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2006年08月30日

武庫川流域委員会への意見書(8月30日)

この間の県の回答の問題点に対する反論と、県の整備計画原案作成に対して武庫川流域委員会から、強く要請し、取り組んでいただきたいこと

 本日が、流域委員会で県への提言を決定する運びとなりますが、この間、武庫川の流下能力や、川の環境保全と治水レベル向上についての提案などをさせていただきましたが、それに対する県の回答は、その場しのぎで、はぐらかす内容に終始し、不誠実な対応といわざるを得ません。しかし、この間指摘させていただいた点は、これから県がおこなう河川整備計画原案作成にも大きなかかわりを持つので、改めて、県の回答の問題点を指摘し、意見を述べさせていただき、県からの誠意ある回答を求めるものです。また、流域委員会におかれては、県の整備計画原案作成に対して、これらの点について改善、反映させるように強く働きかけていただくようお願いするものです。

(1)代表粒径45mmの妥当性に線格子法表面の値や、採取法のポピュレーションブレーク後の値を根拠に、平成14年の代表粒径45mmとすることが妥当とし、採取法下層のデータが異常値であるとしていることについて

1.

表−1は県が作成した資料であるが、この表を良く見れば、線格子法が実際の粒度分布を正確に表さない傾向があることを示している。
4キロ、5キロ、6キロ地点での採取法(上層)と線格子法(上層)を比較すると、採取法上層では、それぞれ14.3ミリ、27.0ミリ、20.0ミリに対し、同じ箇所の表層であるにもかかわらず、線格子法(上層)では、39.7ミリ、49.4ミリ、37.7ミリとなっており、線格子法の方が、採取法 より、15ミリから20ミリも粒径が大きい。すなわち、線格子法は、大きい粒径のデータしか得られず、本来の粒度分布が得られないことを示しているのではないか。

(表−1)
-4k実施前4k実施後5k実施前5k実施後6k実施前6k実施後備考
採取法(上層)14.3mm38.3mm27.0mm60.1mm20.0mm37.1mm 
採取法(下層)4.3mm4.3mm6.3mm意見書で引用
線格子法(表面)39.7mm49.4mm37.7mm 
線格子法(表面下)21.1mm32.0mm29.0mm 
※値欄の−は、ポピュレーションブレークを実施していないことを示す。
(平成16年報告に記載のデータより作成)

2.4kから8kの採取法表層(赤色)のデータについて

 10mmあるいは、25mmでポピュレーションブレーク後の代表粒径が45mmとなることを、45mm代表粒径の正当性の理由に使っているが、ブレーク前のd60は、4k表層が14mm、5k表層が27mm、6k表層が20mmであり、粒度分布は、採取法下層(オレンジ色)と類似した形状である。
 粒度分布には、資料のグラフ(1)を見れば読み取れるように、明確な折れ点は見られない。「河道計画検討の手引き」P58では、「勾配の急変点が明確でない場合は、2mmを区分粒径とする」とあり、10mmあるいは20mmを区分粒径としているのは、大きすぎる。したがって、採取法表層のポピュレーション後のデータでもって代表粒径45mmを正当化することは妥当でない。

3.4kから8kの採取法下層(オレンジ色)について

 7k、8kは、10mmあるいは20mmで、ポピュレーションブレーク後の値を使っているが、ブレーク前の粒度分布(オレンジ色の7k、8k)を見れば、滑らかな形状であり、ポピュレーションブレークするような明確な折れ点はここでもない。
 一方、4k〜6k下層(オレンジ色)も、7k、8kと同様の粒度分布であり、4k、5k、6kの採取法下層のデータが異常値とは見なせない。

4.

 線格子法のポピュレーションブレーク前の粒度分布と比較すると、線格子法は、元の粒度分布から大きい粒径のみのデータを取ったような形状であり、線格子法が代表的な粒度分布を示しているとはいえない。

 県は、採取法下層を無視して、代表粒径を45mmと決め⇒推定粗度係数0.034⇒下流の流下能力を2500立方メートル/秒程度しかないとしてきた。
 しかし、台風23号の洪水実績から⇒逆算粗度係数0.023⇒下流の流下能力は3200〜3300立方メートル/秒あることが明らかに。 
 この乖離。武庫川ダム一個分に相当する。あいまいに済まされない問題である。
 しかし、採取法下層で代表粒径を考えれば、⇒代表粒径は,(?)⇒推定粗度係数は、(?)⇒下流の流下能力は、(?)どうなるのか。採取法下層で考えていけば、そこで出た推定粗度係数は、逆算粗度係数と似通った値になるのでは、との疑問点を示してきたが、県からは未だにこの検討がおこなわれず、回答がない。過去で決めたことに固執せず、真摯な態度でこの問題を考える姿勢が県に求められる。
 抜けている3k地点の粒度分布を調査し、その結果をもとに代表粒径をある幅で変化させたときに、水理的条件がどのように変わるのか、様々に検討し、適切な代表粒径や河道区分を決めていくことが科学的な態度でないか。市民や、さらに河川の専門家など誰が見てもなるほどといえる調査と再検討をおこなうことが、今、県に求められている。河川整備計画原案を作成するまでにこの再検討は不可欠である。この検討が、県の河川整備計画原案作成の前提条件であることを強く主張し、その実行を求める。流域委員会からもぜひ強く引き続き求めていただきたい。

(2)《表層の調査結果を用いることが誤り》とする根拠はない

 「河川の土砂災害と対策」の記述は、洪水時の河床変動状況を述べたもので、回答の「流砂量計算に使用する場合のみ」というのはまったくためにする曲解である。洪水時には、掃流力が増加するとこのように表層が流されて下層部が河床表面になるという現象を記述したもので、洪水時の状況を示すために引用したわけで、河床抵抗の検討でも同様な現象が生じることを留意すべき。河床抵抗(粗度係数)に関わる記述ではないと捻じ曲げて、洪水時に下層が河床表面になることを無視しようとすべきでない。下層の粒度分布にきちんと着目すべき。
 また、粒度分布で「表層と下層の代表粒径が大きく変わらない」というのは、前述のように線格子法と(不自然な)ポピュレーションブレーク後の粒度分布のみを見たもので、合理的でない。むしろ、河床材料の粒度分布は下層の採取データ(ブレーク前の元データ)とすべき。

(3)《セグメント区分の見直し修正する予定はない》との回答について

 河床勾配区分は、他に区分の仕方はないのか、区分を変えると結果がどのように変わるのかという疑問に答えていない。この場合も、1で前述のように一つの主観的判断に固執するのではなく、どのように見てもこのような結論になるという結果でないと説得力がない。

(4)《整備計画段階では多くの床止めや潮止め堰を撤去するほどの流下能力向上は予定されていません》との回答について

 撤去による流下能力向上効果ばかりでなく、環境改善、生態系再生保全効果の提案に何も答えていない。とても回答とはいえない代物であり、再度回答を求める。

1.転倒堰について

 かつてこの可動堰の工事を新たに行なうことになったとき、工事を担当していた現場では、「この堰の上流にあった尼崎市の取水は、すでになくなり、潮止め堰(転倒堰)を今、新たにつくる意味があるのか」と、疑問の声が上がったが、県庁では、その疑問についてなんら反論がなかったと聞いている。必要性に当初から、県の職員の中でも疑問の声が上がっていたこの潮止め堰をこれから20年も30年もそのまま放置する意味があるのか、まったく疑問である。河川の生態系を絶ち、流下能力向上に妨げとなっている転倒堰の撤去を進めるべきである。転倒堰を撤去すれば、堰下流から河口一帯に干潟が再生できる可能性も生まれ、また上流への水生生物の移動も自由になり、環境改善では画期的な変化が生まれると考えられるが、治水レベル向上や環境向上の指摘について何の回答もない。整備計画原案には、潮止め堰撤去を入れるべきであり、原案作成までに、一定期間の潮止め堰の試験転倒をおこない、環境復元再生の変化の状況などの調査をおこなうべきである。

2.床止め撤去について

 床止め撤去が流下能力向上にどの程度の効果が生まれるのか、武庫川の水生生物などの生息、遡上にどういう効果をもたらすのか、検討して当然ではないか。流下能力向上と自然再生に効果があることは、誰が考えてもわかることだが、この検討を県がなんらおこなわないことに県民は誰も納得できるものではない。治水向上と環境改善、まさに河川法の精神ではないか。この検討を拒む理由はまったく理解できない。ダムをつくる根拠がなくなるからであろうか。
 すでに、淀川水系でも、床固め撤去が検討されていると聞く。神戸市内の県管理河川でも床固めを切り欠き、鮎が遡上できるようにしたとも聞く。時代の流れは明らか。武庫川でも、河川整備計画原案作成までに、床固め撤去の検討をし、整備計画原案に盛り込むべきである。

(5)《上流区間では………流量低減量を計画に考慮することは考えていません》との県の姿勢は、武庫川の実態と県の浸水想定図とも矛盾する

 武庫川上流域や、武庫川の支川で溢れたり、また、河川そのものに流れ込まない場合があることを、現実の23号台風での三田市の実態調査などで示してきたが、この回答は、流域のこれらの事実をまったく無視するものであり、科学的といえないし、私達が聞く全国での新たな治水計画の流れにも外れる。

1.県の浸水想定区域図の取り組みとも矛盾する

 武庫川流域で、県は23号台風型降雨による、浸水想定区域図を作成しているが、23号台風の0.85倍の降雨(24時間雨量150mm)(7年確率)でも天王寺川流域で氾濫しており、おそらく、天井川となっている天神川などに降った雨が流れ込まなかったのではないかと考えられる。武庫川上流藍本などでも氾濫しているが、これも氾濫だけでなく、川に流れ込んでいない場合も想定される。(事実、23号台風で武庫川はあふれていないのに田畑が相当浸水したことを写真ですでに私は示したが、これを否定する反論は聞いていない)。さらに、時間雨量200mm(26年確率)すなわち、県がこれからつくろうとする整備計画原案は30年確率よりも低い降雨で、武庫川上流、天王寺川、大堀川、天神川などで氾濫や川に流れ込まない浸水被害(内水被害)が相当規模発生する予想となっている。
 当然常識で考えれば、上流で溢れたり、降った雨が武庫川や支川に流れ込まなければ、その雨は、すぐには下流の甲武橋まで流れ込まず、甲武橋地点での最高水位を引き下げる役割を果たす。ところが、県のこれまでの武庫川下流の流量検討では、考えないとしている。まったく矛盾したご都合主義である。
 安全のためと県は主張するが、これは県民の安全を考えたことにはならない。治水計画、河川整備計画では、当然、30年確率の大雨以前に浸水する地域をどうするのか、検討することは、住民の安全を考えれば当然おこなうべきである。
 また、下流においても、効率的な実際に見合った治水計画とするためにも上流氾濫の事実は、計画に組み入れ、対応すべきであり、こういった方法は、すでに、流域貯留案として検討や計画作りが始まっている。この事実を参考にすべきである。
上流や流域でのこれらの事実を踏まえずに計画作りを進めることは、上流、下流の一貫性のある治水計画とならず、ひいては下流にも問題を押し付けることは、この間の武庫川の歴史が示している。上流域の実際を組み入れたものにすべきである。
 なお、県の浸水想定区域図は、水田水路が溢れることによる水田冠水などは見ていないということであり、実際は、もっと大きな浸水面積となる。

2.

 さらに、今回の浸水想定区域図は、23号台風の降雨パターンで推定しており、23号台風では、有馬で集中的に雨が降ったが、これが、もし、天王寺川流域で降ったらどうなのか。三田で降ったらどうなのか。当然検討してしかるべきである。三田や天王寺川流域で、有馬並みの雨が降れば、武庫川が溢れるまえに、三田や伊丹は大変な浸水被害が起きるであろうことは、今回の浸水想定区域図で容易に推測できるが、県は、きちんと示すべきである。降った雨が全部流れて来るなどと、武庫川下流部だけ考えたらいいなどという考え方はいかに無責任なことになるか、明らかではないか。上流での氾濫や浸水を無視したやり方は再検討すべきだ。(つづき研二)

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