日本担当のリーデル委員自身の現地調査など、多面的な情報を収集し総合的かつ客観的な判断をくだしたことは明らかです。そもそも社会権規約委員会の勧告は、締約国の施策に反映させていくもので、たとえ日本政府や県の認識と異なる点があったとしても政府は誠実に順守すべだと思いますが違いますか、お答えください。
▼答弁▼藤原課長 指摘の中にもあったが、ゼネラルコメント、一般的見解が委員会から出されています。これは規約の逐条解説というかコンメンタール的なものです。これの一般的意見・ゼネラルコメントの第3に、加盟国の義務が書かれており、規約の第2条の1項に基づいて、権利の前進的な実現に向けて措置をとることと書いてあり、そういう義務があると書いているということです。これは条約上の義務ということになります。ただ「憲法98条の第2項に条約の順守義務があってこれが国内法的な効力を有すると書いてある」と発言ございました。それは若干異なっており、98条の第2項は、日本国が締結した条約及び確立された国際法規はこれは誠実に順守することを必要とすると書いています。これに基づいて、締約国が条約の履行に誠実に取組むことは義務であると思われます。とりわけ98条の第2項というのは、戦前の不戦条約を破った苦い経験、それで国際的に批判を受けたということから、そういう反省から98条2項ができたと認識しており、国際的な条約の締結国が約束を守るということは、これは当然のことです。これは規約を守るということですが、今回の勧告については政府としては、おそらくその内容について、当否等について十分に検討された上で適切な対処がなされると考えます。
■質問■森田委員
順守義務はあるということですが、先ほどから「法的拘束力がない」そのようなことを県もまた直接的に順守義務があるとは認識していないという答弁だと思う。
本日午前中、島原市議会の本会議において、吉岡市長が国連の勧告について「わが国は国連の社会権規約を批准しておりますね。同委員会の勧告は尊重されるものと思っております」と勧告は尊重されるものだと明確に答弁されている。なぜこの被災県である兵庫県がそのことを自ら言えないのですか。さらに今回の場合、兵庫県にたいして勧奨するということもこの勧告の中には示されています。政府にのみ振り向けていくような姿勢は直ちに正していただきたいことをまず指摘しておきます。
それでは、国連規約委員会の最終見解のうち、震災に関する懸念事項27、28と提案及び勧告54、55の記述についておたずねします。
懸念事項27と勧告54は、コミュニティを破壊された高齢者問題を取り上げ、日本政府・兵庫県にたいし、とりわけ高齢者および障害者への地域サービスの向上および拡大を勧奨することを勧告しています。さらに懸念事項28や勧告55では、住宅再建のためのローン返済ができず、再建した家を手放さざるを得なくなっている問題を取り上げ、さきほど述べられた規約第11条居住権の義務に従って、効果的な措置を迅速にとることを求めています。そこでおたずねしますが、国連の懸念や勧告で指摘されている実態は、現在存在はしないのでしょうか。端的にお答えください。
▼答弁▼藤原課長
指摘の通り、今回の懸念事項勧告について、独居老人へのケアがほとんどあるいは全くされてないという懸念が記述されています。それと住宅再建の資金が調達できない人がいるという懸念でして。勧告の一つは高齢者へのケア対策をしろということが1点、それと住宅再建支援の制度をつくることというこの2点の勧告があったものと認識しています。
実態として今回の最終見解の中にはそういうことが書かれているわけですが、独居老人にたいするケアについては、この10月に新たに高齢世帯生活援助員、さらに14年度はそれを倍増するという取組み、さらにきめ細かく、・・・・
■質問■森田委員
実態を聞いているんです。
▼答弁▼藤原復興推進課長
ですからそういう実態に基づいて対策を講じているということです。住宅再建についても、これまでから住宅再建のための各種の施策を講じてきたところですが、さらに住宅再建支援制度新たな制度としてそれを一日も早く実現するように取組んでいるところです。
■質問■森田委員
私、勧告54に関わって災害公営住宅の高齢化率を調べた。平成13年11月時点の入居世帯数9249世帯のうち、65才以上の高齢化世帯は53.6%、もう過半数を超えている。その中で一人暮らしの高齢世帯は6割を超えています。孤独死も相次いで増加の一途をたどっています。私も地元の災害公営住宅にお邪魔して、自治会長にも直接、話をうかがってきました。とりわけ「一人暮らしの高齢者が、今閉じこもりになっている状態、なんとかしたいが限界があるんだ」と言われております。また、ある高齢者の方は「私が死んだら誰も気付いてくれないのでは」という孤独の不安の訴えをしておられます。今、コミュニティが破壊された、そうした被災者の実態、現実に存在しています。
また、もう一つ問題である勧告の55、住宅再建についても、公的支援がないわけで、多くの被災者のみなさんは、借金に頼った再建しか道がなく、公的資金融資の制度の利用者は少なくても19万件1兆5000億円にものぼっています。ところがわが党議員にたいするこの間の政府答弁でも、住宅金融公庫貸付の代位弁済が、99年には114件、2000年には195件と年々増加して、せっかく自宅を再建したものの、ローンの返済ができなくなって売却し手離さざるを得なくなった状況となってきています。このことは、今年の7周年1・17メモリアルデー前後の新聞やテレビのマスコミ報道でも、もう証明をされていることです。日本政府は、2006年6月までに、この勧告の履行結果を報告する義務を負っています。もちろん被災地の県としても誠実な対応が今求められています。そこで最後に、被災県として、この国連の勧告を、被災者への力強い援軍ととらえて、政府にたいして勧告を迅速に履行するように申し入れるとともに、県としても被災者の人間復興に向けて、勧告の早期完全実施に万全を期されるよう強く要望して質問を終わります。
|