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2006年06月05日

武庫川流域委員会への意見書(6月5日)

つづき研二

(1)県は、一貫して、武庫川下流の流下能力がないから、ダムがいると主張してきました。その点で、現況河道の流下能力をどのように判断するのかは、整備計画策定には決定的重要な問題と考えます。

(2)知事の「全部局上げて全面的に協力する」は、なんだったのか。
 委員長が、「平成16年23号台風以降、23号台風に関連した議論をしてきたのに、県からは、その時の洪水痕跡、粗度係数の逆算検討などの資料が都築さんの指摘があるまで県からは提示がなかった」と昨日のリバーミーティングでも県に対する怒りの言葉を述べられましたが、本当にひどい県の対応と思います。知事が、「全部局上げて全面的に協力する。何なり言ってください」と流域委員会に出てきて約束したこととまったく違う実際の対応です。
 時間がないと委員長は言われますが、流域委員会が、その責任を負うべきでなく、知事がその責任を負うべきと思います。現況河道の流下能力がどの程度かという治水計画作り上、重要な課題にかかわる判断資料を県が積極的に提供しなかったのは知事の責任です。下流に流下能力がないとしてダムを主張し、その県の主張に都合が悪い資料は出さない、土壇場まで出さないのでは、知事の姿勢が問われる問題と考えます。しかも、今なお、逆算粗度係数算定に関わる検討書は、すべてにわたって県から提供されている状況ではありません。県は、求めなければ出さないのでなく、積極的に出すべきです。

(3)しかし、「時間がない」として片付けられない問題でもあります。粗度係数の選択で流下能力に仮に600〜700立方メートル/sの差が出るとすれば、整備計画の考え方にも大きな影響を与えます
 粗度係数を0.035を選ぶのか、実際の23号台風から県が逆算した0.023(河道区分3)や0.025(河道区分4)を選ぶのか、流下能力算定に大きな差が生まれることは明らかです。3割程度の流量の差は出るのではないでしょうか。今、整備計画の議論では、目標流量のそのものの差が100立方メートル/s,200立方メートル/sレベルです。粗度係数の選択で仮に600〜700立方メートル/sの差が出るとすれば、整備計画の考え方にも大きな影響を与えますし、治水対策に、ダムでなく、河道整備に大きな可能性を私たちに示すこととなります。また、整備計画として力を入れるべきところがどこかはっきりしてくるのではないでしょうか。

(4)淀川流域委員会の委員長が、「整備計画では、流域の総合治水に徹底して取り組むとともに、河道整備に県が全力を挙げることが治水対策の鍵」という趣旨の発言をされましたが、粗度係数の再検討をすれば、実際にその道が武庫川でも切り開かれることと成るのではないでしょうか。粗度係数をはじめとした河道の流下能力の再検討をぜひ委員会で行っていただきたい。また、そうしなければ、県が、下流に流下能力がないと執拗に言っていることを流域委員会が認めたこととなり、ダムの口実を流域委員会が残す、ダムの火種を流域委員会が残すことになりかねません。ダムに固執し、総合治水の取り組みを計画上もほとんど評価をしない今の県の姿勢からもこのことは小さく見ることはできない問題です。今後にも極めて重大な影響を与える問題点と考えます。

(5)県の報告書では。
 (痕跡水位の左右岸平均―計算水位)の値は、ゼロを中心に±50cm以内程度に収まっており、痕跡水位の再現結果はおおむね妥当であると考えられる。
と結論付けています。

セグメント河道区分逆算粗度係数
2-2
1 No. -8〜No. 15
0.022
2-1
2 No. 15〜No. 25
0.021
2-1
3 No. 25〜No. 89
0.023
1
4 No. 89〜No.147
0.025
1
5 No.147〜No.174
0.035
1
6 No.174〜No.186
0.037

 一方、報告書2-39〜41pおよび6-25p(この間の資料の提出を受けていない)では、武庫川の河床材料調査結果から物理的な粗度係数推定を、以下のようにおこなっています。

セグメント河道区分推定粗度係数
(物理的粗度係数)台風23号後
推定粗度係数
(物理的粗度係数)23号前既往検討
2-2
1 No. -8〜No. 15
0.022
0.022
2-1
2 No. 15〜No. 25
0.027
0.031
2-1
3 No. 25〜No. 89
0.032
0.034
1
4 No. 89〜No.147
0.032
0.034
1
5 No.147〜No.174
0.036
0.037

 結局、河道区分3(潮止め堰から仁川合流点),4(仁川合流点から新宝来橋上流)の粗度係数を逆算粗度係数とするのか、推定粗度係数にするのかによって、流量が大きく変わるわけです。河口近くは、当時の潮が低かったから、それに引っ張られて、流量が増えたという意見もありますが、河道区分4の区域は、途中にいくつもの床止め工があり、潮の影響など考えられず、推定粗度係数を選択することに合理性があるとは考えられません。個別にきちんと検討をすべき問題です。

(6)「粗度係数について、洪水で検証する必要ない」との県の意見について

 「砂防技術基準(案)調査編 第6章水位計算と粗度係数 第6節平均流速公式を用いた流れの計算に用いる粗度係数の設定(p.130〜147)」では、その6.1において「粗度係数の設定とそれにもとづく洪水流の計算を適切なものとするために、洪水流観測、痕跡水位測定とその結果に基づく粗度係数などの検討を行う。」とし、その説明で、「洪水流観測、洪水後の痕跡水位調査とその結果に基づく粗度係数などの検討が十分行われていることは、粗度係数設定にとって不可欠である。」としています。平成16年洪水の痕跡水位は粗度を検証する絶好のデータとなりうるものです。
 一方、粗度係数の設定法には、「同6.2粗度係数設定の基本」で、「大きく分けて以下の2つの考え方」とし、「1.粗度状況からの物理的な粗度係数推定に基づき設定する。 2.既往洪水データからの逆算粗度係数にもとづき設定する。」の2つを揚げています。後者の既往洪水データからの逆算は、「実績という意味で重みがある。」とされています。
 そこで、同6.2解説では、「一般的には両者の弱点を補完するように、2つの手法を併用することが現実的な選択である。 すなわち、河道の粗度状況から物理的に粗度係数を設定するようにし、しかし一方で、その設定により既往代表洪水の逆算粗度係数あるいは洪水位を逆算できるかを確認し、必要に応じて逆算粗度係数値を踏まえ粗度係数を修正する。」としています。
 以上のように、実績洪水の痕跡水位はきわめて重要であり、粗度係数決定の決め手にもなっていることから、県のいう「洪水で検証する必要はない。」というのはまったく根拠がありません。しかも、2900立方メートル/sという整備計画流量に近い流量が流れたことからも、参考にすべき実績流量です。

(7)高水敷樹木群や、高水敷の粗度係数をどう考えているのか、は、流下能力算定に重要。少なくとも整備計画における流下能力算定では、高水敷樹木群や高水敷の粗度をあげる要因は省いて検討すべき

 阪神高速道路橋梁から潮止め堰、阪神電車橋梁上流から旧国道などにおいて、「高水敷の樹木群を考慮する区域」を設定しています。これらの区域は県が流下能力不足としている付近ですが、流下能力が、「高水敷の樹木群」によって減少するのであれば、部分的に高水敷から撤去すればすみます。これは、よく説明すれば住民の理解も得られることです。
洪水敷の植生や樹木群による死水域の設定や高水敷の粗度係数の設定、橋脚による堰上げの計算法が計算結果を大きく左右すると考えられます。物理的な粗度係数設定と逆算による粗度係数とを十分比較検討して粗度係数を設定すべきです。
 そして、当然、河川整備計画では、流下能力に不足する個所では、流下能力が上がるように高水敷の改善を掲げるべきですし、整備計画ではそのことを念頭においた粗度係数の選定をすべきです。
 このような形で、主な区間ごとの最適な粗度係数を設定した上で、どうしても計画高水位を上回る部分は、河床掘削、低水路拡幅、引き堤、樹木群の伐採、固定堰の撤去等の手段を講じるなど河道対策の可能性はまだまだあると考えます。
 また、阪神電車付近や、旧国道付近が流下能力確保上対策が必要な個所であれば、阪神電車橋梁の架け替えを整備計画に計上すべきです。ダムを作るより、工事費も工期も比較にならないぐらい安くはやくできます。整備計画で最初から検討の対象としないのは、全く道理がありません。阪急橋梁の架け替えは、ほとんど国と県の負担で震災後あっという間に完了したのですから。阪急の負担は1億円程度ということです。

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